ステータスボード
色んな物語を読んだことがあるだろう?
色んな物語を聞いたことがあるだろう?
これはそんなひとつの物語。
むかーしむかーしあるところに小さな村がありましたそこには約100人の人間とそれらの飼う畜生共や耕す畑、そして、それらが住む家、そして、……。
はい、冗談です。この前置き正直どうでもいいです。はい。この話とは一切関係がないとは言いませんが関係有りません。それでは、私が語る、普通の少年によるちょっと変わったお話を始めましょう。
少し短いけどね!
僕はアスタ。どこにでもいる村人Aさ。年は16才。つまり今年で大人となった。
ということで町に出て冒険者となるため、選定の儀、つまりはスキルを判定しにいくこととなった。
「アスタ、楽しみだね。でも、もし生産職だったりしたらどうするの?」
「それは困るだろうなぁ。ま、僕は何が出ても冒険者になるけどね。」
「それでこそアスタ、なのかな。」
「ほら、とっとといくぞアスカ。」
「うん!」
こいつは双子の妹であるアスカ。こいつも町に出るといったので同じくスキル判定にいくことにした。
「は?え?今、何と?」
「もう一度言いますぞ、お主の職業は???、つまり不明、魔法適正なし、さらにはスキルはステータスボード操作のみじゃ。ステータスボードって何じゃ?聞いたことがないのじゃ。」
そのとき、全僕は泣いた。オワタorz。生産職ならまだ武器を作ったりして地力でいけたかもしれないのによりによって、意味もわからん能力。なんだこれ。使えねえじゃん。職業に至っては不明だしよぉぉぉぉぉぉ!
「ま、まあ、少年、気にすることはないぞ。誰でもできる職があるからそれで稼げば生活はできる……と思う。」
「確約してくれよぉぉぉぉぉっ!」
「すまんがわしが決めた訳じゃぁないんでのぉ。ほれ、次の子。」
「は、はい。」
あ、アスカの番だぁ~。アハハハハ。
「こ、これは!」
お、何が起こったのかなぁ~。
「職業:勇者に、魔法適正は全部!さらにスキルが『聖剣召喚』、『武芸百般』、『神眼』、『限界突破』、『天駆』、『精霊王の加護』、『女神の加護』、じゃと!?つ、つまりお主は、いや、あなた様はっ……!」
あれから、一週間がたった。
“今代の魔王を討ち滅ぼすために選ばれた者”
それが僕の妹らしい。
それに比べて僕は今……。
「さ、宿代が払えないようなら出ていってもらうよ!」
「そ、そんなぁ……。」
僕は、宿代を払えずに宿から追い出されていた。
妹はあのまま王城へ連れていかれてあれから見ていない。せめて、兄として幸せであることを願うのみだ。
しかし、それ以前に僕は自分の目の前にある困難に立ち向かわないといけない。
「ケヒヒヒっ!おい坊主ぅっ!ここを通りたきゃ……」
チンピラAがあらわれた!
「って、無能のガキか……。ほらとっとと行けや。お前からじゃなんもとれねぇからなぁ。」
僕は強盗すら同情されるレベル(こないだカツアゲにあったが)だった。
そう、今の僕は。
……金欠だった。
割とガチでお金がない。今の手持ちは1z。パン一つすらまともに買えない。ギルドにいっても
「ん?無能じゃねぇか。帰った帰った。お前のやれる職業なんざぁねぇよ。」
といわれ、お金は稼げない。
「ヒャハハハハハ、無能のゴミがいるぜェェェェ!」
「兄貴ぃ、こいつどうしますぅ?」
「最近むしゃくしゃしててなぁ……。こいつで遊ぶか。フハハハハ。」
路地に入ったとたんにチンピラB~Dに襲われた。
一週間もたてば町の人全員がストレスの捌け口にして来た。
町にいるのも恐ろしくなった僕は町の外へ逃げ出し、野宿をすることになった。
武器の使えない僕は獲物を自分で襲って獲ることができない。
魔法の使えない僕はすぐに火が起こせない。
無力な僕は魔物に襲われても抵抗が出来ない。
痛い、痛い、痛い。
僕を噛まないでくれ。
命からがら逃げ出して。僕のお腹がなったとき。
僕は思った。
なんで僕がこんな目に遭うんだろう。
なんで強者は弱者から奪っていく。
なんで僕が………
なんで……
何故…
俺がこんな目に会わないと行けないんだ?
気づいたら俺は言っていた。
「ステータスオープン。」
何故だろう。知らなかったはずなのに。
何故だろう。使ったことがなかったはずなのに。
何故だろう。特に何もないはずなのに。
知らず知らず俺は。
そのステータスボードで襲いかかってきたゴブリンの頭を叩き潰した。
「ぐぴぃっ!?」
「ごぎゃっ!?」
次々とゴブリンを殺っていく。
こんな雑魚共にただただやられていただけなんて腹が立つ。
殲滅してやる。
町のゴミ共と一緒に。
ステータスボードは無敵だった。
どうやらこれは壊すことが出来ないらしい。
盾にもできるし、武器にもできる。
ほら、逃げないと死んでしまいますよ?
ほらほら、ほらほら、ほらほらぁっ!
町に侵入し、
俺に襲いかかってきたチンピラを痛みができるだけ長く続く用に血をたくさん流させて殺した。
俺を指差して笑った幼児を八つ裂きにして殺した。
その親は嘆き悲しんでるところを後ろから蹴飛ばし生きたまま解体した。
俺を足蹴にして笑った冒険者をじっくりと焼いて殺した。
俺を虐めて遊んだバカなカップルは片方の四肢をもいで片方をできるだけ長く痛め付けそして、生きた状態で犬の餌にした。片方の目の前で。
泣き叫ぶゴミ共。赦しを乞う屑共。
ああ、愉しい。ああ、愉快だ。
この腐った世界を破壊し尽くしてやりたい。
蹂躙し、殺し尽くした俺のステータスボードへ表記されていたのは。
名前:アスタ
職業:憎悪の選定者Lv.84
種族:堕ちし人族
STR:9370
INT:9730
VIT:28720
AGI:19620
DEX:14620
SP:13435
スキル
無し(隠しスキル:大器晩成)
加護
無し
称号
復讐者・同族殺し・殺人鬼・町崩し・堕ちし者
なんと、俺のステータスだった。
見事な数値じゃぁないか。
ゴミ屑共を葬るだけでこの経験値。
最高じゃぁないか。
そして、なんだこのSPとやらは。
これまさか、スキルとか俺にくれちゃうやつか?
お、ポイントが移動できた。ほうほう。そうやって。お、スキルゲット。あ、ステータスもあげられるんだぁ。へー。へぇー。
名前:アスタ
職業:憎悪の選定者Lv.84
種族:堕ちし人族
STR:19370
INT:19730
VIT:38720
AGI:29620
DEX:24620
SP:1435
スキル
・魔剣召喚
・魔術合成
・魔闘法
・魔術・火
・魔術・闇
・魔術・土
・魔術・氷
・召喚術
・狂化
(隠しスキル:大器晩成)
加護
無し
称号
復讐者・同族殺し・殺人鬼・町崩し・堕ちし者
カスタム終了。
さぁ。この腐った世界をぶち壊しに行こうか。
職業:魔王が解放されました。
このときまだ俺は知らなかった。
この世界は本当に腐ってることを。
魔王システムと呼ばれるものを。
人は毎日死んでいる。
物理的にもそうだが、心理的にもである。
また、今日の私は明日には死んでいるだろう。
昨日の私もまた今日には既に死んでいる。
皆様の心が死なないことを私はお祈りいたします。