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一章 パート8

ページを開いて頂きありがとう御座います。

パート8です。

登場人物が増えていく中、名前が出て来ない人物も登場しています。

彼らについて別視点の物語で登場しますのでどのような人物か判明して行きます。

現在は秋久雅人の視点で物語は展開して行きます。

午後五時五十分 中等部校舎西棟二階 第三職員室

はあ、思わず溜め息が出る秋久。理由は他ではない朝のホームルームで一年間で学園を改革するなんて無茶な約束をしてしまったからだ。

「あんなこと言ってしまったが、一体何をどうすれば良いんだ?」

途方に暮れ、机の前にうな垂れる。そこへ一人の男が背後から声を掛けてきた。

「秋久教諭、初の授業はどうだったかな?」

初日の授業は一時間目と四時間目、五時間目だった。秋久が受け持つクラスは三年一組から三年三組の三クラスだ。

篠田(しのだ)先生、お疲れ様です。桜花崎学園の生徒はみんな良い子たちですね。授業中は常に静かに集中出来ていて遅刻、欠席も少ないですね。ここまで生徒を教育するって大変なんじゃないんですか?」

篠田利章(しのだとしあき)、中等部三年の学年主任を務める東大卒のエリートであり、桜花崎学園に二十年前から居続け転勤すらしない謎の多い人物である。

正直言うと何を考えているか分からないので苦手なタイプだ。いや、むしろ怖いと言った方が良い。この場は自然に振舞ってやり過ごした方が良い。なのでワザと答えを肯定か否定に限定する『クロースドクエッション』を使って話す。余り多用すると友達を無くすことになるため使用は極力避けた方が良い。

「いや、当学園では特別何かをしている訳ではないよ。ただ彼らが自ら進んで風紀を守っているんだよ」

それより、と話題を切り替える。

「教諭に頼みたいことがあるんだよ」

淡々と述べる篠田の姿に何か機械と話しているような異様な感覚に悪寒を覚えた。

「何でしょうか?」

「このプリントのコピーを頼みたいのだが。構わないかな?」

篠田はここで断り難くするために『念押し』を使って来た。上司が部下に対して使うとプレッシャーを与えて言うことを聞かせることができる。ただし、嫌わるので多用は避けるべきである。

(やっぱり、嫌な奴)

嫌悪感は心の中に閉まって秋久は立ち上がった。

「分かりまた。コピーを取ってきます。何枚必要ですか?」

「それじゃ一四二枚お願いするよ。このプリントをコピーして来てくれ」

手渡されたA4サイズのプリントは三年生の進路アンケートだ。

「百四十二枚ですね。コピーして来ますので失礼します」

秋久は自然な態度で頭を軽く下げ職員室を出た。



午後六時十四分 中等部東棟三階廊下  

「やれやれだな」

学年主任の篠田に殆ど強制的なかたちで頼まれて印刷しに来たのだが、本当に溜め息を付きたくなってくる。今日の放課後はなぜか新学期が始まっているのに新学期の準備がどうとかでいきなり生徒は全員下校となっている。

印刷室は職員室から反対側の校舎の三階にある。

「何で職員室から印刷室を離してるんだよ?」

一人愚痴を言いながら印刷室に向かう。

西棟と東棟を繋ぐ連絡橋は無く、一階の雨除けの掛かった道を通って上がるしか道が無いので、結果的に『階段を降りてからもう一回上がる』を往復分行わなければならない訳だ。

「効率悪いだろ幾らなんでも。普通は職員室の中か隣の部屋にするだろ。まあ、向こうにも何かしろ事情があるんだろう」

歩いていると前方の階段からモップとバケツを持った作業着姿の男が歩いて来る。手に持っているバケツは上に薄汚れたタオルが被されていて中身は確認が出来ない。身長は秋久より少し低いくらいで顔はキャップを被っているので確認できないが、口元の笑いじわから四十代半ばに見える。

清掃員の事を気にしている間に目の前まで来ていた。

廊下の中心で互いに交差する。

「ご苦労様です」

秋久は軽く頭下げて挨拶をする

「おう」

清掃員はキャップのツバを軽く上げて返事を返してきた。

(さてと、早いとこ終わらせて晩飯を買って帰っ……)

そこまで考えて秋久は今まで気に留めなかった事に引っ張られた様に足を止めた。

朝からの出来事を振り返ってみる。


早朝四時に天然パーマの少年を学園まで案内して、一時間後に理事長室で学園の資料と説明を受けて、そこから二時間後に綾乃に会ってそれから職員室で着信音を勘違いして、とそこまで振り返ってやっと一つの矛盾を見つけた。

資料には清掃員を一切雇っていないと記載されている。

清掃は生徒が各々決められた担当の場所を五人一班で毎週ローテーション形式で行う仕組みになっている。


だとすればたった今、すれ違った作業着の男は一体何者なのか?


秋久が訝しんでいると後ろから、細い金属が筒状の物から出る時の鋭い音が微かに耳に入って来た。

秋久は慌てて躓いた様に身を前方へ屈めながらその場から退いた。


刹那、先程まで頭があった場所を細長い金属製の針が貫いた。


後半は物騒な雰囲気になって来ました。

秋久を襲った者は何者か? どうなるのか?

次回は早めに投稿します。

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