穴掘りと儲け話
暗い洞窟、ツルハシ片手に俺達は早速仕事場についた、そこにはいかつい男たちが汗を流しながら一心不乱に銀山を掘り進めている、そんな熱気あふれる状態の中、俺達は黙々と坑道を作る、もう少しきらびやかな仕事と期待したがその実態は日給アルバイトである
「いや~、体動かすのはいいね~」
そんな中、俺ら一行で唯一の力仕事専門が俺達より数倍の仕事をする、俺もまあまあ仕事はしているがさみ姉には及ばない、そしてホムランはもはや倒れる寸前である、まあ魔法使いには少々酷な仕事である
「私一応魔法使いなんですが~」
「う~ん、じゃあちょっと俺達の馬車から水と塩取ってきてくれるかな、休憩がてらゆっくりでいいから」
「了解です~」
そうしてホムランに水分配給を頼むと、早速地獄の作業に戻った、掘って、汲んで、進んで、それを繰り返す、良くゲームで古びたツルハシが壊れたりしたものだが、実際はツルハシ壊れる前に使用者が壊れそうだ
薄暗い鉱山の中、数時間ツルハシを振るい続けている、、、水を飲んで岩塩を舐めて、ツルハシ振るって土を押し車に入れて、つい数日前の強盗劇を思い浮かべると少々悲しくなる、、、
「いや~、そろそろ休憩にするか~」
汗だくのさみ姉がようやく休憩の提案を出した、現在の作業進行度はノルマの7割ほど、まあ休憩にはちょうどいいぐらいの進行度であった、俺はタオルで顔を拭うとツルハシを鞄に掛けてホムランに声をかける、ホムランは俺達の後ろで汗だくになって座り込んでいた
「ホムラン~、そろそろ休憩だ~」
「はえ~、わかりました~」
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外に出ると仕事の終わった者や、休憩中のものが地べたに座り込んで休んでいた、俺達も休憩中の群れに混ざって座り込んだ、晴天の空の下、黄い土の上に座り込むと、ホムランはとたんに寝転んだ
「疲れました~」
満身創痍のホムランに対し、さみ姉は未だ元気な様子であり、汗こそ凄いが息すら上がらずに周囲の露店の飯に目を配っている
「うわ~、あの焼いた肉なんか最高にウマそうだ」
しかしながら確かに空腹ではある、腹は先程からググりと鳴り止まない、俺は銀貨を片手に露店で食事を買うことにした、さみ姉の眺めていた肉に、疲れたホムランでも食える塩アイス、問題は俺の食事であった、まるで神社の祭りのように並ぶ露店の中からどの店で買おうか迷う
(やはり、、、肉、、、かな)
そう思った瞬間、俺の目に写ったのは焼いたおにぎりと干し魚であった、やはり日本人、久しく食べていなかった米に目が移り、俺は焼きおにぎりと乾物を買った、使い捨ての簡単な紙皿に乗った料理を両手に持ち、先程まで休んでいた場所に戻るとさみ姉が少々よだれを垂らして待っていた
「待ってました~」
「そ、そうみたいだね」
俺は各自に食べの物を渡すと、俺もおにぎりを頬張った、黄金色で大きなおにぎりは少し時間がたってもまだ暖かい、味はというと非常にしょっぱい、まるで塩の塊のような味だが、仕事後のせいか以上に美味しく感じられた
「美味しいな」
思わずそう口に出しながらおにぎりを食べ終わり、その後乾物に手を出した、やはりしょっぱい、乾物を口に含みながらボーッとしていると、ホムランがアイスを食べながら俺の方まで張ってきた
「それ何ですか?」
「魚を干したものだよ、結構しょっぱい」
「私のアイスも驚くほどしょっぱいんですよね」
そう喋っていると大きな鶏肉を豪快に手に持ちながらさみ姉が俺達の方へよってきて少し得意げな笑顔でしょっぱい理由について説明を始めた
「こういった炭鉱街は料理が極端にしょっぱいんだ、やはり塩分欲するっていうのと、長年いると頭馬鹿になって味音痴になるんだ」
まあ、何となく分かる、確かにさっきもしょっぱくてもそれが美味しいと感じだ、仕事中は岩塩を舐めててもあまりしょっぱいと感じなかった、そう考えるとそうなのかという感じだ
そうして俺達は残りの仕事を終わらせるため暗い銀座に潜った、そして次出た時には日が傾いていた。
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「ぷは~、うめえええ、酒最高!!」
