第55話 『ちょっとした余興』
「来たわね、神崎直!」
翌日、私とシュウは二人揃って鷹宮さんのお家に出向いた。
呼び鈴を鳴らすと、まるで待ち構えていたかのように、火花姫が姿を見せる。
そんな今日の彼女の装いは、オープンショルダーのオールインワン。
華やかなオレンジ色の生地が、露出している肩の白さをより一層引き立たせていた。
上下一体構造のその服は、言い換えるならば半袖半ズボンのつなぎとも言える。
もっとも、作業服のようなごわついた生地ではなく、薄手のサラサラとした生地で、涼しげだ。
と、まあ、色々と描写をしてみたが、要するにとっても可愛いということだけ、伝わればいい。
「こんにちは、鷹宮さん」
対して、今日の私の服装は同じくオフショルダーのフレアワンピース。
首元はホルターネックで、色は白よりのグレー。飾り気はないが、シンプルさが気に入っていた。
シュウはとても高校生には見えないだのと、褒めているのかよくわからない感想をくれたが、鷹宮さんは私の格好を見て口を尖らせて。
「なんであんたも肩出してんのよ。真似しないでよね!」
とかなんとか文句を言われた。それを聞き流し、素直に喜ぶことにする。
「鷹宮さんとお揃いで、嬉しいわ」
「ふん。いい迷惑よ」
不機嫌そうに鼻を鳴らして憎まれ口を叩きつつも、口元は緩んでいるのでなんともしまらない。
ともあれ、姫様のご機嫌が麗しいようで、なによりである。そのまま家にあがろうとすると。
「おい、俺の存在を忘れんなよ」
なんて野暮なツッコミを入れたのは私の彼氏。
シュウは不服そうな顔して、両手に紙袋をひっさげている。
「ああ、荷物を運んでくれてありがとね。もう帰っていいわよ」
「そうね。神崎直をおびき寄せた時点で、あんたは用済みだもんね」
「お前ら……いい加減にしろよ」
息ぴったりの我々にいらない子呼ばわりされたシュウは怒り心頭の様子。
もちろん冗談なので、この辺で勘弁してやろうかしらと思っていると。
「待ってたぜ、シュウ兄ちゃん!」
「俺を歓迎してくれるのはお前だけか……鷹宮の弟」
小さくて可愛らしい何かが私の前を通り過ぎ、シュウの足に飛びついた。
喜色満面の笑みで彼を迎え入れたのは、鷹宮さんの弟の彼方くん。
少年らしい短パンから伸びる、日焼けして小麦色となった太ももが眩しい。
とても健康的な少年は、とても美味しそうで、思わずむしゃぶりつきたくなったが、自重。
そんなことよりも今はするべきことがある。理想のショタについた悪い虫をなんとかせねば。
「シュウ、今すぐに彼方くんから離れなさい」
「はあ? なんでだよ」
「この子が妊娠したらどう責任を取るつもり?」
「するわけないだろ!? 何言ってんだ!!」
いっけない。つい妄想が加速して跳躍したあげくに飛躍してしまった。
ひとまず冷静に、落ち着いて、とりあえず一番有効な手段を用いることとする。
「鷹宮さんは彼方くんのお姉ちゃんでしょ? 彼になんとか言って」
「別にいいんじゃない? 彼方は有村秋に任せて、放っておきましょ」
なん……だと? どうなってやがる。鷹宮さんは自分の弟がどうなってもいいのか?
