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◆035「さて、単独配信のお時間です」

「今日から一日(いちンち)二話更新する」

「二話、です!」

「なんたってブクマが1000件超えたし。あと評価pt5000超えたんだぜ!」

「うちらんことば応援ありがとうね!」

「嬉しい、です! ぴょんっ、です!」

「このまま完結まで突っ走るからよろしくな!」

「さ、あまねさんは配信の続きですよ」

「次ん更新ば5/2の21:00やけんね。間違えんといてね」

「こんばんわ! 今を時めくキャワワなサキュバスのあまねです!」


 ビシッとポーズを決めてウェブカメラに笑顔を向ける。

 おれは、配信開始以来初めてとなる単独配信に臨んでいた。理由は簡単。やることが多すぎて手が回らないのだ。

 クリスは魔道具でもある結婚腕輪(バングル)と装備品のドレスアーマーになにやら術式を描き込むとかで手が離せないし、スパチャのお礼も作成しないといけない。というのも、大悟がエゴサーチした結果、おれたちがサプライズで送ったファッションショーのボツ案写メがものすごく話題になっていることが分かったからだ。

 ちなみに被写体は柚希ちゃんとルルちゃんで、終わったらチックタック用のダンスも撮影してもらうことになっている。本当はクリスにもキレッキレのダンスを披露して欲しかったんだけど、


『継戦能力に不安が……』


 と難しい顔をするクリスに無理を言えず、二人にお願いすることとなった。


『こんばんわ』『ひとり?』『あれ? クリスたんは?』『ルルたんprpr』『腕輪してない』『喧嘩したか』『柚希たんが足りない』『ぺたじゃダメなんだぺたじゃ』『ルルたんがいない』


 プイッターではおれの個人配信だって告知はあげてある。にも関わらずの皆の人気っぷりに思わず頬がゆるむ。叩きにきてるのではなく、いじりにきてくれているのが分かる。

 さて、今日はまったり雑談しながらのゲーム枠だ。


「えー、クリスと喧嘩なんてしてないですよー。仲良しですから!」


 ええ。夜も仲良しですとも。

 昨日は二対一という卑怯な戦法で遅れを取ったけども。途中でルルちゃんも参戦してきた気がするけど記憶がない。

 まぁおれは立ち直りが早いのでうっかりすればペロッといただけるくらいには復活した。


『ゆりゆりしい』『【¥4545】てぇてぇ』『雑談枠?』『クリスがいないから異世界とかの設定関係は厳しいか』『ルルたんとの馴れ初めを』『【¥1919】本指名料はいくらですか?』『ゲームは何を?』『【¥721】仲良しですから!かわいいが』『【¥1000】異世界コスをもう一度』


「中途半端な金額のスパチャばっかりですねー。どうしてこんな金額になるんでしょうかー。まさかとは思いますが、何かのごろ合わせですかねー。ありがとうございます。あ、今回はクリスが用事でいないので、スパチャのお礼は口頭ではできません! ごめんなさい! その代わり、前回サプライズで撮った写メを送ります! 金額とか回数とかは関係なく、ひとり一枚です。ネットにアップとかはしないでね!」


『【¥300】ルルたんの写メが貰えると聞いて』『【¥2525】柚希ちゃんのお胸をこう、上からだな』『【¥1000】べ、別にロリサキュバスの写メなんて欲しくないんだからね!』


「欲望たっぷりのスパチャありがとうございますー。ちょっと時間かかるかも知れないですけど、近日中に送りますねー」


 大悟と手分けしてガンガン送信していかないと終わらないだろうな。柚希ちゃん、環ちゃんにも応援を頼もう。ルルちゃんとクリスはまだ練習中だけど、多分すぐ使いこなせるようになるだろう。

 そんなことを考えながらも、匿名質問(ましゅまろ)に答えていく。

 ある程度区切りがついたら、今回の本命だ。


「はーい、それでは今回やるゲームはこちら!」


 かちっとマウスをクリックして画面を切り替える。そこに映されるのはビトアスことビトゥイーンアスの画面だ。ちなみにおれの顔はじゃまにならないサイズで左下に別窓表示してある。

 クリスやルルちゃんの前でプレイしたこれ、実は今、ドハマりしているゲームなのだ。とはいえ妖魔対策やらお礼作りやら配信やらやることに満ちている状態では満足にプレイすることができない。

