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『赤信号』  作者: 目栗芽栗(めぐりめぐる)
7/8

7*


**


「兄さん、今日はもう寝ないと」

「・・うん、わかってる」


この頃お見舞いにくると、兄はいつも窓の外を眺めている。そして、扉を開ける音に対して敏感なった。俺が病室に入ると、振り向いて、それから間を空けて苦しそうに笑う。


いつも悪いな、そう言ってまた窓の外を眺める。


話をしていてもどこか上の空で、笑っていても瞳の奥が暗いまま。


理由は分かっている。

もう2週間が経つんだ。


毎日俺よりも早く来て、俺よりも長くいたあの彼が突然来なくなった。


初めは忙しいんだろ、と気にしていない風に装っていた兄も、日を増すごとに表情が曇っていった。心に咲く一輪の花が徐々に萎み、枯れて痩せ細っていく様子が手に取るように分かる。


もう遅い。

0時を過ぎる前には眠りについていた兄。

そんな人が夜更かしをするようになったのはいつからだろう。


不安で眠れない。

焦りで目が覚める。


彼は今どこで何をしているのだろう。

2人が過去でどのように付き合ってきたのか俺には分からない。


けれども、同じくらいにお互いを慕っていたことが記憶のない状態でも、よくわかった。兄のことをいつも1番に思ってくれているのだと、彼の目から感じ取れた。

だから安心して兄を任せていたのだ。


きっと彼も兄と同じように苦しんでいる。


それでも俺には何もすることが出来

ない。兄の目はいつでも彼の姿を探していて、俺の付け入る隙など見つからないのだから。


花瓶にもたれる(しお)れた花が

幸せを蝕んでいくようで

少し怖くなった。




《君にあいたい》



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