散財と銀の匂い
「やっばい、、、昨日飲み過ぎた、、、」
屋敷の一室、昨日の大宴会で樽で酒を呑んだりしたせいで二日酔いで頭痛がやばい、もう昨日の記憶が殆ど無い、、、よく屋敷まで戻ってこれたというものだ、ベットの枕元にある窓を見るとだいぶ日は登っていた、おそらくだがもう昼間なのであろう、、、
《ガチャ》
「リュウタ~、ラビット殿が屋敷のドアの前でずっと土下座してるです、何あったですか?」
「え」
頭を痛そうにするホムランから物凄く不安な台詞を聞いた、それは強盗時の緊張感よりも緊張し、背筋は凍るどころかそのまま凍って崩れるほどひやりとした、冷や汗が止まらない、、、いや、まさかサミ姉がそんな頭のおかしいことするはずがない、そう思い俺は土下座のサミ姉の元まで行った
「・・・どうしたの?」
「・・・」
顔が真っ青なサミ姉がそこには居た、その顔の青さは二日酔いではなく、後ろめたさであろう、、もうなんとなく予想はついていたが、しかし、そうではないと願いながら俺はもう一度訊いた
「どうしたの?」
「借金、、、金貨にして78枚、、、」
「てめえぶっ殺すぞ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
凍っていた背筋は暑くなり、頭は痛くなる一方だ、こいつ次から金をもたせねえ!!!!
「ふぁ、すいませんでしたああああああああああああああああ」
「てめぇ次やったら綿畑で働いてきやがれこの抜作が!!!!!!!!!!!!」
「ひぃ!!、今回だけはお助けを!!!」
「はぁ、、、まあ赤字ではないし、利子付く前に返すよ、、、、いまからホムランに頼んでくる」
一旦落ち着くと借金返済に頭を回す、借金額は金貨78枚、どうせ博打であろう、次は焼き土下座だ、、、幸いにも俺とホムランは合計金額で80枚持っている、前回のように借金は残らないのが救いだ
ホムランの元まで行き状況を説明する、ホムランは腹を抱えて笑うと麻袋を快く渡してくれた
「いや~、はははは、一夜で借金金貨78枚って、ある意味天才です、無理ですよ普通は、ははは」
「悪いな、、、」
結論としては、俺達は多額の金を稼いで一夜で金貨2枚まで消えましたとさ、、、しばらくはゴブリン狩りで済むと思っていたというのに全く酷いものだ、かくして俺達の一夜の夢は見事に冷め、残ったのは冬越しの貯金のみとなった、少し良いお屋敷の持ったパーティーであった、、、
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結局いつも通り仕事をこなさなければならなくなったわけで、渋々組合所に行った、組合所は税金騒動以前の乱痴気騒ぎである、組合で話される話題の中心はやはり昨日の大宴会であり、サミ姉はもはやここでは神格させれていた、、、まあ貧乏神だが
依頼の掲示板を見ると以前では無かった表記がされている、【破損禁止対象】というものだ、なんでも以前、茨を取りやすくするために茨付近の魔物を退治する依頼で、茨もろとも焼き払った馬鹿がいたようで、それを防止するために燃やしたり壊したりしちゃいけない対象ができたようだ、、、うん、俺達のせいである
「これなんか良いんじゃないですか~、鉱物採集依頼」
ホムランが掲示板を指さして依頼を進めてきた、依頼の内容は鉱物採集、報酬は銀貨12枚、報酬も難易度もちょうどいい、少々移動時間が長いのが残念だがまあピクニック感覚で行けば移動もそう苦でもないであろう
「まあ、この依頼はいいんだが、ホムランは宝石好きなのか?」
「いえ、鉱物は燃えないのが良いんですよ」
ああ、そういう事か、、、ともあれ採集対象は火に強く、金もよく、難しくもない、この依頼を受けない理由はないであろう。
「サミ姐さん~、行きますよ~」
「おう!!」
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街を出て20分ほど、馬車の荷台で俺とホムランがツルハシとともに揺られている、御者台には借金で財産を溶かした愚か者がどこか悲しげな背中で馬車を進める、俺は道中暇なため本を読んでいた、この本は恐らく前の世界の物である、文字が完全に日本語だ、本の内容は王道ファンタジー、魔法を使う横暴な女性主人公と凄腕の男剣士の冒険譚だ、これほど見ていて心躍る物語はないであろう。続編が手持ちにないのが悲しい
