◆014【第一回配信】後編
感謝の連続更新です。
本日2回目の更新となっておりますので、お気を付けください。
「エッ」
思いもよらぬクリスの言葉におれは思わず素の声を出してしまった。
現在、大悟サポート、ルルちゃん見学の元で配信が続けられている。おれとクリスのなれそめに関しては魔力の補充をぼかして説明し終えたけれど、クリスが今答えているのはその次にきたマシュマロだった。
『自宅警備員の詳しい仕事内容と、給与などの待遇を教えてください』
これ絶対ネタだと思うんだけど、まぁ大悟がGOサインを出したってことはマシュマロがまだまだ少ないって事だろう。見てくれる人を大切にしない配信に、次回はないのだ。
給与に関しては、
「仕事内容と給与か。給与はいいぞ。三食、貴族でも考えられないほどの豪華な料理が出てくる。この間はぐらたんという料理を食べた。あと、あまねに誘われれば昼寝もできるな」
と、ニートの模範解答みたいな待遇を堂々と言い切ってたのでまぁ良いとする。撮れ高あるだろうこれは。
おれが変な声を出してしまったのは、その後に続いた発言だ。
「ただ、日本は野盗の類もおらず、モンスターはいないとあまねから聞いていたのだが、そうでもなくてな」
「エッ」
「受肉していない者が多く、魔力が扱えないものは目に見ることができないだろうが」
問題はそこではない、とクリスはおれを押しとどめて説明を続ける。
「この世界のモンスターは妙な動きをするものが多い。部屋に入ってきたかと思えば枕をひっくり返して出て行ったり、ふと空を見上げると上空で何をするでもなく漂っているだけだったり」
「……ちなみに空を漂ってるやつの見た目は?」
「布だな。割と大きい」
「一反木綿と枕返しじゃん! 普通に妖怪だよ! 嘘、そこら辺にいるの!?」
「いや、タマキの部屋で見た。斬ろうかとも思ったのだが、害意がなさそうなので様子を見ていたら、あまりにも意味不明なので困惑していた」
「まじか」
「マジだ。あまねは魔力寄りの存在なんだから分かっていると思っていたが」
マジか。
妖怪いるのか。
というか、環ちゃんの部屋にいるのか。
カメラの後ろでフリップを構えている大悟もびっくりな顔をしながらクリスを見つめている。そりゃそうだ。妹の部屋が心霊(?)スポットになってたらびっくりだよね。
「えーと、ちなみに、おれにも妖怪、アッ、そのモンスターって見えたりする?」
「あまねはサキュバスなんだから見えない方がおかしい」
「エッ、ハイ」
「あとで魔力の扱い方を教えるから」
「アッ、ハイ」
もはやおれに言えることはない。大人しく頷いておくことにする。
ここで妙な空気を感じたのか、再び大悟からフリップ。
「お、ここで次の質問! 『ママはだれですか?』」
「ママ……私は孤児だ。教会に引き取られて勇者になるべく訓練していたが、親とは少し違う気もするな」
あー、違うんだよクリス。
「えっと、クリスがガチな返答してるけど、これって多分イラストレーターさんとかって意味だよね?」
多分! と汚い字で書きなぐった大悟に、頷いて返すと、改めてカメラへと向き直る。
「ママねぇ。そもそもおれ、バーチャルだなんて言ってないですよ? ほら、クリスにも触れますし」
「くすぐったい」
クリスのほっぺをむにっとしたらクリスにぺいってされた。
あー、うーん。
答えてから思い付いたけど、このままバーチャルとリアルの中間くらいってことにしとこうか。異世界の物品を取り上げて紹介したりしようかと思ってたけど、ガチ魔法って思われるよりネタ寄りの扱いの方がその辺の対応楽になりそうだし。
「と言っても信じられないよね。というわけでおれが実在するかどうかも含めて妄想してみてください」
にっこり笑って言い切ると、何故かカメラ後ろで見学していたルルちゃんが赤面していた。
ぐうかわいい。
「さて、このチャンネルですが、仮称で【女勇者とロリサキュバスの健全配信ちゃんねる】にしてあります。収益化を目指して頑張っていこうと思うので、チャンネル名や企画など、良いアイデアがあったらバシバシコメントしてください」
おれがカメラに手を振るのを見て、クリスも真似してくれた。
「そのうち新メンバーも入るのでお楽しみに! それでは、」
「「シーユーネクストタイム!」」
こうして、おれの初回配信は終了するのであった。
改善点としては、異世界装備を全体像で撮影しようとすると手元にモニターが置けないことが一番大きいだろう。おかげでマシュマロは大悟がフリップに書き写さないといけなかった。
これから収益化が始まれば、スパチャをしてもらった時に反応をしないのはさすがに避けたい。この間、購入を見送ったけれど、大型テレビを買ってHDMIで繋ぐべきだろうか。
それとも今後の配信はウエストアップくらいで撮るべきだろうか。
せっかく買ってきた衣装を活かしきれないような……いやでも着るの大変そうだし良いのか別に?
うーん、今度相談。
続いておれの立ち位置。バーチャルな存在だって前提で異世界をぐいぐい推すか、それとも普通の配信者として色んなところを巡ったりゲーム配信をしたりするべきだろうか。
これも相談だ。
一応、クリスのドレスアーマーを購入したときに魔道具も少し買ったのでそれも検分しながら決めよう。
正直、異世界をネタにするのはすごく惹かれる。
惹かれるけど、何かあったときにすごく面倒になりそうな気配もするのだ。
「うーん。課題多いな……」
小さく呟いたあと、おれは大きく伸びをした。
お読みいただきありがとうございます。一回目のあとがきの元ネタはバイオのかゆうまです。
(´・ω・`)<ポイント
(´・ω:;.:…<ぽいん、と
(´:;….::;.:. :::;.. …..<ぽ……
多分こんな感じです。
***
ストックが切れるまでは毎日最低一話ずつ更新します!
更新無かったら予約ミスってんなコイツ、くらいの生温かい目で見てやってください。
ブクマや評価等を頂けますと作者のモチベーションと作品の健全度が上がりますので、ぜひともお願いします。
それでは次回もお楽しみに! 次回の掲示板回を挟んで一章終了です。