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幼いころから妖怪のために生きていた俺は正直人間なんてどうなろうが関係なかった。何をするのも妖怪が最優先。人間なんて人間が助ければいい。俺には関係ない。一生を妖怪に捧げる覚悟で生きてきた。

・・・だけど、お前に会って俺は見る世界が変わったんだ。




「嫌っ、絶対に嫌!!」


ズルズルと引きずられながら長い廊下を進んでいく。彼女の名前は芦野 レオ。芦野家の一人娘だ。


「もう、いい加減にしなさいレオ!!毎回毎回お見合いの話になると逃げまわって。今日こそ『紅家』のご子息と会うんだからね。腹を括りなさい」

「腹を括るもなにも学園まで押し掛けることないじゃない!てか、何がお見合いよ。私まだ17よ!早すぎる!!」


お見合いにも関わらず、彼女の格好は水色のフードの下に黒のワイシャツ、スカートといった所謂『制服』なのだ。レオは学園から家に帰ろうとした際待ち伏せをしていた母親に拉致られたのだ。

芦野家は古くから人には見えざる者、『妖怪』の類を祓う家系である。その為、レオも妖怪を祓う知識や経験は幼いころから叩き込まれており、その実力は芦野家当主の次に強い力を持つ。その為かその実力欲しさに数多くの縁談が来ており、今日お見合い予定の『紅家』もその一つであった。紅家も芦野家と同じで祓い屋である。そこのご子息もレオ同様、強い力の持ち主で紅家の次期当主になる人物である。しかしそのご子息はあまり表に出ないことで有名な人物で、正直レオも顔すれ知らなければ名前もわからないのだ。ただ分かるのはレオ同様、強い力を持っていることと同い年ということだけだ。確かに年寄りとお見合いなんて願い下げだが、だからといってまだ高校生で青春真っ盛りなこの時にお見合いなんてないんじゃないだろうか。


(まぁ、すきを見て逃げればいいか)


そんなことを考えながら長い長い廊下を引きずられていった。



「では、この部屋でお待ちください。ただいま当主様とご子息様を呼んでまいります。」


案内人の女性が部屋から出ていきレオは母親と一緒にその場で座って待っていた。


(・・・ハナミズキ、きれいだなぁ)


ふと見つめた先に会ったのは綺麗に咲き誇るハナミズキ。レオはうっとりと目を細めてみていた。その時、襖の開く音がしてレオはハナミズキからそちらのほうに顔を向けた。そこにはこの家の当主が立っていた。


「待たせてしまってすまないな。」

「いえ、こちらこそ。お時間をいただいてありがとうございます。」


当主はレオの方に顔を向け、柔らかい笑みを浮かべた。


「久しいね、レオちゃん。しばらく見ないうちに綺麗になったね。」

「お久しぶりです。征秋おじさま。おじさまも元気そうで何よりです。」


まだレオが幼いころに顔合わせた程度だったが、本人はしっかりとレオのこと覚えていたらしい。当主はレオたちの向かいの席に座ると申し訳のない顔をした。


「来てもらってすまないが、今息子は依頼の仕事中でな。後一時間位で終わると言っていたからもう少々待ってもらってもいいかね?」

「あ・・はい私は大丈夫です。あぁ、お時間があるならここのハナミズキを見に行ってもよろしいでしょうか。」


確かここはハナミズキの花が沢山咲いている場所があった記憶がある。見合いは来たくなかったがここのハナミズキは見たかったのだ。おそらくそれを知っている当主は快く了承してくれた。


「あぁ、行っておいで。私は君のお母様と話があるからね。」

「一時間前位には戻ってくるのよ」

「わかった」


レオは立ち上がり当主に頭を下げて部屋から出た。



「わぁ、綺麗」


ハナミズキの庭にレオの歓喜の声が響いた。辺り一面ハナミズキ。手入れが行き届いているのだろう、綺麗に咲き誇っていた。レオはポケットの中から札を出し口に当て呪文を唱えた。

 唱えた瞬間出てきたのは桜のような薄いピンクの髪色をし、水色の着物に緑の羽織を着た女性が現れた。レオは出てきてすぐに彼女に抱きつく


「リン!会いたかったよ!!」

「会いたかったも何も昨日会ったばかりであろう」


。レオはリンと呼ぶ彼女にそうだっけ?と笑みを向けた。彼女は妖の類であり、レオが幼いころから一緒に過ごしている。友達だ。レオはリンの膝を借りその場に寝転んだ。ハナミズキの香りに包まれながら目を閉じる。こんな姿レオの家のものが見たら小言を言われるだろうが今はレオとリンの二人だけだ。


「・・・お見合いかぁ、本当毎回毎回嫌になる。私は普通に恋がしたいのよ。親同士で決められた結婚なんて絶対いや」

「...私は出来ればソナタが嫁いで幸せになって欲しいものだけど...そんな顔されたらあまり強くいえないな」


レオの目からジワリと涙が出てくる。リンはレオの目元を優しくなぞった。

お見合い相手たちはみんな『芦野』のことしか考えていない。レオ自身を見ようとしない。そんな人たちをたくさん見てきたのだ。そのたびに嫌気がさしてきた。もういっそこのまま・・・。


「なんだ。知らない妖怪の気配がすると思ったら人間もいたのか」

「・・・・」


声のしたほうに顔を向けるとそこには白い着物に赤い羽織を着た金髪の髪と金色の瞳をも持った青年が立っていた。周りのハナミズキが彼をどこか儚げな印象を抱かせている。


「えっと・・・、この家の人ですか?」

「・・・そうだけど。あんた、なんでこの敷地にいるの?不法侵入者?」


冷たい目で見てくる青年にレオは慌てて立ち上がった。


「ごめんなさい、挨拶が遅れたわ。私は芦野 レオ。ここには征秋おじさまからの許可は貰っているわ」

「・・・芦野?」


目の前の青年は先程の冷たい視線から一変、驚きの表情をしていた。

この顔には見覚えがあるとレオ思った。だって、たくさん見てきたのだから。


「・・・まぁ、ここの者でもないのに自由にしていた私が悪かったわ。じゃぁ、私戻るから。」


それだけ言い、レオはリンを戻すと、青年から背を向け、ハナミズキの庭園を後にした。


(それにしても・・・。)


ハナミズキの道を抜けながら先程の青年を思い出した。

 金色の髪と瞳。あれは確か紅家の特徴ではなかっただろうか。



















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