第12話 本日のお仕事
昨晩。
お風呂に楽しく入りご飯を食べ、その後森の家の部屋も何とか決めて。
さて寝ようかと思ったら、カタリナから注文が入った。
「村のお家か街の宿で寝る。一緒の部屋だから」
そうなのか。
せっかく自分の部屋が出来たのに。
まあ2人の可愛い寝顔を観察できるから良しとするか。
そんな訳で宿屋の部屋で就寝。
さて翌日。
本日の予定は概ね3つ。
1 冒険者ギルドで簡単な依頼を受ける。
2 依頼を完了させ報奨金を貰い、ギルドの仕組みを実際に確認する。
3 服屋に服を取りに行く。
この3点だ。
このうち3番についてはサリナとカタリナに依頼した。
他にお買い物をしてもいいと言ってお金も正銀貨10枚持たせている。
更に俺のと同じ収納庫付きポシェットを持たせた。
ただ外に出るときはあの魔法強化装備をつけショールを纏うように言ってある。
これで万が一があっても自分達で対処出来るだろう。
朝食後、2人に『どこに行ってもいいけれど夕御飯までにはこの部屋に帰ってきてね』と言って俺は仕事に出かける。
まずは朝一番のギルドで掲示板確認だ。
案の定むさくるしい男だのちょい小汚い系の女だのでギルドは込み合っている。
一番多いのは掲示板のランクE依頼の前だけれどもランクD依頼の前も結構多い。
ランクEの冒険者でも3人以上のパーティならランクDの依頼を受けられる。
ランク上の依頼を数こなすことでランク上昇の対象になるし、報酬もランクによってかなりの差がある訳だ。
さて、俺は人混みは嫌いなので少し離れて掲示板の内容を魔法で確認。
お、ちょうどいいランクDの依頼がある。
白銀狼のつがいの討伐だ。
場所はここシデリアの街の南側2離付近。
この辺に半月前から出没するようになった白銀狼のつがいにより、家畜ばかりか商隊にも被害が出ている。
早急に退治して欲しいというまあパターン通りの依頼。
なおこれは達成受付型の報酬だ。
つまり退治した後、証拠物をもってギルド窓口にいくと達成報酬が貰えるタイプ。
特に事前受付は必要無い。
だからついでに常時依頼の灰色狼とか黒狼、ゴブリン等の魔獣魔物の退治をしながらやればいいだろう。
解体は面倒だから倒した状態のまま収納庫に入れておけば良い。
この収納庫は他の物を汚すことも無いし、防汚措置もついているしな。
さて、行くか。
歩き始めると、わざと前にぶつかるように歩いてきた奴がいた。
避けるのも面倒なので『身体超強化超重量化超硬化』を無詠唱で発動させそのまま歩く。
下卑な笑いを浮かべた男は俺とぶつかった瞬間、後に跳ね飛ばされうずくまった。
「うがあああっ、足が、足があっ!」
自分から重さ約1トンの鉄塊にぶつかったようなものだ。
そうなって当然だな。
なおギルド内では『魔法で他人を攻撃する事』は禁止だが『自分に魔法をかける事』は禁止されていない。
つまり俺の行動はセーフ。
「くっそー、この餓鬼め」
今の馬鹿の仲間らしく殴りかかってくる奴3人。
俺は全く防護しないでそのまま出口へ歩くだけ。
「うがあっ」
「痛え!」
「何だこいつ」
そりゃ鉄の塊相当まで固化させた俺を殴ったら痛いだろう。
背後で色々言っているが面倒なので相手せず、外へ出る。
多少ギルドの中で騒ぎが聞こえはじめたが無視だ。
馬鹿に関わっても何もいい事は無い。
さて現場へ行くとするか。
やはり飛んでいくのが一番早いだろう。
それに上空から視た方が獲物を探しやすい。
でも待てよ。一応街の木戸を通っていった方がいいか。
そんな訳で一番近い北の木戸まで歩いて行き、そこを出た後街を迂回して南へ行くことにする。
大回りだがその方が早いし楽なので。
昨日も通った木戸を出た後、ちょっとだけ歩いて。
各種強化を無詠唱で解除した後、呪文を可愛く詠唱。
「ミラ●ル ミ●クル ミラク●リン お空を飛べ!」
よし、飛行成功だ。
でも待てよ、この服とショールだと下から見えるな。
今は街上空じゃないから見る人は誰もいないけれど。
よし、後である程度伸び縮みする素材でスパッツを作って貰おう。
パンツじゃないなら恥ずかしくない!
そんな訳で見えないよう思い切り高度を上げ、目的地を目指す。
確か南へ2離付近だよな。
でも目についた魔物や魔獣は取り敢えず狩りまくる方針で。
お、街の南側、森に入って1離程度の処で早くも第1魔獣の気配発見。
第1だけじゃなく第2、第3……結構いる。
黒狼と灰色狼の小規模な群だ。
奴らは基本的に夜行性なので今はお休み中。
出来れば毛皮とか肉も高く売りたいから傷をつけない方がいいだろう。
だからウィンドカッターとかは無しの方向で。
今回はちょいエグくて便利な魔法を試してみよう。
ついでにちょいオリジナルな接頭詞も試用だ。
毎回記憶の海から探してくるのも面倒だからな。
「青い叙情的な風の精よ、呼吸停止魔法!」
おし効いた!
狼魔獣さん達が苦しみはじめたぞ。
これなら毛皮も肉も傷つかないし高価買い取りが期待できる。
それに今回の接頭詞、威力もなかなかいい感じだ。
今度から呪文はこれで統一しよう。
サリナやカタリナ用に同じシリーズの呪文も作っておかないとな。
空中でしばし狼魔獣さん達が息絶えるのを待つ。
程なく全匹おくたばりになったのでポシェット型収納庫へ。
黒狼灰色狼まとめて12匹ほど退治。
これだけで結構稼いだな。
でも今日の目的は白銀狼だ。
だからもう少し探して……おっと!
明らかに今の狼より強い魔の反応が急速に近づいてくる。
「青い叙情的な風の精よ、お空を飛べ!」
空中に待避して状況観察。
やってきたのは白銀狼2頭、正にお目当ての獲物だ。
どうも今の狼魔獣達は奴の子分だった模様。
白銀狼の大きい方は俺の方を睨み、高く長く遠吠えをする。
どうやら俺が敵だと理解した模様。
よろしいならば戦争だ。
「青い叙情的な風の精よ、呼吸停止魔法!」
おっ、速度で無理矢理魔法を振り払いやがった。
やるなこいつ。
そう思った隙にもう1頭が木々の幹を足がかりにして空中に跳び出し俺を狙う。
途中から気づいていたのでちょい上に移動して避ける。
うん、他の狼魔獣と格が違うようだ。
なら俺もそれなりの魔法で対処させて貰おう。
「青い叙情的な風の精よ、空中浮揚!」
白銀狼2頭が空中へと浮く。
2頭とももがくが足場が無くて動けない。
そう、悪いが白色狼には翼もバーニアも無い。
だからこれで全ては終わりだ。
「青い叙情的な風の精よ、呼吸停止魔法!」
やはり毛皮と肉の価値を落としたくないのでこの魔法で始末する。
2匹ともかなり頑張っていたが、残念ながら魔獣は呼吸無しでは生存できない。
完全に息絶えた事を確認し、俺は2匹を空中でそのままポシェットに収納する。
それでは街に帰るとしようか。
思ったより早く終わったがちょうどいい。
飯を持ってくるのを忘れたし、服屋でスパッツも注文しないとならないからな。




