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6ーロリ魔女王とショタ賢者、アプリーレと出会うー


新キャラ登場です!


 


「ふう~満足満足~」

「流石に食べ過ぎだねえ」



 今日購入したデザート全てを平らげたあたしとマーリンは、妊婦よろしく大きなお腹をさすってベッドに寝転がった。食べ過ぎでお腹がきつい。暫くは動く気にすらなれない。



「これだけ食べるとお昼ご飯が食べれんのう」

「なら、夕飯に回せばいい。無理して食べれば吐くぞ」

「吐いたら勿体ない。まあ、王族の連中はそうは思わんか」

「だろうな」



 マーリンの口にした王族とは、世界を統治するフォルテ王国に住む王の一族を指す。贅沢を極めた奴等は、食べたい物を食べたいが為に、食べては吐き、食べては吐きを繰り返す。気持ちの悪い連中だ。


 動いたら吐きそうなのでベッドの上でのんびりと過ごした。



 ――夕刻。


 胃袋はとても良い仕事をする。大量のデザートを夕刻になる頃には、全て消化して次の食事が出来るよう空っぽにしてくれた。空腹を覚えたあたしとマーリンは食堂へ降りた。今日は昨日よりも人が多い。



「空いている席は無さそうだのう」

「そうだ……ん?待て、あの席が空くぞ」

「うん?」



 窓際の隅っこのテーブル席に座っていた家族が席を立ったのを目撃。他の連中に取られない内にと、マーリンの首根っこを掴みその席へ走った。魔術で姿消しと透過を使用して誰の邪魔にならず到着。着いた頃には、家族はもう会計を済ませている最中だった。


 椅子を引いて座ったあたしとマーリンはメニュー表を開いた。



「今日は何にしようか」

「今日も沢山食べるぞい!」

「昼間あれだけ食べたのにね」

「む。モーガンも同じではないか。して、何を頼む?」

「そうさね。今日はパスタの気分なんだ」

「おお! 良いのう! 我輩もパスタは大好きぞい!」



 ミッドナイトの食堂には、様々な料理が存在する。パスタ一つとっても、何種類ものパスタ料理が存在する。ナポリタン、ミートスパゲティ、カルボナーラ、ボンゴレ・ビアンコ等……。その中からマーリンは何れを選ぶのか。難しい顔をしてメニュー表と睨めっこをするマーリンを眺めていると横に人が立った。店員を呼んだ覚えはない。誰かと思い顔を上げると桃色の髪を後ろに一つに縛った困り顔の少女がいた。少女は「あの」と遠慮がちに口を開いた。



「他に席が空いてなくて、相席して頂けませんか?」



 あたしとマーリンが座ったテーブル席には、4つの椅子がある。パスタに悩むマーリンの了承は要らないなと判断した。何より、少女に邪な気持ちは見られない。満席の中、相席してくれそうな此方に声を掛けただけなのだろう。



「構わんよ。只、こいつはかなりの食いしん坊だ。テーブルが狭くなっても良いのなら座りな」

「ありがとう」



 少女はあたしの隣に座った。


 腰に提げた短剣と半袖のシャツから出ている右の二の腕にある鳥の紋章が目についた。成る程、この子はギルドの者か。


 あたしの視線に気付いた少女が「あ」と声を上げた。



「自己紹介がまだだったね。私はアプリーレ。フェニックスっていうギルドに所属してる魔術師なの」

「紋章を見れば分かる。フェニックスと言えば、マスター・コロネロは元気か?」

「とても元気よ。……って、あなたマスターと知り合い?」

「まあね」

「そうなんだ。知らなかった。あのマスターがこんな小さい子と知り合いなんて……」



 まあ、奴の見た目からしてこういう反応なのは仕方ない。根は良い過ぎる位良い男だが、奴の場合見た目に問題があった。


 今は関係ないので省略するが。



「あなた達の名前を聞いていい?」

「あたしはモーガン。で、そいつはマーリン」

「呼んだかのうモーガン」

「ああ。早く決めな」

「分かっておる! おや、誰ぞい?」



 ずっとメニュー表を見て何のパスタ料理にするか悩んでいたマーリンにしたら、突然見知らぬ少女がいて首を傾げるのも無理はない。相席を希望したアプリーレだと告げた。軽く挨拶をした後、マーリンもまた、アプリーレの右の二の腕にある鳥の紋章を目にしてギルドの話をした。



「その紋章、フェニックスのだのう」

「あら、マーリン君も知ってるの?」

「うむ。有名だからのう。コロネロは元気かのう?」

「マーリン君もうちのマスターと知り合いなの?」

「まあの」

「意外だなあ。マスター、とても良い人なんだけど子供には凄く怖がられるから」



 だと思う。コロネロの身長は約2メートルを超える。加えて、スキンヘッドで厳つい顔をした親父だ。見ただけで子供は泣いて逃げる。大人でも見下ろされれば腰を抜かす。


 だが、見た目と裏腹に根は本当に良い奴だ。行き場のない野良猫を世話して里親を探したり、ギルドで稼いだ金で孤児院に多額の寄付をしたり、と。見た目が怖すぎるせいで奴は色々と損をしている。また、ギルドマスターとしての実力も王国では5本の指に入る程。『五大王』の1人、“銀の狼王”アヌビスとは永遠の好敵手(ライバル)である。


