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12/25

さあ出発だ!遅刻者は・・・・・・

 明朝にガウンテの工房に集合してから、旅に出る予定で、シーラッカは定刻通り着いた。少し遅れて念入りに化粧した、リダ・ミーヒムが飾りのついた白い鎧を光らせながら、しゃなりしゃなりと歩いてきた。ガウンテは彼女の姿を見るとガチガチになり「ご、ご機嫌麗しゅうございます」とだけ言った。


 イリヤ・パパヤは大分遅れてやってきた。二日酔いで顔が青い。時々えずく。ガウンテが彼女の姿を見て(旅は延期だな)と思ったところ、イリヤの後ろからフーガが駆け込んできた。


「イリヤぁーっ!これ二日酔いの気付け薬よ!」と白い小さな箱を振っている。

「あ、フーガ、ありがとぅ。げふっ」イリヤはフーガの手から箱を受け取ると、中の錠剤を一錠飲んだ。

「あなたは誰だい」ガウンテは、フーガとは初対面だった。

「フーガ・ソンテモリヤです。診療所で医療助手をしています」

「医療助手は長いのか」

「ええ、学校を出てから二年ぐらいやっています」



ガウンテは、フーガと話したのち、シーラッカたちの方を向いて、宣言した。

「せっかく集まってくれて申し訳ないが、イリヤがこの状態なので、今回の旅は延期する」

「えー。冗談じゃありませんわ。わたしだってスケジュールが詰まっておりますの。もし延期するのなら今回の話はなかったことにしてもらいます」ミーヒムさんが不満を述べて、一方的にキャンセルした。

「えっ、あっ、その。いやっ、ご、ご、ごめ、申し訳ない」ガウンテはどもりながら土下座したが。ミーヒムはふくれっ面をしたまま出て行ってしまった。



「ああ残念だ」ガウンテは土下座したまま、尺取虫のように這って工房の奥へ行ってしまった。

「気付け薬を渡したけど、私も旅は無理だと思うわ」フーガが自分の見解を述べる。

「はじめましてソンテモリヤさん。僕はシーラッカ・フリードです」

「お噂はイリヤから聞いています。凄腕の狩人なんですってね」

「いや、それ程でもないです」

「げふ、シーラッカ肩を貸して、家に戻る」イリヤが青息吐息ですがりついた。

「ちょっと昨日は飲みすぎたみたいですね。駄目ですよ気を付けなきゃ」フーガが忠告する。

「昨日は二人で酒盛りしたのかい」シーラッカが尋ねる。

「はい」


「だったら、大事な旅立ちの日なんだから、ソンテモリヤさんが注意をしなきゃ」

「すみません。私、強すぎて適量がわからないんです」

「医療助手だったらイリヤの様子見ていたらわかるだろ」初対面にもかかわらず強い口調でシーラッカは問い詰めた。

「そうでしたね。ごめんなさい」フーガは深々とこうべを垂れた。


 ガウンテは自室のベッドで失意のあまり横になっている。

シーラッカはイリヤを連れて集合住宅へ向かった。後ろからすまなそうにフーガがついていった。

鍵を探してイリヤの部屋の鍵を開け、イリヤを寝かしつけた。

「私も途中で帰ったから、あの後飲んでいるなんて知りませんでした」

「イリヤには僕からしっかりといっておく」

「あの大柄な美女さんは抜けるのですか」

「人数は減ってしまうけど、僕が頑張ってなんとかしなきゃ」

「そうですか、ごめんなさい」


 シーラッカはフーガと共に、寝床で休んでいるイリヤを診続けていた。

フーガの話によると深酒が過ぎただけで、明日ぐらいには回復しているとのことだった。

シーラッカはイリヤの部屋を出て、自宅へ戻ることにした。


「ほんとうにごめんなさい。私が気を付けていれば」

「済んだことは仕方がないさ、またあとで挽回すればいい」

「なにかあったら私に伝えてください。お手伝いします」


シーラッカはフーガと別れて自宅の方角へ向かった。

「父さん、母さん、旅が延期になったよ」







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