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箱庭世界の壁魔法使い  作者: 白鯨
一章 箱庭の神様見習い
11/33

11.仲間の証

 

 目を開けるとピンとエメトが目の前にいた。


 どうやら眠ってしまったらしい。

 もふもふなコタローの抱き心地が良すぎたからな。


『ごしゅじんおきたー! せよんがよんでるよー!』『ーーん!』


 まだぼやけた頭にピンとエメトの声が響く。

 寝起きに念話は上手く頭に入ってこない。

 私は「ん~?」と寝ぼけ眼を擦りながら伸びをした。


「せよん? セヨンが何だって?」

『実はピン殿とエメト殿がセヨンと呼ぶドワーフ殿が、外で主殿をずっと待っているのです』

「えっ?」


 ようやく頭が覚醒してきた。

 あれ? セヨンが外に居るってヤバくないか?


「外から見た箱庭の様子はどうなってる?」


 それを確認するために三匹の分体分身を外に残して来たんだ。

 まずはそこを知らないと話にならない。


『しろいはこはみえてるー』『ーーん』『箱は見えますが、触れる事は不可能のようです。セヨン殿が触ろうとしましたがすり抜けていました』


 という事は、バレずに戻るのは不可能だな。

 セヨンなら約束を守って黙っていてくれるかも知れないけど、ちょっとマッドな所あるしなぁ。

 転移する為の魔道具とでも言って誤魔化すか。


『すみません。あまりにも主殿が気持ち良さそうに眠っていたので、起こさずにいたのですが……』

「大丈夫、おかげでぐっすり休めた。取り敢えず私は戻る。“転送”」


 私は覚悟を決めて箱庭の外に出た。


「おお?! トンボがいきなり現れた……」


 白い箱を興味深そうに観察していたセヨンの目の前に私は転送された。

 突然現れた私に驚き目を見開いたセヨン。


「すまんな。夕食ん支度がされとったんにトンボん姿がのうて、部屋から物音はすれども返事がなかったけん、勝手に入ってしもうた」

「い、いや……構わないけどいま何時」

「もう外は暗かぞ?」

「えっ? あっ本当だ!」


 セヨンに言われて窓の外を見て気が付いた。

 箱庭の中には夜がないんだった。

 私が夜にしようと思えばできなくはないけど、時間経過で昼夜を入れ替えるには、ずっと箱庭に居ないといけないし、時間が正確にわからないといけない。

 つまり凄く面倒なのだ。


「ふむふむ、つまりトンボは外ん様子がわからん所に居たと……」

「なっ?! ゆ、誘導尋問だ!」


 ニヤリと意地の悪い笑顔を向けてくるセヨン。

 いかん、このままだと墓穴を掘っていく気がする。


「こ、これは転移の魔道具だ! ちょっと別の場所に行ってたんだ!」

「へぇ~、魔道具職人んうちにそげん言い訳するんかぁ。トンボも大胆ばい」


 セヨンの口は笑っているけど、目が全く笑っていない。

 うわー! そうでした! セヨンは専門家でした!


「あっ、あのですねセヨンさん。これはあれだよ、あのほら……えっと」

「ぷっ! あっははははっ! 冗談ばい冗談! トンボん反応が面白かけん、からかっただけばい!」


 テンパりながら言い訳しようとする私にジト目を向けていたセヨンが、突然吹き出して笑いはじめた。

 へ? 冗談?


「言うたろ? ドワーフに二言はなかって。聞きたかとは山々だが、知られとねえ秘密ば暴こうとは思うとらんしゃ」

「セヨン……」

「それと、遅うなるなら一言言うてくれ、これでも心配したんやぞ?」

「セヨン、ありがとう」


 マッドとか思ってごめんな。

 セヨンは立派なドワーフだよ。


「まぁ、お礼なら従魔達にするとよかくしゃ。ずっとうちにこりゃトンボん物やけん心配なかって伝えてきたけん、おとなしゅう待っとったんや。そうじゃなきゃもっと詳しゅう調べとーばい。ジェスチャーやったけん理解するとに苦労したけど」

「そうか。みんなもありがとうな」

『えへへー』『ーーん』『主殿の為ならどうってことないでござる!』


 三匹が私の足元に集まって来たので撫でまくる。

 そんな私達を目を細めたセヨンがジッと見てきた。


「そういえば、そん新しか従魔はストームウルフか?」

「そっか、セヨンははじめてだったっけ? この子はコタローだ。種族はまぁ……ストームウルフみたいなもんだな」


 私が答えると、セヨンは三匹にぐっと顔を寄せて観察してからこちらを向いた。


「みたいなもん……ねぇ。そう言えばスライムって体内に核があるはずなんやばってん、ピンには見当たらんっちゃねぇ。ひょっとして、エメトん中にも核がなかじゃ?」

「あっ!」


 そうだよ、分体のピンとエメトには核が無いんだった。

 本体は箱庭の中だし、本体にしても箱庭の水と土がそれぞれの核みたいなものだ。

 特にピンは透明だから核が無いのが一目瞭然。

 気付いてしまえば違和感の塊だな。


「い、いつの間にか進化してたのかな?」

「トンボぉ、隠すなら上手う隠してくれん? うちだって研究者なんやけん、気にならん訳やなかばい」

「すまんです」


 これは素直に反省だ。

 それにこれはセヨンなりの注意喚起の意味も兼ねているんだろう。

 セヨンの優しさと義理堅さを思えば、転生はともかく箱庭世界の事は教えて、色々隠すのにアドバイスでももらった方がいいかもしれない。

 

