◆004拠点を手に入れよう
評価、ブクマありがとうございます!
嬉しすぎてソシャゲのガシャが200連で音沙汰なしなのが気にならなくなりました!
出るまで回せば、必ず出るもんね!(哲学)
今話から第一章となります。ぜひお楽しみください。
青い光に包まれたおれとクリスが降り立ったのは万年床にローテーブル、そしてPCデスクでパンパンになったワンルームのアパートだった。
言わずと知れた、おれの家だ。
既に両親が死んでいるおれには、頼れる親戚がいない。きっと警察も誰に連絡を取ったものかと悩んでいるはずだ。
そんな予測からアパートの中身までは手が回っていない可能性に賭けたけれど、それは大正解だったようだ。
とりあえずデスク脇に置かれたデジタル時計で確認すると、おれが事故を起こしたあの日から一週間が経っていた。まだ電気は止まっていない。困惑するクリスを持て成すためにもまずは飲み物と食べ物を、と冷蔵庫を漁る。
流石に生ものは全部だめだ。
炊飯器の中もバイオテロが起きそうな様相だったのでそっとじしておく。
見つけられたのはポテチと封の開いていないサイダーくらいだった。
とりあえずクリスを座らせて、目の前に出す。
「これ、おれの世界だと割とメジャーな食べ物と飲み物。好き嫌いは人によるけど、とりあえず食べてみて」
おっかなびっくりといったクリスは、ポテチの味の濃さとパリパリ感に驚き、サイダーのしゅわしゅわ感に目を丸くしていたけれど、概ね好評だった。クールな女の子のびっくり顔かわいい。
さて、これからおれはどうするべきか、と思案していると、玄関からガチャンと音が響いた。思わず心臓が飛び出すんじゃないかってくらい驚いたけれど、何か行動を起こす前にすぐさま扉が開いてしまった。
「先輩……すんません。ほんとうにすんません……」
えぐえぐ泣きながら松葉づえでえっちらほっちら入ってきたのは、おれをドライブに誘った後輩、望田・大悟であった。
頬にはガーゼが貼ってあるし首にも大きなカラーが巻かれている。そして左足はギプスでガッチリ固められているあたり、結構な大怪我をしたんだろう。目の下には真っ黒な隈があって、余計に病人じみていた。
「せめて先輩の童顔巨乳AVは、自分が受け継ぐっす……貧乳ものは処分させてもらいますが……」
ばかなことを言いながらマジ泣きの顔で入ってきた大悟は、おれとばっちり目を合わせて固まると、
「……ロリ美少女の拉致監禁はさすがに……警察に連絡するしか……」
「ばかなこといってんじゃねーよ! おれだ! 宗也だよ!」
「……洗脳調教まで……やっぱり……!」
「何がやっぱりなんだよ! 洗脳とか調教が好きなのはお前だろ!? おれは純愛ハーレム路線だってずっと言ってるだろ!」
「………………………………」
「………………………………」
「…………ほ、ほんとに宗也先輩っすか?」
「おう。お前と事故って死んだ宗也だよ。いざというときにパソコンのエロ画像フォルダと秘蔵のAVコレクションの始末を頼んだ周宗也だ」
「ほんとのほんとに?」
「異世界転生したらこうなったけど、そうだよ」
大悟はそれからワンワン泣き出した。
すいません、ごめんなさい、自分のせいで、と叫ぶように泣き、おれに縋りついてきたので、頭をなでてやる。
きっとこの一週間、自分がドライブに誘ったせいでおれが死んだって、自身を責め続けていたんだろう。
目の下の隈も、そのせいで眠れなかったからに違いない。AVの処分なんていう冗談交じりのばか話を、怪我だらけの身体を引きずって律儀に守りに来たのも、少しでも報いるためだ。
――やっぱりばかな奴だ。
悪いのは逆走してきた車だっていうのに。
それからしばらく、大悟は叫ぶように泣き続けた。
……お隣さんから強烈な壁ドンを受けるまで。
流石にドゴォッて感じの強烈な音にびくっとなって泣き止んでたけど。
ちなみにクリスはおれと大悟とのやりとりを何とも言えない顔で見つめてたけど、壁ドンされた瞬間、立ち上がって剣を構えていた。勇者と呼ばれるだけあってすごい速度だった。
おれは落ち着いた大悟にもサイダーを出してやり、ローテーブルを囲むように三人で座らせる。