 なので、一人一回のルールで視聴者さんとプレイすることで遊ぼう、というのが企画の中身だった。

 一応、ゲームに参加する人はおれが村人なのか狼なのかわからないよう、一度配信を切るというルールだけ追加したけれど、そこは視聴者さんの良識に頼るしかない。まぁガチで推理を楽しむのではなく、まったり雑談しながら楽しむことが目的だし、他の視聴者さんもいるから大丈夫だろう。


「さて、ルールはよろしいですか?」


『よろしいです』『【¥500】よわよわなのが目に浮かぶ』『【¥1000】サプライズ写メ楽しみ』


「おれ、こうみえても結構プレイしてるからね! 名推理が冴え渡るからね!」


『これは分からせ案件』『キルされて涙目のあまねたんに血流改善不可避』『まったく見当はずれ推理をするに1000ペリカ』『経験者(笑)なんですね』『涙目希望www』


 サプライズ写メの話もわりと広まっているのか、少額ながらスパチャの頻度がすごく高い。集金と思われるのは嫌だけど、写メを楽しみにしてくれる人が多いのなら続けたいのも本音だ。

 悩ましいところである。

 もし写メプレゼントをやめるとか、別のものにするときはプイッターで告知してからにしないとな。

 ビトアスの最大プレイ人数は10人。そして狼は二人に設定している。

 おれはこないだのアンケートで決まったピンクをキャラに設定して、ユーザーネーム『あまね』でログインする。

 そうして早い者勝ちで9人が埋まったらゲーム開始だ。

 よし、村人になったのでまずは食糧庫にいって仕事をするかな。と思って行動していると、ススっと寄ってきた緑に(キル)される。


「アーッ、嘘!? 初手で(キル)された!? もう終わりなの!?」


『かわいい』『よわよわ』『単独行動するからwww』『涙目で草』『緑はあまねわからせ勢』『【¥100】見当違いな証言すらできなかったあまねたんにペリカ進呈』


 会議が始まるけれど、狼の犯行は目撃されず、プレイヤーたちの悲嘆だけが響く。

『あまねたんとの生会話を楽しみにしてたのに……』

『狼絶対に吊ろう』

『メタだろうが何だろうが許す。あらゆる手を使ってあまねたんを手に掛けた者を抹殺せよ』

『ころすころすころすころす』

『ヒッ……!』

『『『『『『『『お前かぁぁぁぁぁぁ!!!』』』』』』』』


 約全員から投票された緑は速攻で追放された。


「いやー、みんなちょっと怖いねこれは。緑さんの気持ちも分かるよ」


『鬼気溢れすぎwww』『これは緑が悪い』『まぁわからせ部隊の急先鋒だったんだろ』『あまねたんをヤれるなら吊られても本望』


 結局、そのあともう一人の狼が犯行現場を目撃されて敢え無くゲーム終了。狼も一人だけだとアリバイが取れず、すぐに見つかってしまうのだ。


「お疲れ様でしたー」

「ああああ! やっとあまねちゃんの声が聞こえた!」

「ファンです! CGでも本物でも大好きです! 頑張ってください!」

「すぐスパチャします! 遊んでくれてありがとうございました!」

「ルルちゃんの設定をくわしくお願いします! 出会いとか!」


 思い思いの感想を告げるとさらっと抜けて、次の人たちが入ってくる。

 あ、今度はおれ、狼だ。

 殺す側かぁ。苦手なんだよなぁ。


『これは』『楽しみすぎる』『うっかり目撃されないようにwww』『とりあえず村人のふりして信頼を勝ち取ろう』


「んー、集会所で他の人とタスクやる振りして……あ、今!」


 狼だけが使える秘密の通路を使ってさらっと脱出! 完璧!


「どーですか今のキル! 鮮やかな手口!」


『これは吊りたくなる』『【¥1000】ドヤかわいい』『【¥5000】先ほどはプレイありがとうございました』『さて、疑われなければ良いが』『とりあえずぴんくを吊ろう』


「えーと、あまねさんはどこにいました?」

「あ、お、おれは食糧庫から休憩所に向けて歩いてました、よ?」

「え? 俺、休憩所から食糧庫に向かってたんだけど、会ってないなぁ」

「あれ、おかしいですね……まさかあまねさん……?」


『キョドりすぎで草』『ワイプもっと大きくして欲しいwww』『これはもう無理』『あー、さすが経験者(笑)』『今のは普通に逃げた方が良かった』『いや、篝火を消して暗くすれば』


 あーでもないこーでもないとコメント欄がにぎわうが、おれはそれどころじゃない。


「み、みなさんはどちらを信じますかっ?」

「えっ!?」

「私?」

「俺ですか!?」

「僕!?」


 仕方ないので他のところでタスクをこなしていたであろう他の人を巻き込む。このゲームは推理力だけじゃなくて説得力や信用を勝ち取る力も試されるのだ!

