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◆011配信準備 ルルの転機

ちょっと鬱っぽい感じの話ですが、悲劇にはなりませんのでご安心ください。

前回登場したロップイヤーなうさ耳ロリっ娘ルルちゃんの背景です。

それでは本話もお楽しみください。

 ルルはコリーニョ族なのです。

 獣人の中でも身体が小さく、あまり強くはない種族です。だからみんなからいじめられて、一緒には暮らせなくなってしまったのです。

 でも、魔族の人と一緒に暮らすのも「よくないことだ」って言って、パパとママ、そして4人のお兄ちゃんお姉ちゃん、2人の弟と森に建てたバラックで暮らしていたのです。

 ある日、弟の一人が熱を出しました。

 パパは街に出て医者に見せる、と言って弟を(かつ)いで出ていきました。

 お兄ちゃん達がパパの真似をして、森で獣を狩るようになりました。パパのように、たくさんの獲物はとれないってよく言っていました。

 ルルはお姉ちゃん達やママと果物を探したり、木の実やキノコ、食べられるものを探しました。森の深いところは魔物が多くて危険なので、浅いところがルルの担当です。

 ママはすっごく深いところまでいくって言ってたし、上のお姉ちゃんも魔物がうろうろするようなところでキノコや木の実を探していたみたいでした。

 みんなで暮らしながら、パパが良くなった弟を連れて帰ってくるのを待つようになって二か月近く経った頃でしょうか。お兄ちゃんの一人が、獣に襲われて死んでしまいました。みんなで泣きながらお墓を掘って埋めました。

 それから、ママと上のお姉ちゃんで何か難しいことを話していました。

 その晩、ルルと弟はママに呼ばれました。


「このままじゃ、みんなが生きていくことはできないの」


 ママはわんわん泣きながら、私と弟をぎゅぅってしてくれました。

 弟は何もわかっていないのか、不思議そうな顔をしながらママを見つめ返していましたが、ルルには何となくわかりました。ルルの耳は、ひとの嘘を聞き分けることができるのです。だから、ママのことばが本当だって、分かってしまいました。

 それから二日後、私と弟は奴隷商に売りに出されました。

 銀貨6枚。

 それがルルたちの値段でした。

 奴隷商は地面に捨てるようにお金を撒いて、拾え、とママに命じました。

 ママがそれを拾おうとかがむと、奴隷商に蹴られてしまいました。ルルは怖くなって動けませんでしたが、弟は違いました。


「ママをいじめるなっ」


 奴隷商に跳びかかると、その手首に思い切り嚙みついたのです。

 悲鳴を上げて弟を振り払った奴隷商は、怒って弟を何度も蹴りました。蹴って、蹴って、蹴って、真っ赤な血を吐く弟を助けようと周りをみたら、すでにママは銀貨を拾って逃げ出していました。

 そして、弟はそのまま動かなくなりました。

 きっと、死んでしまったのです。

 私はどうすることもできず、どうすればいいかも分からず、奴隷商に命じられるままに檻の中で過ごしました。

 ひと月ほど後に、奴隷市が開かれるそうです。

 そこで売れなければ、私は魔物の餌になると言われました。

 怖くて震えて、泣いて、うるさいって殴られて、私は檻の隅っこでぶるぶる震えていました。檻には他の奴隷もいましたが、近づこうとすると怒られました。

 なんでこんなに嫌な思いをするんだろう。

 なんでこんなに皆がルルのことを嫌いなんだろう。

 ママはどうしてルルと弟を売ったんだろう。

 要らない子だったのかな。

 何か悪いことしちゃったのかな。

 あの銀貨で、ママとお兄ちゃんお姉ちゃんはご飯を食べられるようになったかな。

 パパたちは無事なのかな。

 じわじわと溢れる涙を手で拭って、じっと我慢しました。

 ご飯は、日に一日、パンとスープが出されます。ルルが近づくと「汚い」って怒られるから、他の奴隷の子が取り終わるのを待って、最後の一つを取ります。

 ルル、汚いのかな。

 ルルの耳は、奴隷の子たちのことばが嘘じゃないって言ってます。

 三日に一度、奴隷は全員井戸の前に立たされ、ばしゃばしゃ洗われます。水は冷たいし、桶から投げつけるように掛けられるのはちょっと痛いので好きではないけれど、できるだけ綺麗になるように一生懸命身体をこすりました。