というか、もしそうならどうして私に任せてくれないのだ。
私に任せてくれれば、それはもう好き放題にめちゃくちゃにしてくれると言うのに。
そんな理に適わないこの世の不条理さを嘆きつつ、シュウに向かって怨嗟の言葉を吐く。
「たとえ天が許しても、私はあなたを許さないわ」
「お前は自分の彼氏に何を言ってんだ」
やれやれと首を振りつつ、彼方くんを伴いながら、シュウは鷹宮さん宅へあがった。
家の中は人気がなく、平日ということもあり、またもご両親は不在らしい。
洗面所を借りてシュウと二人で揃って手を洗い、我々はリビングへ通された。
すると、設置されているテレビから聞き覚えのある電子音が聞こえる。
画面を見ると、そこには彼方くんのお気に入りのゲームがスタンバイされていた。
「シュウ兄ちゃん、今日はこのゲームで勝負しよーぜ!」
「おう。望むところだ」
嬉々とした様子でシュウにコントローラーを手渡す彼方くん。
その挑戦を不敵な笑みで引き受ける彼氏。どうやら、リベンジマッチをしたいらしい。
だが、この展開は完全に想定内。シュウと同様に、私としても望むところだった。
瀬川さんと吉田くんが出場するカードゲームの本戦の中継までは、まだ時間がある。
メインイベントの前に、ちょっとした余興をしておく腹づもりだった。
「鷹宮さん、ちょっと賭けをしない?」
「賭け?」
「そう、ゲームでシュウが勝てば私の勝ち。彼方くんが勝てば鷹宮さんの勝ち」
「別に構わないわよ。それで、何を賭けるの?」
「実は今日、私は色々なコスチュームを持って来てて……」
「乗ったぁっ!!」
賭けを持ちかけ、その内容について説明するよりも、早く。
鷹宮さんはそれを承諾。どうやら彼女も彼女でこれを想定していたらしい。
「ふっふーん!神崎直が考えそうなことは全部お見通しよ!!」
「それじゃあ、負けた方は罰としてコスプレするってことでいい?」
「いいわ! ふっふっふっ……今日こそは、吠え面をかかせてあげるから覚悟なさい!!」
なにやら不敵な笑みを浮かべる鷹宮玲奈。
しかしながらこの条件は彼女に不利な筈。
なにせポータブル版とはいえ、前回対戦した際にシュウは彼方くんに勝利している。
よって、この勝負は私に有利であり、何かしらのハンデを要求されると思っていたのだが、どうも様子がおかしい。
これまでの経験上、こうした彼女の態度は、危険だ。きっと何かを企んでいる。
とはいえ、私から持ちかけた賭けということもあり、今更後には引くことは出来ない。
画して、一抹の不安を感じつつも、戦いの火蓋は切って落とされた。
「ほらほら、シュウ兄ちゃん! のんびりしてると負けちゃうよ?」
「ぐっ……なんて速さだ」
開始から間もなく、異変が現れた。
彼方くんのキャラの動きが、依然と比べてかなり洗練されている。
何よりも注目すべきはそのスピード。目にもとまらぬ連打でシュウのキャラの体力をガリガリ削り、軽やかなステップで翻弄する。明らかに彼方くんのゲームの腕前は、上達していた。
以前対戦してから数ヶ月が経過しているとは言え、尋常ではない成長スピードだ。
一体この少年に何があったのか。それについて、隣で観戦している鷹宮さんが、解説してくれた。
「あれから彼方は雪辱を果たす為に毎日私と特訓してたのよ」
「特訓?」
「そう。その甲斐あって、こうしてそこそこ強くなれたってわけ」
「そこそこって……もう鷹宮さんも敵わないんじゃないの?」
「う、うるさいわね! 私のことはどーでもいいでしょ!? 勝てばいいのよ、勝てば!!」
どうやら図星だったらしく、慌てて誤魔化す鷹宮さん。
彼方くんはすでに、鷹宮さんよりも強くなったらしい。
恐らく、この姉弟の実力は拮抗しており、だからこそ、短期間でこれほど上達出来たのだろう。
あまりに実力差が離れていればモチベーションがあがらない。勝ったり負けたりが大切なのだ。
その特訓の成果が、今日の対戦模様。完全に誤算だった。これは負けたかも知れない。
と、思っていたら。
「やむを得んな……この技だけは使いたくなかったが」
瀕死のシュウが、仕掛けた。
彼方くんの一瞬の隙をついて、攻撃。
その衝撃でステージの端に寄せられて、硬直する相手。そこをまた突く。その繰り返し。
「な、なんだよそれっ!?」
「ハメ技だ」
驚愕する彼方くんに、シュウは冷酷な事実を突きつける。
読んで字の如く、彼はこのショタを、嵌めたのだろう。
彼方くんの猛攻を凌ぎつつ、それが発動できる地点まで、誘導していたのだ。
とはいえ、これは些かやりすぎではなかろうか。もはやゲームとして成立していない。
それを私が指摘するまでもなく、烈火の如く怒り狂った鷹宮さんが噛みついた。
「ちょっと有村秋! これはいくらなんでも卑怯よ!!」
「勝てばいいんだよ、勝てば。お前だって、さっきナオにそう言ってただろう?」
