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Mr.ステルス  作者: 山口翔矢
序章
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2

11月11日午前8時、今俺は「watch man]の事務所にいる。

勝さんに誘われた当日に会社概要だの休暇の話だの色々面談をした。週休完全二日制・シフト制・昇給有・ボーナスはまちまちだが取り敢えず有・研修制度も充実・社会保険にも加入――等、とても立ち上げたばかりの会社とは思えない程制度が充実していた。有給は今後どうするか検討すると言ってたし、勝さんの親切さにも有り難みを感じたので俺はここに就職する事を決めた。

話し合いが終わった後、両親にこの事を報告した。最初こそ「そんな名前も聞いた事無い会社に入って大丈夫なの」とか「お前にそんな重い仕事務まるのか」とか色々説得されたが、自分がしっかり納得した上で決めたと言うと2人とも理解してくれたようでそれ以上深くは聞いてこなかった。何だかんだ俺の事を深く考えてくれているのだ。

そして今に至る。新卒採用の扱いなので今の段階では正社員に出来ず、4月まではアルバイト扱いのようだ。で、今から俺を他の職員に紹介したいと言われてここに来たのだが、いるのは勝さんのみである。


「遅いなああいつら。新しく入る仲間の事気にならないのかねえ」何だか締まらない感じの声で勝さんが話した。「そうですね、後20分で就業時間なのに皆遅いですね」と僕が返すと、「普段は皆30分前には絶対に集まるんだけどね、早い奴何かだと1時間前にはもう来てるんだよ。何かあったかな」と、勝さんは冷静に答えたが顔は少し不安そうだ。

勝さんの話によると、「皆それぞれ個性的よ。明るくわいわいしてるのもいれば静かなのが好きで1人で居る事が多い奴とか、暇さえあればスマホばっかりいじってる奴、普段は悪口しか言わないけど的確なアドバイスしてくれる奴とかね。でも、これだけは言えるな。皆、仕事に対してはやる時はしっかりやるよ。サボる奴は1人もいない。仕事面においては全信頼を俺達に預けてもらって構わない」人達らしい。本当にそうなんだろうか、若干不安になってきた。


5分後、「いやあ、これは大幅な遅刻だなあ。昨日はちと飲み過ぎたかな」と1人の男性の声が聞こえてきた。声質的には中年オヤジの声だが果たして――。

「すみませんオーナー、遅れやしたーってその人誰」男性は勝さんに挨拶した後俺を見てそう言った。それは俺も同じ思い何ですけどね。179センチ・筋骨隆々・角刈りで如何にもスポーツマン気質な感じで勝さんよりも豪快なイメージを感じさせるその人は「ああ、そう言えば今日から新人さん来るんでしたっけ。まあ、俺らも新人っすけど」と続けた。少しチャラさがあるのかな。

「遅いよ虎ちゃん。今日は新人ちゃん紹介するから早く来てって言ったじゃない。てか、虎ちゃん以外来てないのも可笑しいんだけどさ・・・」勝さんが返す。「じゃあさ、たぶんあいつらもそろそろ来るだろうけど、取り敢えず自己紹介しよお互いに」と急に話を俺と虎さんなる人に振った。強引過ぎる気もするがまあいいだろう。

「あ、オーナーから話は聞いてますよ。影の薄さを武器にするこの会社の最新ステルス兵器の影山輝信君っすよね。いやあ凄いっすよ、どんな事しても気付かれないどころかその場に居てもまるで居なかったように気配消せるなんて」え、ステルス兵器、一体何のことだ。それに、俺は影の薄さは超絶コンプレックスで人生それで色々苦労して来たんですけど――そんな俺の思いをよそに話を続ける虎さん。「初めまして、俺は剛田猛虎(ごうだもうこ)って言います。昔はまあ、名前に恥じない感じで格闘技ジムのインストラクターしてました。専門は総合。宜しくお願いします」と彼はスポーツ系の部活の生徒のような感じで答えた。成程、だからあれだけご立派な体格な訳だ。それと、さっきから猛虎さんは俺をキラキラした目で見つめているのは何故だろう。気配が薄いのを確かめる為だろうかそれともどうやったらそんな風になるのか気になるのだろうか。

「虎ちゃんは俺と同じ出身の大学でね、後輩ちゃんなのよ。前職聞いて分かると思うけど無類の格闘技好きでさ、ジムのインストラクターなったのもそれが影響してるのよ」と勝さんが説明を入れた。「そうだったんですか、先輩後輩関係だったとは。仲良かったんですね」俺が勝さんに言うと、「それは少し違うぜ影山君。俺とオーナーは大学時代はライバル同士でな、常に勉強でも格闘技でも勝負ばかりしてたもんだ」そう猛虎さんは言った。「違うだろ、格闘技はまあ五分五分だったでいいにしたって勉強は俺が遥かに上だっただろうが。お前小論文書けないだのテストどこ出るんだのでいっつも俺の所来てたじゃねえか」とすかさず勝さんが反論する。「何言ってるんすか、あれは緊急を要していてですね・・・・」ここから両者譲らぬバトルが始まった。これは俺には止められそうないので放っておく事にした。


「すみません、遅れてしまいましたって、君は誰かな」「ああ、そう言えば今日新人さん来るんじゃなかった。オーナー言ってたでしょ」今度は女性達の声が聞こえてきた。細身の方と少しお太りになられた方だが、どちらも美人さんだ。

