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バカダンス!産まれし語りの眠り場所

作者: ライノル

別々の短編を幾つか投稿したいと思っています

よければ感想を頂ければ幸いです。

 喉が乾いた。かれこれ喉を潤す為に45分程歩き回っている。現在の季節は風が肌寒くなった秋の中頃であり熱中症の心配はしていなかったが、妥協の文字が脳裏にひらつく程度には弱っている。


 日頃からお世話になっている炭酸飲料『ミャツアファンター【真実味】』が発売されて一週間が経っているというのに僕は未だ購入をしていない。


 これはつまり真実を口にしていないという事実に当たる訳だから嘘つきという不愉快な名称を与えられても文句の一つも言えない状態に置かれている事になる。


 真実を口にしていない僕では男に二言はないという名言が使えない。あまりに致命的だ。故に深夜だというこの時間帯にようやっと成人したばかりの僕が三件ものコンビニを回る事態になっている。


 有名商品なのにどうしてこうも入手できないのか、真実は容易く口に出来るものではないという事か。そんな教訓を胸に刻みながら恐る恐る記念すべき三度目の正直となるコンビニエンストアの看板を見上げた。


 改めてじっくりと観賞した結果に得た印象、威圧的なものを放って来ている気がする。いや、何も僕という人間がコンビニエンストア恐怖症だとかいうエキセントリックな性質を持っている訳ではない。この店舗が異質なのだ。


 赤線五本で四本の青線を挟んだカラーイメージは比較的このコンビニ『レイ↑テン』のチェーン店舗が多いこの地方でもマイナーであり、たまに見掛けるとこんな所にも繁殖しているのかと珍しい植物に向けるべき感想を抱いてしまう。


 マイナーなだけなら問題はない。異質なのはここからだ。まず異質な点の1。レイ↓テンと発音すると全店員漏れなく般若顔での接客となる。とはいえサービス業、お客様への接客態度は変わることなく物腰柔らかにレジ対応しながら般若顔を一点に向ける。次回以降も般若顔をされるのでレイ↓テンと呼ばない事を契約書にサインする事がネット上で推奨されている。


 異質な点その2。やりたい放題している点である。店内でブレイクダンスしていても本部から怒られる事はない。その際にお客様に迷惑がかかったり衛生面に問題があったり等は絶対にないようだ。ちょっとイラッとする事はあるらしいが。


 その3、絶対に潰れない。客が月に二人か三人でも潰れない。経営というかセレブ様の道楽なのだとか。笑えよ世界がモットーだとか。


 虎穴に入らずんば虎児を得ず。中学生になる直前に近所で有名な海パンおじさんは真実の味は大人の味だと言っていた。新しい経験は大人の階段を登るのと同義、僕の目の前には僕のやるべき事が転がっている。


 自動のドアの前に立つと驚くべき事に自動でドアが横にスライドした。ウィーン…か。これが文明開化の音なのか。


 店内へと意識が移動する。コーヒーを入れてくれる機械にATM、店内には普通のコンビニに置かれている様なものが沢山存在した。店員さんは物腰柔らかに「いらっしゃいませ」と檻の中で挨拶してくれた。


 コンビニには檻が置かれている事がある。僕の脳に新しい知識が刻まれる。檻に貼られた『猛獣注意なんだゾ!』というポップな文字で書かれた張り紙が重々しい鋼の檻と激しい違和を生み出し、目を離すことを難しくさせている。


 考えるに現代アートの一部なのだろう。僕はムンクの叫びやモナリザを見てもピンと来ない芸術が理解出来ない人間なので動揺してしまったが、見る目のある人は風流だと感じる程度でスルーするのだろう。


 僕の目的は真実を口にすること。現代アートに膝を折ることなど出来るわけがない。ドリンクコーナーへと急ぎ足で向かう。隙を見せれば命はない、そんな予感があった。


 酒、酒、コーヒー、お茶、ジュース、とガラス越しに見える飲料を通りすぎ炭酸が支配する棚へたどり着いた。あった、『ミャツアファンター【真実味】』だ。


 手に取れば冷たいアルミの温度が指の熱を奪う。これをカウンターに持って行くだけで今回のミッションを終えることになる。どうしてか短時間の命がけの時間を惜しむような気持ちになった。大人になってしまう僕ら子供の悲しみという奴だろうか。


 ……しまった。店員さんは二人とも檻の中に居る。檻の鍵を見つけ店員さんを解放し会計を済ませるまでが買い物だ。微笑む店員さんの瞳がそう語っている気がする。


 覚悟を決めるまで数秒、その間に先に来ていた僕より年が若干上だろう男性が檻を解放して会計へ向かった。このまま男性の後ろに並んでも買い物を終わらせる事は出来る。そんな結論を他所に僕の瞳は鍵が隠されていそうな場所を探す。


 会計を終わらせた男性がこちらをチラリと視界に映し懐かしげな表情を浮かべた。まるで自分も通った道だとでも言いたげな表情であった。


 この店内を隈無く探す訳にはいかない。店側もそれは分かっている筈だ。何かヒントがある。っ!先程開いた檻には猛獣注意の張り紙ではなく餌は必要ありませんと書いてある。そして先程の男性が直前に居たのは日用品コーナー。これは食料コーナーにある可能性を考える必要はないという意味だったのでは!


 なら猛獣注意はなんだ。コンビニに猛獣がいる筈はない。店員さんは般若顔になるそうだが今回はたぶん恐らくもしかすると違うだろう。グルリと周囲を見渡す。


 あっ、普通に床に落ちていた


 ガチャン、およそコンビニエンストアで響いたとは思えない音で店員さんが解放され自然な流れで会計が始まる。財布から200円取りだし62円のお釣りを受け取り自動ドアから脱出に成功した。


 プシュッ、とプルタブを引いた瞬間に心地の良い音がする。缶を傾け少しだけ喉に流す。


 「あっさりしてる…」


 真実は以外と深い味わいがないものなのかもしれない。

迷った場合は大半の人が行わない感想を

書くという行為ですが、こんな小説を読んで

くれた特別な貴方なら書いてくれますよね?

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