「うぐっ……!」
自らの発言を逆手に取られて、鷹宮さんは黙らされてしまった。
そのシュウの勝ちに拘る執念を見て、私の脳裏に王者の姿が浮かぶ。
思えば吉田くんも、こうしてハメ技を駆使して、瀬川さんに勝利した。
見ようによっては、卑怯にも見えるが、これが真剣勝負と言われれば、それまでだ。
彼方くんもそれは理解しているらしく、文句を言うことなく、ガチャガチャとコントローラーを動かして、なんとか脱出しようと試みていた。
しかしながらそれは無駄な足掻きでしかなく、そのまま体力が尽き、ゲームオーバー。
ゲームの勝敗は、シュウに軍配があがった。
「うぅ……ぐすんっ。くそっ……悔しい……!」
負けてしまった彼方くんは、涙を流して悔しがっている。
早急にその涙を舐め取ってあげなければと、義憤という名の煩悩に駆られた私が腰を浮かす前に。
「男の癖に泣くな、鷹宮の弟」
「ッ……!」
厳しい言葉を言われて、嗚咽を必死に堪える少年の頭を、シュウはおもむろに撫でて。
「ほら、ハメ技からの脱出方法を教えてやるから、もう一回やるぞ」
「へっ? あ、あれ、抜け出せるの……?」
「当たり前だろ。もっと強くなりたいんだろ?」
「う、うん!」
「なら教えてやる。いいか? ここをこうしてだな……」
やれやれ、本当にこの男は根っからのお兄ちゃん属性の持ち主らしい。妬けちゃうぜ。
もっとも、どちらに妬いているのかは自分でもよくわからない。きっと両方にだろう。
シュウが用いたハメ技には脱出方法があるらしく、それを丁寧に伝授していた。
つまり、彼は卑怯なズルやイカサマをしたわけではなく、あれはテクニックだったということだ。
彼方くんはこれまでそれを相手にされたことがなかった。だから嵌まってしまった。
しかし、今日シュウに負けたことによって、それに対する対抗手段を学び、そしてまた強くなる。
だからこそ、私の彼氏は心を鬼にして勝ちをもぎ取ったのだろう。やはり、シュウはお人好しだ。
とはいえ、その脱出方法はかなり高度なテクニックが必要らしく、伝授には時間がかかりそうだ。
その間に、私は私の目的を叶えることとする。
「さて、鷹宮さん」
「ひっ! な、なによ……?」
「お着替え、しよっか」
ニッコリと微笑んで、私は鷹宮さんにコスプレの入った袋を手渡したのだった。
「鷹宮さんってば、遅いわね」
「そろそろ吉田たちの試合が始まっちまうぞ」
「私、ちょっと様子を見てくる」
コスプレを手渡してからそろそろ小一時間が経つが、火花姫は一向にその姿を見せない。
本戦のネット中継はもうまもなく。彼方くんもシュウとゲームしつつ、ワクワクした様子。
私としては期待半分、もう半分は一体どうなることやらとハラハラしていた。
一応、彼の携帯を借りて事前に激励の電話は入れておいた。その際、瀬川さんは落ち着いていて、わりと平気そうだった。少なくとも、緊張はしていないと感じられた。きっと、吉田くんの存在が大きいのだろう。
それでも、いざ勝負となれば話は別だ。本戦において出場経験がない柔花姫の実力がどこまで通用するのか、不明である。
なので、そうした不安もあって、可愛くコスプレをした火花姫を抱きながら観戦したかった。
そんな不埒な野望を抱きつつ、私は部屋の場所を彼方くんに教えて貰い、鷹宮さんの部屋へと向かった。
「ふわわ……! こ、こんな格好、絶対見せらんないよ!?」
部屋の前まで来ると、ほんの僅か扉が開いていて、なにやら悩ましげな声が漏れていた。
失礼ながら少々覗かせて貰うと、部屋に置かれた姿見の前で、クネクネしている火花姫がいた。
彼女の為に選んだコスチュームは、看護師。つまり、ナースのコスプレである。
なぜ数ある衣装からそれを選んだかと言えば、あまり体型に左右されない衣装だからだ。
一応ゴスロリ服も持ってきてはいるものの、あれは着用するのが大変なので不採用。
ともあれ、私の見込み通り、スレンダーな鷹宮さんにナース服はよく似合っていた。
キッチリ着こなしつつも、どこか危うげな、火花姫のナースコス。正直、注射をされるのは御免だ。
きっと上手く血管内に針を通すことが出来ずに、何度もやり直す嵌めになるだろう。
とはいえ、腕が穴だらけになったとしても男性患者がそれを甘んじて受け入れるだけの破壊力はある。
そう言い切れるくらい可愛らしいというのに、火花姫はどうも恥ずかしがっているらしい。
そして誰も見ていないと思って、こんなおかしな奇行に走り始めた。
「ぜ、絶対、神崎直に馬鹿にされる。お注射失敗しそうとか言われちゃうよ……それで、注射はこうやってするのよ、なんて偉そうに手本を見せられて……だ、駄目なんだから! 絶対チクチクなんてさせないんだからぁっ!!」
何故か腕を押さえて悶え始めたナースコスの火花姫。この子はいつもこうなのだろうか?