「何何、見惚れてるの~ステルス君」と猛虎さんがからかってきた。この人のキャラがいまいち俺にはまだ分からない。それにステルス君て何だ、あだ名なのか。「虎ちゃん超失礼だわー。自分うちらの事ガン見しまくってたの忘れてない」「そうね、確かにあれはちょっと幻滅したわ。顔はそこまで悪くないのに」2方向からの退くわー発言に彼は、「いいじゃないか、美人なんだし」と全く悪びれる様子も無く言った。ここってストーカー対策する所だよね、この人がその狙われる立場の人間になるんじゃないのか――。

「楽しそうに会話してる所申し訳ないんだけどさ、早く着替えてきてくれない」唐突に横から勝さんが釘を刺した。就業5分前、一体何をやってるんだこの人達は――俺は呆れてはいたものの結構雰囲気は良いし、悪くはないと感じていた。


午前9時、ミーティングがスタートした。この時間から労働時間が始まる。

「ええと、まずは来年の4月から新卒採用で、それまではアルバイトとしてここで働いてもらう影山君です。自己紹介どうぞ」勝さんが俺に促す。「皆さん初めまして。影山輝信と申します。どうぞ宜しくお願いします」と手短に済ました。「ええ、もう終りなの」と勝さんが言ってきたので、「だって僕の影の薄さとか皆知ってるみたいですし、そこはもういいかなあと」と答えた。勝さんは何だか喋り過ぎたなという顔をしながら残りの職員に自己紹介を振る。

「剛田猛虎です。ステルス君にはさっきも説明したから以下省略。宜しく」とこちらも短め。別にそれはいい。それはいいのだが、「あの、1つ聞いてもいいですか猛虎さん」俺にはどうしても聞きたい事がある。これだけは聞かねばなるまい。「どうしたステルス君」「何で、ステルス何ですか。僕戦闘機じゃないんですけど」そう、何故俺がステルス何てあだ名なのかだ。ステルス戦闘機――それはレーダー等のセンサーから探知されにくくした戦闘機の事であり、莫大な費用と維持費・更にはその時代の最新鋭の技術を使って生み出される国家防衛の要となる存在の1つだ。俺は、見た目は普通だし服だって庶民的、異常な影の薄さ以外何1つ尖った特徴が無い一般男性何ですが――。

「うーん、何となくかな。ステルス戦闘機みたいに誰にも気付かれずに色々出来そうだからかな。それに、何かカッコよくない」と彼は答えた。うん、この人あまり頭賢くない。

「じゃあ次はうちね。藤峰子(ふじみねこ)って言いまあす。29歳で元保育士、趣味はスマホいじりでーす。絶賛彼氏募集中何で宜しくー」と先程の太っている彼女が言った。猛虎さん以上にチャラい、仲良くなるには時間がかかりそうな人だ。

「私は響霧子(ひびききりこ)って言います。昔はある探偵事務所で働いてたの。宜しくね」探偵らしく、必要な情報のみを的確に伝えている――感じが俺にはした。あくまで俺の探偵像ではだが。

「ええ、最後に俺の自己紹介ね。勝龍馬です。元警官でした、宜しく」


一通り自己紹介が終り、皆の意外な経歴を知る事が出来た。勝さんに至っては元警察である、まあ見えなくは無いが。

そして俺は気付いてしまった。ここにいる全員、俺以外転職族だと。

別に転職が悪い訳では無い、寧ろ今の時代は転職が当たり前だ。上司が気に入らなければすぐに辞めるし、給料分以上働いてるのにその分のお金が出なければよりよい給料の会社へと転職出来るのだ。昔のように終身雇用でそこの企業の戦士になるのは古い考え方。だから、何も珍しくは無い。

とは言え、彼等はもう30過ぎているか又はもうそれに近い人達だ。もう転職しようにもそこまで受け入れてくれる企業も少なくなってくる年だ。そこまでのリスクを負ってまで会社を立ち上げたのだ、相当な執念を持っているのだろう。


「さて、一通り自己紹介が終わった所で今日は何をするかと言うとですね。特にありません」と勝さんは説明した。言っている意味が理解出来ない。

「要はね、会社として仕事を始めるのは早くても来年の1月とかその辺りになっていきます。マニュアルだの何だのうちも作らなくちゃならないしお客様も集めないといけないしね、暫くは下準備と言う事で。影山君には悪いけど、アルバイトとして働くのは来年の1月からになるから宜しく」との事だった。つまり、この会社はまだ土台もきっちりと固まっていない欠陥住宅のような会社だと言う事だ。いきなり波乱の予感だ。

「影山君以外は全員マニュアルとか作るからミーティングの後から色々頑張るよ」勝さんはそう言うと皆に気合いだ気合いだと声を上げた。俺以外は面倒くさそうな顔こそしてはいたが愚痴をこぼしたりしている人は誰一人いなかった。やっぱり根は真面目な人たちなのだろう。


午前10時、1時間ほどのミーティングはこれで終了した。 俺は取り敢えず来年の1月までは仕事が無いという事になった。「色々御免ね、準備が行き届いてなくてさ。君にはうちの即戦力になってもらわないといけないからね、その為には俺達がちゃんと指導していかないと駄目だからさ。ちょっとの間待っててもらえないかな」と、勝さんは申し訳なさそうに言った。「全然大丈夫ですよ。僕もそれまでの間、体鍛えたり色々調べ物とかして力蓄えてますから。1月から宜しくお願いします」そう返事させてもらった。出来立てほやほやの会社なのだ、無理も無い。俺は大人しく自分を磨いていく事にしよう――。


家に帰宅したのはまだ午前11時だ。もうお昼ご飯も近い。ご飯を食べて昼寝して、その後今後のスケジュールを考えよう――。俺は昼にいつも食べているひきわり納豆を食べる為に台所に向かった。

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