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◆050 「ありがとうございました」

「はい、そんなわけでお礼配信です!」


『お礼って何の?』『唐突で草』『もう少し説明してくれ』『環の罰ゲームかなんか?』


「良いの! 皆お礼を言いたいってことで一致してるんだから!」


『だから何のだよwww』『こくこく頷くルルちゃん可愛い』『環は謎のピースしてる』『頷くたびにぷるんぷるんする柚希ちゃんマジでっっっっか』『スパチャオフって何かあったん?』


 それから数日後。

 おれたちは日本に戻ってきて配信をしていた。


 アルマに細かい計算をお願いして車を過去に送ったので、きっと過去のおれは今頃大変な思いをしている頃だろう。

 環ちゃんに襲われた辺りか、それともルルちゃんを助けた辺りか。

 いずれにしても、ずいぶんと昔のことのように感じる。


 あの後、浮遊島が墜落する前にもう二つだけ特別なことをした。

 一つは、日本の人々から害霊に関する記憶を消して、被害に遭った人々を復活させることだ。

 ピンポイントでおれの魔法を送りまくって害霊に侵食されてしまった人や、けがをしてしまった人たちを片っ端から回復させたのだ。

 ちなみに異世界の方は記憶を消してはいない。

 浮遊島に残っていたエネルギーが足りな過ぎたのと、日本に比べたらこういうことへの耐性も高いだろうっていう勝手な判断だ。

 いやまぁ、一応は亜神だし、隠すより普通に祝福を撒いてあげられるからその方が良いよね、って思っただけなんだけどさ。

 不本意ながらすでに信仰されてるしね。


「あまねお嬢様の活躍がなかったことになってしまいますが、よろしいですか?」

「今まで助けてもらった分を返しただけだし。何より、怖い思いをした記憶なんてない方が良いでしょ」


 各地で異常気象が起きて水道管やらガス管が破裂、いろんなところが壊れたよ、という意味不明な事故が起きたことになったけれど、死者もケガ人もゼロ。

 報道機関やバラエティ番組が奇蹟だのなんだと特集を組むほどの騒ぎになっていた。

 誰も悲しい思いをしなかったのだ。きっと新しいニュースに押し流されてさっさと過去の記憶になることだろう。


「陰キャバスの皆にはいっつも助けてもらってるからね! 今日はそのお礼!」


 強引に話を進めながらコメントを拾い、皆で楽しい時間を作っていく。


 最初は思い付きだったしお金を稼ぐためだったけど、配信してて良かった。

 本当に、心の底からそう思う。


 誰も覚えていないけれど、こうやって少しずつ皆に笑顔や幸せを分けて恩返ししていこう。


「それじゃあ最後に、新メンバーの発表です!」

『またかよwww』『個人箱やばいwww』『草』『個人勢って人数じゃないのマジで草』『期待』『待機』『ケモナーですか!?』『人魚! 人魚希望!』『人外が良いです!』『肌が青いの希望!』『熟女ぉぉぉぉ!!!』

 

「性癖に忠実すぎるだろ……新メンバーはこの子! おいで!」


 これが、過去に干渉して行った二つ目のことだ。

 おれの声に応じててちてちと歩いてきたのは、緑の葉っぱを頭から生やした幼女。

 ……夏に暴走して〈命枯らす樹〉になった、あの妖魔の女の子だった。


「はじめまちて。セイメーでつ」

「というわけでニンフって設定の激カワ幼女、晴明ちゃんだよー!」

「あまねさん、設定って言っちゃってます……」

「あっ!?」


『草』『草』『いやマジで新メンバーが草だった』『草というか植物の妖精な』『可愛い』『これは推す』『あまねの毒牙に気を付けろよ!』『晴明っていうか光源氏計画?』『るるたそのいもうと』『いや、晴明なら♂かもしれん』『こんなに可愛い女の子がいるわけないじゃないか』


 名前すら存在せず、世界に絶望して死に絶えたあの子を未来に引っ張り込んできたのだ。

 そして、害霊を倒すためにシステムとして永遠のループを繰り返すことになった安倍晴明さんの名前をつけさせてもらった。


 ただの感傷と言われればそうなのかもしれない。

 世界中に溢れる悲劇からこの子だけを救い出すのがエゴだと言われれば、その通りだとも思う。


 でも、どうしても助けてあげたかった。


 世界って良いとこだよって、人生ってそう捨てたもんじゃないよって教えてあげたかったのだ。


「さて、そんなわけで新メンバーも入ってますます絶好調なあまねチャン(と)ネル! これからもよろしくお願いしますよ~!」

「これからん配信でやってほしかことことあったら教えてね」

「リクエスト、がんばる、です!」


『水着』『(不適切なコメントが削除されました)』『(不適切なコメントが削除されました)』『下着』『ぬるぬる相撲』『触手プレイ』『(不適切なコメントが削除されました)』『柚希が水着でとらんぽりん』『るるたそ耐久配信』『24時間罰ゲーム配信』『るるたそおへそ配信』『(不適切なコメントが削除されました)』『(不適切なコメントが削除されました)』『(不適切なコメントが削除されました)』『えっちなのが良いです!』『るるたそお耳配信』


「削除多いな!? 欲望に素直すぎるだろ!?」


 っていうか削除されたコメントが怖すぎる。

 いやむしろ検閲を潜り抜けた奴らの性癖が特殊すぎるのか……?

 罰ゲーム配信の耐久とか地獄みたいな提案が目に入って気が遠くなる。

 あとおへそ配信ってなんだ。過去の水着回とかをスクショした画像を眺めててくれ。


「ま、まぁ今後も色々検討しながら企画を立てていくので、応援よろしくね!」

「あ、逃げた」

「逃げたな」

「逃げた、です」


 うるさいな!

 おれはノーマル純愛ハーレム路線なんだよ!


「それじゃあ最後に! せーのっ!」



「「「「「「「「「ありがとうございました!」」」」」」」」」


「今まで応援ありがとうございました!」

「楽しかった、です!」

「楽しかったねー! いやでも、終わっちゃうのは寂しいなぁ。もっと皆と遊びたいしはしゃぎたいよおれは」

「当たり前だが、物語が終わっても私たちがいなくなるわけじゃない」

「ウチらん人生ば、ずーっと続くけんね!」

「あまねさんは不老ですし、眷属のボクたちも似たようなものでしょうから永遠に、ですね」

「ずっと、そのまま、です?」

「変わっていくものもありますわ。でも、変わらないものもありますわ」

「だな。でも、ここで一区切りだ」

「応援ありがとう」

「たくさん助けてもらったです!」

「ウチらが頑張れたんも皆んお陰ばい」

「ボクたちの物語はいったんここまでです」

「これから先、わたくしたちがどうなるのか。それは、またいずれ、ですわね」

「そんなこと言って、またひょっこり配信始めたりしそうですけどね! まぁでも、一区切りってことで挨拶しますか!」

「それじゃあ、せーの!」


「「「「「「「「「またねー!」」」」」」」」」



※本日20時に掲示板回、21時に「AFTER ENDING」を投稿します。最後まで楽しんでいただければ幸いです。

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