「そ、それになんだかスカートが短いし……こ、こんな格好であの女の前に出たら、すぐに噛まれちゃうわ。ええ、きっとそうよ。パクッて、わ、わわ私のふとももを体育祭の時みたくガジガジされちゃうんだわ! どうしようどうしよう! お、お風呂入って来たほうがいいかな……で、でも、それだとなんか期待しているみたいだし……というか、この服すっごく良い匂いなする……神崎直の匂いがする……あの女が袖を通した服を着るなんて、もうこれは完全に一線を越えちゃってるわ。うん、間違いない。神崎直の匂い……クンクン。ふわあぁ……良い匂いがすりゅよぉ……とろけそう……」
「話は聞かせて貰ったわ!」
「ふぎゃああああっ!?!!」
このままでは火花姫の名誉に関わると判断した私は強行突入を決断。
バンッ!と扉を勢いよく開いて、押し入ると、鏡越しに目が合った鷹宮さんが絶叫。
慌てて振り返ろうとする彼女に肉薄して、羽交い締め……ならぬ、ハグをする。
「ふぁああああっ!? な、なにっ!? 何なのよ、あんたは!?」
「私にお注射して欲しいんでしょ?」
「き、聞いてたの!? そ、そんな……あれを聞かれたら、私はもう死ぬしか……」
「大丈夫。私が優しく教えてあげるから、楽にして」
「やめっ……あんっ! み、耳を囓らないでっ! もう殺してよぉ!!」
久しぶりの魔王モードで、弱体化した聖女をいたぶる。
すると、鷹宮さんは悶絶して、膝がガクガク。身体から力が抜けた。
私はそんな彼女をベッドに誘導し、寝かせて、その上に覆い被さる。
「くっくっくっ……聖女様もこうなっては形無しだな」
「せ、聖女ってなによ!? 離して!」
「おや? 口では余に刃向かっていても、いつもの眼光の鋭さがないぞ。とろんとしておるわ」
「う、うるさいっ! 変なしゃべり方すんな!」
すっかり魔王になりきって舌なめずりすると、聖女様は喚き散らすものの、顔が赤い。
こうして馬乗りになられても、それを退けようとすらしない。
これは所謂、OKサインと見て、間違いなかろう。それでは、いっただっきまーす!