 マーリンが見終わったメニュー表をあたしとアプリーレ側に引き寄せた。



「さてさて、あたしは何にしようか」

「私もどうしよう」



 マーリンがパスタ料理に悩んでいたのなら、あたしはピザにでもしようか。あ、サラダも忘れずに。マーリンは野菜を食べるのをよく忘れる。好き嫌いはしないが忘れる。だから、常にあたしが気を掛けないといけない。


 アプリーレも何を頼むか決めたらしく、メニュー表から顔を上げたのを見計らい、店員が近くに来るのを待つ。忙しなく動き回る店員を捕まえる機会が中々来ない。仕方ない、と手を上げて声を上げようとしたら、昨日の娘がやって来た。



「こんばんは! 昨日のお客様達ですよね?」

「お主か。丁度良い。注文を頼む」

「はい!」

「マーリン」

「うむ。ええっとのう。パスタ料理の、トマトソース系とクリームソース系を全種類頼むぞい」

「か、畏まりました!」

「そ、そんなに食べるの?マーリン君」



 アプリーレが顔を引き攣らせてマーリンを見る。あたしも人の事は言えないがマーリンは食いしん坊な為それはよく食べる。大人だった時も変わらない。「そうだよ」と相槌を打ち、今日は注文票が書きやすいのか昨日とは違い時間が掛からなかった娘はあたしへ向いた。



「あたしはねえ。カプリチョーザ、マルゲリータ、ビスマルク、ボスカイオーラマリナーラ、クアトロスタジオニ、クアトロフォルマッジをおくれ。あ、生地は全部クリスピーで頼むよ」

「は、はい!」

「飲み物は……そうだね。オレンジュースをピッチャーで2つおくれ」

「はいっ!」

「……モーガンちゃんもすごく食べるね」



 アプリーレの引き攣った声はあたしにも向けられた。きっと、あたしがアプリーレでもそうなるだろう。が、知った事ではない。食べたいから食べる。人間の3大欲求を我慢出来る者はいない。『賢者』や“魔女王”でさえそうなのだから。


 アプリーレも自分の注文を済ませた。注文票を持って娘は慌ただしく厨房へ走って行った。



「またかなりの量を頼んだから時間が掛かるだろうね」

「だのう」

「いつもあんな量を……?」

「そうだよ」

「お金は大丈夫なの?」

「心配いらんよ。モーガンは腐る程のお金を持っておるからの。まあ、実際一部腐っておるがの」

「うるさい」

「腐る……? お金が……?」

「アプリーレ。真剣に考えなくて良い。時に、アプリーレは『カシス街』へは仕事で来たのかい?」



 腐る程お金があっても実際に腐らせた奴は果たしているのか。という悩みはどうでもいい。腐ったお金を想像しようとしているのか、大量の疑問符を飛ばすアプリーレに個人的な質問をしてみた。腐ったお金を思考の端へ追いやったらしいアプリーレは「そうだよ」と答えてくれた。



「守秘義務があるから、詳しい事は言えないけど仕事で来ているわ」

「そうか。時に、アプリーレの魔術師の階級は?」



 ギルドに所属する魔術師には階級が存在する。その階級に応じて受けれる仕事が変わる。下からE.D.C.B.A.Sとなり、C級は極一般的な実力の魔術師。B級から上が実力が桁違いに変わる。特に最上級のS級は、ギルドによってはいる所といない所で分かれ、いるといないとでギルドそのものの実績も大きく変わる。まだマーリンが前の『賢者』だった5年前までは、フェニックスにはS級魔術師が3人いた。



「私?私はB級だよ」



 意外だ。アプリーレの外見年齢は凡そ16位。試しに年齢を聞いてみると当たった。その若さでB級魔術師になれるとは、彼女は優秀な魔術師なのだろう。



「私からも聞いていい?」

「何だ?」

「2人はマスターとは何時知り合ったの?」



 尤もな質問だろうな。見るだけで子供を泣かせるコロネロと子供の容姿をしているあたしとマーリンが知り合いなのを未だ信じ切れていないのだ。



「コロネロとは、奴がフェニックスのマスターになった頃に知り合った。30年も前になるな」

「おお、時が過ぎるのは早いのう」

「ええ!? ね、ねえ! 2人は一体幾つなの?」

「秘密じゃ」

「秘密だのう」

「ええ……」



 本当の事を言って信じるかもあれだし、事実を話す訳にもいかないのでな。



「オレンジュースのピッチャーを持って参りました!」



 食堂の娘がオレンジュースを入れたピッチャーを2つ、両手に持って現れた。テーブルに置くと何処かへ行き、次はグラスを3つ持って現れた。



「え? 私頼んでないよ」

「良いでないかえ。アプリーレも飲め」

「いいの?」

「構わんよ。足りなくなったら頼めば良い」

「……モーガンちゃんとマーリン君。今まで他人に金銭感覚を心配された事ない?」

「はて、どうだったかのう」

「余計なお世話だよ」



 無駄に長生きして、無駄に稼いではいない。ちょっとやそっと無駄遣いをした位でコンテナに入れてある貯金は揺るがない。大量に減る買い物は何かと問われれば、国を1つとしか答えようがない。


 料理が運ばれてくるまでアプリーレから質問責めにされるも不思議と嫌な気分にならない。マーリンも同じなのか。答えられる事にはバンバン答えるが答えられないものには曖昧に誤魔化す。



「……」



 ああ……鬱陶しい。


 先程から向けられてくる1つの視線。


 明らかに敵意が含まれたそれに人知れず溜め息を吐いた。



 ……面倒になりそうだ。





読んでいただきありがとうございました!


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