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箱庭世界の壁魔法使い  作者: 白鯨
二章 箱庭の発展と神の敵対者
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6.領主邸in従魔ショー

 

 中庭は見た目より実用性重視なのか、一面芝生で何かの的の様な物がある事から、訓練場も兼ねているみたいだった。


 フィレオのおっさんも筋肉質だし、ここで鍛えてんのかね。

 剣も貴族の嗜みだろうしな。


 中庭に居るのは私とリリー、フィレオのおっさんとムートンさん、そしてリリー付きのメイドさんの計五人だ。


「じゃあリリー、早速私のペットを紹介しよう」

「はい!」


 ワクワクが隠しきれない、キラッキラの瞳を向けてくるリリー。

 これは普通に紹介しただけじゃ面白くないな。


「ちょっと待ってろ…………そう……よし…………大丈夫だな? お待たせ!」


 色々ペットと相談して仕込みをした。


「まずは愛らしい見た目とは裏腹に、複数の暴漢共を一匹で退治した事もある、ペット達のまとめ役。スライムのピンドットだぁ!」


 地球でよく見ていたプロレス番組の口上を真似してみた。


『ぼくがピンドットだぞー!』


 私の紹介と共にピンがポーチから飛び出して。


「わぁ、可愛いで」


 飛び出して、飛び出して。


「え……あの……」


 飛び出しまくる。


「ええっ?!」


 その数実に百匹。


 中庭の半分程を埋め尽くし、ようやくピンの増殖は止まった。

 私の肩やリリーの頭の上、フィレオのおっさんなんて両肩にもピンが乗っている。

 ムートンさんとメイドさんもそれぞれ飛んできたピンをキャッチしたまま抱えている。


 全員が目を点にして唖然としている。

 掴みは完璧だな。


「あの、一体どの子がピンドット様なんですか?」

「全部だ! 見てろ、ピン合体!」

『『『はーい!』』』


 私の合図で全てのピンが一ヵ所に集まっていく。

 その様子は某RPGでスライムが集まり王様スライムになるシーンそのままだ。


 寄り集まったピンは一匹の巨大なスライムとなった。


「これぞ、スライムキングのピンドットだ!」


 ちなみにこの世界のスライムにキングという種類はいない。

 大きなスライムはビッグスライムと呼ばれるだけだ。

 

