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それから半年が過ぎ、
季節は冬と春の間。
今日は久しぶりの快晴で、下を見て歩く癖のある俺には少し眩しすぎる。
どこへ行くでもなく、ただ気の向くままに歩を進める。
すると一本の細道に出た。
家と家の隙間に出来たその道は薄暗く、そのずっと奥に光が差し込んでいる。
幅は猫一匹が通るのには十分すぎる程であったが、人間の俺が通るには少し狭い。
好奇心か期待か。
あらゆる感情に背中を押されて、俺は足を踏み出した。
思った通り身体を大きく斜めにしてギリギリ通れるほどの幅だった。背中に提げた斜め掛けの鞄が擦れてなかなか先へ行けない。
段々と両側の壁が迫ってくるような気分に駆られた。左右から挟まれて抜けられなくなってしまうような、そんな圧迫感。
気持ちだけが急いでいく。
もう少し。
あと一歩。
最後の力を振り絞り手を強く前方へ押し出して、真っ白な世界へ勢いよく飛び出した。
「・・はるきっ・・はるき!」
重い手足と独特な消毒液のにおい。
骨を軋ませるような刺激が全身に襲いかかる。
息をするのも久しぶりであるかのように、乾いた喉がヒューヒューと音を立てる。
「良かった・・やっと目が覚めた!・・本当にっ、本当に良かった・・はるき」
左手にかかる強い圧迫感にまぶたを持ち上げると、目に涙を浮かべた男が俺の手を思いっきり握りしめていた。徐々に明るくなる意識の中で記憶に一致していく彼の姿。
何度も夢見た、何度も焦がれた。
『おにーさん』
彼はあの時の、彼だった。
《この道を抜ければ》