対話
おっひさー。
「待たんかーい!いや、待って下さい」
扉の中で爺さんがトイレの蓋の上で正座している。いや、爺さんの涙目って誰得なんだよ…。
「いや、正直すまんかったと思っている。勝手にこの世界に呼んだりして」
ほう、この爺反省する気はあるのか。
「で、どう落とし前つけてくれるんやワレ」
「え、ちょなんでヤクザ!?儂これでも神様よ?」
「ああん?」
「ひいいいい、分かった、ちゃんと落とし前つけるから」
よし、言質は取った。
『【スキル:脅迫】を手に入れた!』
へ?脅迫?人聞きの悪い…。こちとらお願いしてるだけなのに。
「まあ落とし前云々の話は後にして少しお話ししようじゃないか」
にこりと口元を緩めながら言う。
「はっ、はい。お話しさせていただきます!」
『【スキル:脅迫】のレベルが1上がった!』
スキルの評価がひどい。ただ神様と世間話でもしようと思っているだけなのに…。
「まず最初に、これが一番聞きたいことなんだけど。元の世界に帰れるのか?」
力強く握りしめた右腕の握りこぶしを左手で撫でるようにしてちらつかせながら問う。
「はい、今すぐというわけでは御座いませんが戻ることは可能じゃ…たぶん」
右手を大きく振りかぶってーーー
「まてまてまて、まってくださいお願いします!殴らないで!何でもしますから!」
「ほう、なんでもすると」
「何でもするとはいって…グァッ!!」
『【スキル;脅迫】のレベルが1上がった!【スキル;強打】を手に入れた!』
「ふう、で結局どっちなんだ?」
「責任もって元の世界に戻す方法を模索させていただきます…」
「オーケー。よろしい」
『【スキル;交渉術】を手にいれた!』
「あ、そうだ。もう一つ聞きたいんだけどなんで俺をこの世界に呼んだんだ?」
「よくぞ聞いてくれた!」
待ってましたと言わんばかりに爺がトイレの蓋の上から飛び降りる。
「お主にトイレをこの世界に布教してもらおうと思ったのじゃよ」
「へ?いや、どういう事だよ。まったく理解できないんだが」
「少し話が長くなるが良いか?」
「俺を納得させることが出来るなら良いぞ」
ゴホン、爺がわざとらしく咳払いをする。
「200X年、世界は核の炎に包まれ」
「いや、真面目にやれよ」
「あれはある日の事じゃった」
(まじめにやってくれよ…)
「久しぶりに会った神友と世間話をしていたんじゃが、最近の時間のつぶし方でほかの世界の住人をまた別の世界に移植して観察するという事が流行っているというのを聞いてのお。儂もやってみようと思ったんじゃよ」
「それがどうやったらトイレを布教しようなんてものになるんだよ」
「まあ、待て。焦る出ない。儂が初めにしたのは人の人選じゃ。その為に様々な世界を巡っている途中にトイレに出会ったのじゃ。儂は最初とても驚いた。こんな素晴らしい物をこの世界の生命が作れるのか!とな。」
爺さんが手を広げて語りだす。
「儂はこれを神器たる物と判断しトイレという概念を神格化したのじゃ。話を戻そう、人を移植する際に儂はトイレを儂の世界に持ってきてもらおうと思ったのじゃよ」
「一つ聞いていいか?爺さんが自分の手で持ち帰るのではだめなのかよ?」
「無理じゃな、神同士のルールでお互いの世界には基本不干渉が定められておるのじゃ。じゃが一つルールの穴を発見した。現地生産すれば問題という事にな」
「じゃあ、現地生産するって事か?俺関係ないよな」
「いや、待て無かった。」
「は?」
「結局ルール破ってお主を拉致っちゃった☆」
ははは、はははhahahahahaha
「こんのクソ爺ー!!」
許してください何でもしませんから!!