「リュウタはいいですね~、本持っていて、私なんかなにもないので暇ですよ」
体育座りをしてかなり暇そうにしていたホムランが遂に口を開いた、短いスカートでその格好だと下着が見えてしまいそうだが、今後良い仲間関係を築くためにもあえては見ない。
「そもそもホムランは本とか読むのか?」
「よく燃えるので好きです」
「本は萌えるものだが燃やすものではない」
そんなくだらない話をしていると馬車が止まった、近くには食事処が一件、恐らく旅人狙いの食事処であろう。
「食事にしようぜ~」
「ああ、そうだね、俺も少し腹が減っていたところだ」
「いいですね、、、ローストチキンとか食べたいです」
「「恐らく無いぞ」」
店の中はそう大きくはないが、街までの道中旅人が多いためか人自体は結構いた、俺達が席につくと若く活発的な青年が注文を聞きに来る、青年の格好はエプロンにバンダナ、バイトの高校生のような初々しさがある。
「ご注文は何にいたしますか?」
「あ~、俺は葡萄酒と黒パンで」
「私も彼と同じで」
「私は肉とビールと白パンだ!!!」
「承りました、少々お待ちください」
借金作った本人が最も高いものを食べると言う異様な光景に流石のホムランも苦笑いを隠せない、無論俺は確実に顔が引きつる、しかしそんなことはお構いなしにサミ姉は鼻歌を歌いながら料理が来るのを待つ
料理を待っている最中、隣の席にいる冒険者風の二人組にも男が何やら気になる話をしている、ホムランはそうでもないがサミ姉の表情はググッと変わり、シッカリと聞き耳をたてている、俺も少し意識して会話を聞くことにした
「お前知ってるか?、鉱山付近に大量の銀を買い占めている商人がいるらしいぞ、そいつのせいで銀の値段がうなぎ登りだ」
「は、銀金銅は国がある程度買い占めてるはずだろ、どうなってるんだ」
「違法に買い占めてるってことだよ」
「そりゃ商人は戦争でもするつもりなのかね」
そんな感じで男たちが会話しているとサミ姉の表情が暗くなり、口元を上げてボソボソとなにか言い始めた
「銀、値上がり、違法、つまり盗まれても公共機関を頼れない、、ふふふふ」
なんとなく察しがついたが一応俺は目の前の金の亡者にどうしたのかと尋ねることにした
「どうしたの?」
「銀だよ銀、聞いてたろ?、違法商人の銀を盗んで売れば大金持ちだ!!、しかも警察機関は絶対に動かない、なぜなら責任は商人にある、私たちは顔さえ割れなければ大丈夫」
前から思っていたが、いつもサミ姉の頭のなかには盗むことでいっぱいだ、ともあれ現状況、金はあればあっただけ欲しいものだ
「ま、取り敢えず依頼を終わらせに行きますか」
「そうだな、はは」
その後食事を摂ると早速依頼を終わらせるために馬車を進めた、馬車の荷台上は暇でしょうがない、しかし変身ごっこやトランプ、雑談をしていたらあっという間に目的の場所についた、町の入口には大きく高書いてある
【鉱山の街、ルニカムイへようこそ!!】
街の中にはいかつい男たちがわんさかいる、俺達の今回取る鉱物は【メラノイド】と呼ばれる鉱物、色は緑色らしく、主に魔道士の杖先などに使われるもので魔力伝導率が高いらしい、目的の鉱山はここからわずか1kmの距離である
「すごい街ですね~、熱気がすごいです、火を灯すまでもないですね」
「いやいや、灯すなよ」
製鉄も行っているせいか街の熱気は凄いものだ、空は黒く、空気は淀む、汚いといえばそうなのであろうが鉄の町という言葉が似合う、まさに炭鉱街であった、サミ姉は長い髪を後ろで括るとさっそく仕事現場へと向かう、その姿は働き者のお姉さんだ
「1日で金貨70枚以上使った方とは思えませんね~」
少し楽しそうにホムランがそう言うと俺もバンダナを頭に巻いて早速サミ姉について入った、さらに俺の後をホムランがついてくる
「さて、さっそくお仕事開始だな!」