 しかし、うちのピンには、水滴が水面に落ちた時に跳ねた水を模した王冠が載っている。

 これはキングでしょ。


「凄いです! おっきいです!」

「成る程、特殊個体か……」


 純粋に喜ぶリリーと、先ほどの話に納得しているフィレオのおっさん。

 ムートンさんとメイドさんはまだ口が開いたままだ。


「次はピンの兄弟にして心優しき芸術家。しかし怒らせるとコバルトゴーレムすら吹き飛ばす豪腕が唸る、アースゴーレムのエメトだぁ!」

『ーーん!』


 今度はエメトがポーチから飛び出した。


「この子も可愛いです!」


 今度は小さいアースゴーレム一匹だけの登場に、フィレオのおっさんは少しガッカリ、ムートンさんとメイドさんはホッとしている。

 だが安心するのは早いぜ。


「エメト! お前のアートを見せてやれ!」

『ーーん!』


 エメトはリリーに近付くと、色んな角度からリリーを観察する。

 そして、《土操作》で土を硬めながら像を造っていく。


「わぁー!」

「おお! これは!」

「素晴らしいですねぇ」

「リリー様……ご立派です……うぅ」


 完成したのは本物そっくりのリリー像。

 しかもラ◯ウの一辺の悔い無しのポーズ。


 これには全員感嘆の声をもらしていた。

 しかもエメトの硬めた土は鉄クラスの硬度で雨にも強いため、長く残して置けるのだ。


「どんどん行くぜ! お次はモヒートさんの話にも出てきた巨狼。その健脚は空をも駆ける、ストームウルフのコタローだぁ!」

『コタロー見参ござる!』


 巨狼と言いつつポーチから出てきたのは緑色の豆柴。枝豆柴だ。


「か、可愛い~!」

「次はこれがどうなるのだ?!」


 リリーは可愛いしか言わないが、フィレオのおっさんはもう流れを理解したのか、枝豆柴のコタローに期待の眼差しを向けている。


「ならば期待に応えよう! コタロー巨大化だ!」

『承知したでござる!』


 コタローが風を集めて巨大化する。

 最近は《風操作》のレベルも上がり、箱庭の風を使わなくてもデカくなれるようになった。


「なんっ……と!」

「ひゃあ!」

「おお! 凄い大きいぞ!」


 枝豆柴から三メートルを越える巨体になったコタローに、ムートンさんとメイドさんは身構え、フィレオのおっさんは大興奮。


「これがトンボお姉様が駆った巨狼……!」


 そしてリリーは、憧れのアイドルに会ったファンみたいに手を合わせて目を輝かせている。


「そして取りを飾るのは巷で噂のコイツ。ダンジョンマスターを一撃で葬った、ザ・お調子者! フレイムドラゴンのカルデラだぁ!」

『ババーン! と真打ち登場っすね!』


 ポーチから飛び出したカルデラはリリーの周りをぐるぐる飛び回り、空に向けて軽く炎を吐いた。


「きゃあ!」

「ひゃあぁ!」

「うおっ!」

「なんとー!」


 しかし、軽くといってもドラゴンのブレスだ。

 屋敷の高さを越える炎が吹き上がり、リリーとメイドさんは腰を抜かし、フィレオのおっさんとムートンさんは大きく仰け反った。 


「いきなり何すんだこの馬鹿ドラゴン! 火ぃ吐けなんて言ってねぇだろ!」

『……アホでござる』

『ぐえっ!』


 カルデラは私の壁魔法で作ったハリセンで地面に叩き落とされた後、コタローに頭を踏みつけられた。


「みんなうちの駄竜が驚かせてごめんな」

『だ、駄竜って……自分の事っすか?』

「他にいないだろうが。リリーを怖がらせやがって」


 カルデラは何故かショックを受けたような顔をしているが、胸に手を当てて考えて欲しい。

 お前の今までのドジっぷりを。


 これにはリリー達も幻滅だな。


「いえ……いえいえ! ほ、本物……本物のドラゴンさんです!」

「うむ! まだ子どものドラゴンブレスでも、火の上級魔法に匹敵する威力がありそうだな!」


 と思ったら親子揃って目をキラキラさせている。

 外見はともかく、似た者親子だな。

 まぁ、ビビってないなら何よりだ。


「とまぁ、今見せられるペットはこの四匹だ」

「今見せられるという事は、まだ従魔がいるのか?」

「ああ、ただ恥ずかしがりやでな。あまり外に出たがらないんだよ」


 ソルとナルはダンジョンコアだったからなのか引きこもり体質で、一度居場所を決めると移動したがらず、箱庭の外に出るのを極端に嫌う。

 昨日も一度連れ出そうとしてギャン泣きされた。

 箱庭の中も外っちゃ外なのにようわからん。


 せっかく足ができたんだから、是非色々見てもらいたいんだが、いきなり変われってのも酷な話だ。

 だからソルとナルの事は気長に待つことにしたのだ。


「そしたらリリー遊んでいいぞ」

「遊んでよいと言われましても、どうすれば……」

「ピン、リリーをのせてやれ」

『はーい! おいでー!』

「えっ……きゃ!」

「お、お嬢様?! ひゃあ!」


 ピンが触手を伸ばしてリリーの腰に巻き付かせると、持ち上げて自分の身体の上に乗せた。

 リリーを追いかけようとしたメイドさんも捕まり、一緒にピンのウォーターベッドにご招待だ。

 あれ結構楽しいんだよな。


「わぁ~! すごい跳ねます! おとーさまホラ!」

「お、お嬢様ー! あまり揺らさないてくださいー!」


 リリーもピンのウォーターベッドを気に入ったのか、トランポリンみたいに跳ねながら、こっちに手を振っている。

 メイドさんはリリーが跳ねて、揺れるピンの体表に必死にしがみついている。


「うむ! 楽しそうだなリリー! おいトンボ、俺様も乗りたいぞ!」

「はしゃぎ過ぎて腰やんなよ」

「馬鹿者、まだそんな歳ではないわ!」

「ははっ! ピン! 一名様追加だ!」


 私が言うと、ピンの触手にフィレオのおっさんも連れ去られていった。


「わははっ! 本当によく跳ねるぞ! こんなに高く跳べるぞ!」

「わたくしも負けませんっ!」

「ひゃわぁ~!」

 

 二人揃ってピンの上でポヨポヨ跳ねる姿は、遊園地とかではしゃぐ仲良し親子って感じだな。

 流石にメイドさんがかわいそうなので、ピンに言って降ろしてあげる。


 この後はエメトの芸術教室に、コタローに乗ってのお散歩が控えているけど、時間もちょうどいいし、持って来たお土産の準備をしよう。


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