 ちなみに、結構女の人も参加してくれて嬉しい。

 ファンだから男女関係ないんだけど、同性だとビジュアルのみを見てるわけじゃなくて純粋に面白いとか思ってもらえてそうな気がするからね。


「おれ、狼じゃないです。信じてください!」

「アッ……かわいい……!」

「うん信じた。超信じた」

「あまねたんを(おとしい)れようたぁふてぇ野郎だ」

「よし、コイツを追放だ」

「もう投票した」

「いや、俺は本当に見てないんだってば!」

「――それが遺言(ゆいごん)で良いんだな?」


『強引過ぎて草』『これは可哀そう』『ゲームの趣旨が違うwww』『接待プレイか』『別ゲーになってるぞw』『あまねたんを勝たせるゲーム』『むしろやってみたい』『いかにあまねたんに奉仕するかがミソ』


 さて、これ以上危ない橋を渡りたくないので無関係な村人の紫にくっついて行動する。こうすれば『一緒にいたけど殺されなかった』という信頼によっておれは村人に見えることだろう。狼は二人の設定なので、村人殺しは相方に任せておれは擬態に徹するのだ!


「さて、また人が死んだわけだが」

「あ、おれは紫の人とずーっと一緒にいたよ! ね?」

「ヴァッ……きゃわわ……はい! 私、あまねさんと一緒にいました!」

「生あまねかわいすぎる……私紫に投票するわ」

「えっ。オレンジさん何で紫さんに? 紫さんはずっとおれといましたよ? だれも殺せないです」

「うん。狼とか関係なく普通に嫉妬だから気にしないで!」

「僕も紫に投票します」

「村の風紀を著しく乱したので仕方ないです」

「紫もあまねたんと一緒に過ごせて満足だっただろう」

「あー……それは確かに、そうかもだけど……」

「マジか……マジか……!」


『【¥1000】これはさすがに大草原』『殺さなくても殺せるとか死神かwww』『めっちゃプレイしたい』『普通のプレイ経験が役に立たないw』『死神プレイ噴いた』『草』


「えっと、おれは単独の方が平和ですかね……?」


『追放したい色にくっつけば良いよ』『この村は狂信者しかいない』『あまね教は洗脳度高いな』『せっかくだから次は嫌いな色をボイチャで言ってみて』『皆が見てる前で殺して反応を見てみようかw』


 こうして予想してたのと違うプレイをしながらも二時間近くビトアスをプレイする。さすがに接待過ぎるプレイは面白くない――動画的には面白いだろうけどゲーマーとして――のでやめてもらうことにした。

 村人が集まっている目の前で殺されて、


「無理心中を演出しました! 超満足!」


 とか爽やかに告げる人や、


「ごめん……あまねたんを殺すなんて俺にはできない……!」


 唐突に自らの罪を自白する人もいたけど、まぁ概ね良いプレイが出来ただろう。戦績は村人で7割勝利、狼の時に2割勝利くらいだった。狼は苦手なんだよ。


「さて、そろそろ配信終了の時間が近づいてきました。まだまだ遊びたいんですが、サキュバスのおれは、夜はスッゴク忙しいので!」


『これは健全』『健全過ぎる発言』『クリスたんですね、わかります』『血流が一気に改善した』『低血圧完治した』『【¥2000】窓を開けてお待ちしてます』『ルルちゃんと添い寝hshs』『健康な人が増えたwww』『健康増進まったなし』


「あ、そうだ! これからいろんな企画をやってく予定だから、ぷいったーは必ずチェックしてね! おれがお休みすることもあるだろうし、推しが出てないと悲しいでしょ?」


 コメント欄にみんなの出演希望が凄まじい勢いで流れるけれど、流石にもう目で追えるレベルじゃないし、次回がノープランすぎて反応に困るのでスルーする。


「そ・れ・で・は! 今夜のお相手は、宗谷・あまねがお送りしました! シーユーネクストタイム!」


 ゲーム画面を閉じ、おれを大写しにして手を振る。

 あー楽しかった!


「あー、ビトアス楽しい」

「先輩好きっすね」

「うん。プレイヤースキルというよりも、思考方法がメインだからゲーム下手でも頑張れる」

「そもそもボイスチャットの時点で厳しいっす」

「そうなぁ……大悟の実家、壁薄いしなぁ」

「(ビクッ)」

「お前もトラウマになっとるんかい」

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[一言] 一日二話!!!!!!たいへんヨシ!!!!!!
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