そして自分がサキュバスに転生したことや、その先で知り合った勇者のクリスと逃げるようにここに来たことを説明した。
幸い、おれも大悟もオタク気質なので理解は早かった。ちなみにクリスは黙ったままおれの手を握っていてくれた。
さすがに魔力回復の件を話そうとして脇腹に鋭いパンチをもらってしまったけれど。
「そんで、これからどーするっすか?」
「それなー。戸籍的にはおれって、死んでるんだよな、多分」
「死んでなくても誰一人として先輩だなんて認めてくれないっすよ流石に」
性別とか顔だけならともかく、骨格から違うからなぁ。
というか正確には人間ですらないし。
しばらく悩みながらポテチを消費しきったおれは、クリスの太ももを枕にごろっと横になる。
「あー! 何してるっすか!」
「休憩だよ休憩」
「……まぁ良いけど」
ちょっと嬉しそうな声色のクリスがそっぽを向きながらもおれの頭を撫でてくれる。
「えっちなロリボディを手に入れて美人なクリスちゃんとにゃんにゃんしただけでなく、自分の目の前で見せつけるなんて……ごちそう様です!」
「そういやお前、百合もオッケーなんだっけか」
「美人の絡みはてぇてぇっす。てぇてぇは考えるもんじゃなくて感じるもんなんす」
その言葉に、ピンとくる。
「そうだよ、てぇてぇだ」
「てぇて、って何?」
「ああ、ごめん。こっちの俗語で、非常に素晴らしいものに感動したって意味だ」
まぁざっくりだけど、間違ってないだろう。
「大悟。おれ、配信やる」
「ッ!」
「プイッターとYourTubeで稼ごう。作り物ってことにして、異世界を全面に出して」
「良いっすね! 先輩の見た目なら、絶対バズるっす!」
「そのためには口座やら何やら、必要な手続きがたくさんあるんだけど、おれには戸籍がないから大悟に裏方をやって欲しい」
「やるっす! もちろんっすよ!」
よし、とりあえずの計画は立った。
「じゃあ、とりあえずおれとクリスを匿ってくれ。どう考えても目立つし、おれのアパートに人がいるのもおかしいからな」
「ヴェッ!?」
「何カエルが潰れたときみたいな声出してんだよ」
「自分、実家暮らしなの知ってますよね……?」
「知ってる。一度、遊びに行ったしな。両親と妹と猫がいるのも知ってる」
ついでに割と裕福なのもな! 大学生なのに新車買うってすげぇよ!
「自分、なんて説明したらいいっすか?」
「一、彼女とその妹として紹介する」
「絶対無理っす。そもそもクリスちゃんと先輩は系統が違い過ぎて血縁には見えないっす」
「二、ホームステイ先として」
「なんで家主無視して自分にホームステイの話が来るんすか! しかも即日とかありえないっす!」
「三、魔法で洗脳調教」
「……自分の癖っすけど流石に現実で家族相手にやられるのはキツいっす」
わがままだな大悟。
「しょうがない。じゃあ、認識阻害魔法でこっそり上がりこむから、大悟の部屋に匿ってくれよ」
「ウッ……」
「ほら、おれもクリスも静かに過ごすから」
「……自分、二人と一緒の部屋で寝るんすか?」
すっげぇ葛藤が見える。
これはバレたときのリスクと、美少女との疑似同棲を天秤に掛けているな、きっと。
「クリスに何かしたら、ちんちん引っこ抜くからな」
「先輩。今そういうこというのマジやめてください。録音できないんで」
ああ、そういえば今はおれも美少女なんだっけか。
「おっぱい揉ませてやろうか? それ以外をやろうとしたらちんちん引っこ抜くけど」
「…………」
とりあえず拠点が決まった。
あと揉もうと手を伸ばしたときの大悟の顔がキモすぎたので、触られる前にビンタしてしまった。
鼻血を吹きながらお礼を言ってくる後輩は、正直かなり気持ち悪かったけど、まぁ納得してくれたので深くは突っ込まないことにする。
次話投稿は2021/4/2の18:00を予定しております。お楽しみに!
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※ごめんなさい4/3の18:00でした(4/2 20:53頃追記)