「……セヨンには近いうちに私の秘密を話すよ。それまで待ってて欲しい」


 今はまだ私自身が箱庭について知らない事が多すぎるから、話したくても支離滅裂になりそうだし。

 もう少し落ち着いたら話そうと思う。


「はいよ、待っとーしゃ。そしてそれまでは隠すとに協力しよう。取り敢えずピンにはガラス玉ばやろう」

 

 そう言ってセヨンは柔らかい笑顔を見せる。

 予め用意していたのか、ポケットから青色のガラス玉を取り出すとピンに手渡した。

 一体いつから気が付いてたんだ。


『わーい! きれーなたまもらったー!』


 ピンはガラス玉を貰えて嬉しかったのか、私に掲げて見せてから体の中に取り込んだ。

 これで見た目は普通のスライムになった。


「よかったなピン。ちゃんとお礼を言うんだぞ」

『せよんありがとー!』


 私が言うと、ピンはセヨンに向かって触手をふりふりと振ってお礼を言った。


「やけんそげな所だってば……」


 何が不満なのかセヨンは頭を抱えてしまった。

 そんなセヨンの足下にエメトとコタローがまとわりついた。


「ん? どげんしたお前達」

『ーーん!』『ピン兄だけズルいでござる!』


 カモフラージュの為とは言え、ピンだけガラス玉を貰えたのが羨ましいのか。

 というか小さいコタローはピンの事を兄呼びしているのか。

 ピンは無性だけど、一人称が“ぼく”だから兄なのかな?

 年齢的にはコタローの方がお姉さんなんだが。


「ピンだけガラス玉貰えて羨ましいってさ」

「むっ? ガラス玉が欲しかとか?」


 セヨンに聞かれて頷く二匹。

 二匹を見て顎に手を置いて考え込むセヨン。


「エメトは体に取り込めるばってん、コタローはな……よし! ちょっと待ってろ!」


 顔を上げると部屋を飛び出したセヨン。

 待っていろと言われたけど、気になるから全員でついていく。

 一階に降りたセヨンはそのまま工房に入って行った。

 そして直ぐに金属を叩く様な音が聞こえてきた。

 何か作っているのかな?

 邪魔するのも良くないので、おとなしくリビングで待つことに。

 

 五分程経つと、工房からセヨンが出てきた。

 手にはアクセサリーの様な物を持っていた。


「ほらエメトとコタロー、こればやる」

『ーーん!』『拙者のかっこいいでござる!』


 エメトには黄色のガラス玉を、コタローには緑色のガラス玉が付いた革の首輪を渡すセヨン。

 工房ではあの首輪を作ってたのかな。

 パッと見た限り頑丈そうな作りだ。

 あれを五分程で作るとは、ドワーフが凄いのか、セヨンが凄いのか。きっと後者だな。


『ーーん!』『やったでござる!』


 ピンと同じように、二匹ともとても嬉しそうに私に貰った物を見せにきた。

 私はコタローの咥えてきた首輪を、その首に着けてあげた。

 エメトは自分の体に口のような穴を開けて、食べるようにガラス玉を自分の体に取り込んだ。


「エメトもコタローも似合ってるぞ! セヨンにお礼はしたか?」

『ーーん』『まだでござる!』


 エメトに関してはガラス玉は見えなくなっているけど、目の光と同じ色のガラス玉はエメトに合っているのは事実だ。


『ーーん!』『セヨン殿ありがとうでござる!』


 私に言われた二匹はセヨンの近くに戻ると、手と尻尾を振ってお礼を言った。


「偉いぞーエメト、コタロー」

「おおー、本当に頭良かね。うーん解剖したか、ばってん我慢や」


 私は二匹を撫でながら褒めてあげる。

 そんなほのぼのを余所に、セヨンが関心しながらも不穏な事を言った。

 やっぱりセヨンはマッドだ。


「ほらっ、トンボん分もあるぞ」

「えっ? 私の分?」


 セヨンが私に紐の様な物を投げて寄越した。

 それを両手でキャッチして確認する。

 黒色のガラス玉に穴が開けられ、そこに革紐を通したシンプルなネックレスだ。


「トンボん髪と瞳と同じ色や。テイマーは従魔とお揃いん物ば身に付くる事が多かけんな。ガラス玉で合わせわてみた」

「成る程ね、トンボとその従魔だから、トンボ玉が仲間の証なのか」

「トンボ玉?」

「私の国ではこういうガラス玉をトンボ玉って呼ぶんだよ」

「へぇ、はじめて聞く話や。凄か偶然ばい」


 まぁ、私の名前の由来はトンボ玉のように綺麗な心を持った子になるようにって付けられた訳じゃないけどな。

 父の好きな武将が使った槍の名前を貰い、その槍のように強くあれと付けられた名前なのだ。

 その武将は私も尊敬してるけど、名前の由来は女の子らしくないから、好きでもあり、嫌いでもある名前という訳だ。


「こんな綺麗な物、貰っていいの?」

「似合うて思うたけん作っただけばい。まぁ、トンボん秘密ば聞く為ん前金とでも思えばよか」

「そっか、なら遠慮なく貰っておく。ありがとうセヨン」

「どういたしまして。ちゃんとお礼が言えて偉かぞトンボ」

「ぐっ!」


 最後に意地悪く笑いながらセヨンが私の頭を撫でてきた。

 今までペット達に言った事が私に帰ってきた。

 前はセヨンを妹みたいだと思ったけど、セヨンにとっては私の方が妹ポジションのようだ。

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