さみ姉が酒を飲み、俺が飯を食べ、そしてホムランが机に付す酒場、酒場内は冒険者組合のような活気にあふれている、しかし鎧を装備した者はいなく、代わりに薄いシャツに分厚い胸襟の男が騒いでいた。
「もう無理です、、、もう無理」
特にホムランの疲労の仕方がやばい、もう少し楽なら明日もやろうと思ったが流石ににどめはないかんじである、と言うか俺もかなり限界だ
「さ~って、いよいよ本業の話だ、満身創痍のお二方、アテンション」
さみ姉が少々悪そうな顔で疲れきった俺達の顔を上げさせた、さみ姉は少々偉そうに頬杖を付いて目をかっちりとあけている
「本業って魔物退治とか?」
「私はそれのほうがいいです~」
「なわけねえだろ!!、本業といえば!!」
さみ姉はそこまで言うと声を細めて俺達の方へ顔を寄せてぼそっと言葉の続きを言った
「泥棒だよ、ど・ろ・ぼ・う」
いや、本業じゃねえから、と言う台詞が顎元まででかけたがツッコミ入れたらきりがないとあえて何も言わずに話を続けさせた。
「銀の違法買い取りの商人、そいつから銀を盗む!!」
ああ、道中に上がっていた話かと納得し俺は少し集中してさみ姉の話を聞く、隣のホムランは顎をテーブルの上に置き、さみ姉のことを見上げている
「いいか、銀の強奪には少しやり方がある、一つは盗む、しかし銀なんか持ち運べる量売ったってたかが知れてる、だからもう一つ仕事をするのさ」
「どんな仕事だ?」
俺がそう尋ねるとさみ姉はニヤニヤしながら少し細い声で説明を続行した
「銀の値上がりで困ってる商人たちに、現状の解決依頼を請け負うのさ、しかもかなり高値で」
「ああ、なるほど、確かにそれなら報酬分と銀でいい値段になるかも」
「今回の目安は金貨200枚だ、いい感じだろ~」
さみ姉がそう言うと全員目つきが変わる、金貨200枚、それは放火魔でも博打中毒者でも、この俺でさえも息と唾を飲む金額であった
「じゃあ詳しい説明はこの、【らくらく銀泥棒しおり】をご参照!!」
そう言って俺達にさみ姉は紙を渡してきた、紙の内容は簡潔ながらに詳しく書いてあった
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【らくらく銀泥棒しおり】
内容・今回の強盗は商人の銀保有を困難にすることと銀の強奪の二つが作戦内容!!
①銀強奪
Ⅰ銀の格納庫を強襲、強襲により銀の移動を開始した時の銀移動第一号馬車を強奪、この馬車をその後街外れの人喰い森まで移動すれば作戦完了
Ⅱ銀強襲の話しが公になる前に全ての※銀を現在相場より若干安く全て売り払う、これで銀強奪は完全終了
※銀は馬車強奪確認後にさみが早馬で森内の魔物を退治、その魔物の体内に隠して街まで持っていく
②銀保有の困難化
Ⅰ商人の館、倉庫、別荘、全てを燃やす
Ⅱ残りの銀貨到着地を【派手】に放火、確実に消防連が駆けつけるまで燃やす
Ⅲ商人の逃亡を防ぐため正門を見張る
強襲と燃やす系統は全てホムラン、銀強盗はリュウタ、強襲と正門見張り、そして銀売交渉は私が行う
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前回よりもかなり細かい内容であった、しかし俺の仕事は極めて簡単、兵士に成りすまして馬車に乗り込むだけである、疑問点がないかと考える
「さみ姉、森到着後の俺の動きは?」
「無い、と言うか盗み出せた時点お前はMVP、先に宿に戻って寝てていい」
「強襲って何するんですか~」
「お前は見た目だけ派手に効果の薄い放火をするだけだ、他の放火は全力で構わない」
「了解!!!」
やはりツルハシよりも変身して強奪するほうが胸が踊る、しかも前回よりも金がいいときたものだ、さらに放火対象が多いためか先程まで疲れきっていたホムランの目には光が戻った
「やはり俺達はこういうほうが性に合ってるな」
「「はは、その通り」」
そうしてにやりと三人とも頬を上げるとジョッキのビールを全て飲み干した、もはや思考には強盗のことで頭がいっぱいなのが見て取れる、そうして俺達の強盗劇がまた幕を開けた。