 でも、汚い、近づくな、病気がうつるって言われました。

 何が悪いのかわからず、ルルは途方にくれました。

 ルル、病気じゃないのに。

 奴隷市場で誰かに買われれば、きっとこの子たちともお別れだから。そんな風に自分に言い聞かせて、じっと待ちました。


 奴隷市場は、私が思っていたよりもずっときれいなところでした。檻から出された順番に、どんどん売れていきます。

 すてきなお洋服をきたおじさんやおばさんが買ってくれたら、私も汚いって言われなくなるんでしょうか。

 お腹の大きな商人さんが買ってくれたら、私もご飯が食べられるようになるんでしょうか。

 優しそうな神父のおじいさんが買ってくれたら、私にも優しくしてもらえるんでしょうか。

 ドキドキしながら待っていると、ルルの番が来ました。

 でも、誰も声を挙げてくれません。

 他の子は一番安くても銀貨21枚で売れたのに、銀貨10枚で始まった私に、誰も声を掛けてくれませんでした。

 小さいころ、可愛いねってパパが褒めてくれた私の耳は、意識せずとも周囲のざわめきを拾ってしまいます。


 ルル、病気なんかじゃないよ?

 一生懸命洗ったから、汚くないよ?

 なんでそんなに嫌なことを言うの?

 どうしてそこまで、ルルのことを嫌うの?


 じわりと涙が溢れました。でも、私は俯くことしかできません。突き刺すような視線が怖くて、声を挙げることも、動くことさえもできなくなってしまったのです。

 その時です。


「買う! おれが買うぞ!」


 雲間から差し込む光のような、きれいな声が私の耳に飛び込んできました。

 びっくりして声の主をみると、そこにいたのは絵本の妖精みたいな、信じられないくらい可愛い女の子でした。


「大の大人が揃いもそろって小さな女の子相手に何やってんだ! 伝染病? 魔族? この子自身が何かしたのか!?」


 騎士様みたいなびしっとした女の人を従えた女の子は、宝石みたいな紫色の目で周りを睨んで、怒っていました。

 ルルの耳には分かります。

 ほんとの本気で、怒っているのです。


「小さな女の子一人を見殺しにして、お前らは家に帰って自分の家族に立派なことしたって、胸張って言えるのか!?」


 私のために、怒ってくれたのです。


「伝染病に罹りたくて罹る人間がいるのか!? この子自身が病気だって証拠でもあるのか!?」


 結局、私はその子に買われることになりました。

 お姫様みたいにきれいだけど、服装は普通の服なので、何をしている人なのかはわかりませんでした。

 でも、きっと。

 私のために怒ってくれたこの人に買ってもらえたんだから、私も人のために怒れるような、強い人間になろうと思いました。

※設定厨

補足:うさ耳ロリっ娘ルルちゃんの不思議パワーについて

ルルちゃんの真偽を聴く能力は注意して聞いたときのみ分かるものです。

アクティブスキルのような扱いですね。ルルちゃんは何となくわかる、くらいにしか把握しておりませんが、心音や息遣い、声の高さ等々の情報を総合して真偽を聞き分けています。そのため、特殊な訓練をした者であれば欺けます。また、電話などになると精度が落ち、チャットや手紙では判別できなくなります。


***


ストックが切れるまでは毎日最低一話ずつ更新します!

更新無かったら予約ミスってんなコイツ、くらいの生温かい目で見てやってください。


ブクマや評価等を頂けますと作者のモチベーションと作品の健全度が上がりますので、ぜひともお願いします。


それでは次回もお楽しみに!

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