「ご希望通り、太ももを噛みちぎってくれるわ!」
「ひっ! や、優しくして……!」
「もちろん。痛くなんかしないわ……あむっ!」
「はうっ!?」
優しくしてと言われたので、甘噛み程度に押さえる。歯形はつけないように、慎重に。
ナース服の裾からは、鷹宮さんの匂いがして、私のそれと混じり合っているのがわかる。
彼女の柔らかな太ももをガジガジしていると、早乙女茜と自分が同じことをしているのだと気づく。
決して認めたくはないが、あの女の影響力は絶大なようで、随分と私は菊花姫に毒されてしまった。
それを自覚すると、急に自分がとんでもなくふしだらな女に思えてきて、顔があっつい。
ちがうもん。私はあの女みたいに下品ではないと思いつつも、鷹宮さんの太ももは美味しくて。
「やっ! う、内側は駄目っ!!」
「フハハッ! 良いではないか!」
知れず、愉悦が口から漏れていた。
誰だこれは。私はこんな笑い方をするような品性の欠片もない女ではない。でも美味しいよ。
きっと、鷹宮さんが中途半端に反抗するからいけないんだ。そんな抵抗の仕方では、余計に盛り上がってしまうだけだ。本当にけしからん娘である。何が聖女様だっての。まったくもう……ガジガジ。
そんな風に責任転嫁までして甘噛みをしていると、ふと気づく。
「ねぇ、鷹宮さん」
「ふぇっ? な、なによ……途中でやめないでよ!」
「ごめんね、焦らしてるわけじゃないの。ちょっとあの壁に貼られた写真が気になって……」
「ッ!?」
鷹宮さんのお部屋の壁に、なにやら見覚えのある写真が張られている。
それは、一学期の終わりに撮ったもので、彼女が私の膝に乗った一枚だった。
恐らく、最大限まで引き延ばしたと思われるその写真は、もはやポスターサイズ。
そしてよく見ると、それ以外の写真も私と同じく机の上に大事に置かれていて。
そちらが通常サイズなのを鑑みるに、壁に貼られたそれには特別な意味があるように感じられる。
そのことについて尋ねようとすると、鷹宮さんは何故か泣きそうな顔をして、顔を覆ってしまう。
「どうしたの、鷹宮さん」
「べ、別に、なんでもないんだから! あんたへの恨みを忘れないようにと思って引き延ばしただけ!」
「ふーん……本当かな?」
「ほ、本当だもん!」
「嘘つき。本当は、嬉しかったんでしょ?」
「う、嬉しくなんかないもん! 神崎直なんか大嫌い!!」
「また嘘ついた。鷹宮さんは悪い子ね。そんな子にはお仕置きよ」
「きゃあっ! ちょっと! 脇をくすぐらないでよっ!!」
「ほらほら、白状しないと脱がせちゃうぞー?」
「きゃあああっ!? ど、どうしてスカートの中に……ひぃっ! やめっ……やめてよっ!?」
素直じゃない鷹宮さんをここぞとばかりにからかう。
正直、あんなに引き延ばされてしまっては、私としても少々照れていた。
それを誤魔化すべく、こうして有耶無耶にしようとしていたのだが。
「おい、お前ら……何やってんだ」
開けっ放しにしていた扉から、シュウの声が聞こえて、私は馬乗りのまま顔をそちらに向ける。
「あらシュウ。見ての通り取り込み中だから用があるなら後にして」
「二人とも、パンツ見えそうだぞ」
「見るな、バカ。エッチ。スケベ。変態」
「今のナオにだけは絶対に言われたくない台詞ばっかりだな」
「うるさい。邪魔すんな」
「まったく……それじゃあ、お前の大嫌いな顧問と同類だぞ?」
「うるさい。一緒にすんな」
私に弄ばれて息も絶え絶えな鷹宮さんの代わりにシュウを罵倒すると、彼はやれやれと首を振り。
「ナオ、お前はショタコンだろ?」
「ええ、そうだけど、それがなにか?」
「リビングにゴスロリ服を来たショタが居るとしたら、どうする?」
「詳しく話を聞こうじゃないの」
「ゲームに負けた罰ゲームとして、持ってきたゴスロリ服を鷹宮の弟に着させたんだよ」
「でかしたっ! すぐ行く!!」
最近、私の扱い方を心得たシュウに誘導されて、鷹宮さんの上から飛び退き、リビングへダッシュ。
そんな私の背後で、彼は心底申し訳なさそうに、鷹宮さんに謝罪していた。
「悪かったな、鷹宮」
「ぐすん……もうお嫁にいけない……どんだけ節操がないのよ、あの女」
「もしかしたら両刀使いなのかも知れん。まあ、彼氏としては文句はないけどな。いいもん見れたぜ」
「ふん……彼女が彼女なら、彼氏も彼氏ね。もうやだ……」
「そうは言っても、あいつのそんなところが気に入ってるんだろ?」
「……知ったようなこと言わないで」
「俺も同じだからわかるよ。それじゃあ、落ち着いたらリビングに来いよ」
そのような失礼ながらも心温まるやり取りのことなど露知らず、私はシュウにゴスロリ服を着させられた彼方くんの神々しい姿を見て、興奮して雄叫びをあげていたのだった。




