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一章 パート7

ページを開いて頂きありがとう御座います。

パート7です。

午前八時二十分 桜花崎学園中庭

学級日誌と出席簿を持って来たが教室のホームルームまでまだ二十分も余裕があるので中庭の自販機で缶コーヒーを買って傍のベンチで座った。

中庭と言うよりは一つの庭園と表現が似合うほど花が綺麗に並んでいて中央に距離が四車線の横断歩道程の距離の二本の道が出来ている。その道から東側が中等部の校舎、西側が高等部の校舎になっている。さらに南側に大学の食堂のような窓張りの建物の売店がある。

中庭なので中等部と高等部の生徒が自由に行き来している。基本どちらもブレザーなのだがだが、中等部が淡いベージュのブレザーで高等部は紺のブレザーを着ているので一目で判別できる。

ふと、高等部方へ視線を向けると道の真ん中で早朝に出会った癖毛の少年がガラの悪い生徒に絡まれているのを発見した。

止めに行こうかと思ったがこの位置からだと先程いた職員室の窓から丸見えのはずだが教員たちが来る様子がない。

(そりゃ理事長が嘆くわな。肝心の職員が知らん顔じゃな。相手が手を出して来たら止めてやるか)

そう考えしばらく様子を見るが誰も止めに来ない。周囲はただその場に居るだけの最早傍観者でしかない。

その様子に痺れを切らした秋久が立ち上がろうとした時、高等部の校舎から一人の女性が現れた。

焦げ茶の髪で清々しいショートヘアのボーイッシュな女性が現れた。

会話は聞き取れないが状況は何となくだが理解できる。

しばらく、するとガラの悪い生徒たちが校舎に戻って行く。生徒たちは明らかに少年ではなく女性に敵意を向けていた。

(さっきの女、どっかで会ったことがある気がするな)

頭の中の記憶を片っ端から探すが肝心な部分が思い出せない。

大分前に一度会ったことがあることだけしか出てこない。

いろいろあり過ぎてなかなか出て来ない。

(俺も母親に半ば捨てられたり、今も妙な連中に襲われたりしてるからな。一々誰だったかなんて覚えてられねぇよ)

ふと時計に視線を向けえると針は三十五分を刻んでいる。

「やべ、ホームルームの五分前じゃねぇか」

考え事に夢中になっていたせいで時間を忘れていた。その為か周りを見渡しても生徒の姿が殆ど無かった。

秋久は急いで教室へ向かった。



八時四十分 中等部東棟三階 三年二組教室

大勢の生徒に注目されるのは初めての秋久は第一声をどうを言えば良いか迷っていた。一人で教卓に立つのがこんなに緊張するモノだと思い知らされる。

(やっぱり自己紹介からだよな。よっしゃ! 落ち着け俺、やれば出来る。今までやって来ただろ)

自分で勇気づけて教卓に両手を付き第一声を放つ。

「あー、今日からこのクックラスの……」

噛んでしまったのを咳で僅かに誤魔化して続ける。

「担任になる秋久だ……えーと漢字は……」黒板に漢字を書き始める。

「季節の『秋』に久しいの『久』、雅な人と書いて『みやと』だ」カッカッとチョウクが黒板に当たる響きに新鮮な気持ちを覚えながら自己紹介をする。

(何とか誤魔化せては……ねぇよな)

誤魔化そうとしている自分が滑稽に見えてしまっている。

「秋久先生」

一人の男子生徒が立ち上がる。その男子生徒は髪の毛を後ろでくくっているのが印象的だった。

「もしかして、ついこの間までずっとニートだったんですか?」

男子生徒の一言で周りの生徒が一斉に笑う。今朝会った綾乃裕と夜代結を除けば。

「先生、来る所間違えたんじゃないですか? 今すぐ回れ右してママの居るお家に帰った方が良いですよ。このまま居続けても赤恥を晒すだけですよ」

さらに周りが笑う。

だが、気にかかるのが周囲からガヤが一切飛んでのないことだ。

「いや悪いが間違ってねぇよ。なんなら試してみるか? 俺が相応しかどうか」

今度は秋久が男子生徒に切って返した。

「確か磯原卓巳(いそはらたくみ)だったよな。お前の好きな科目でテストしてみるか?」

相手の挑発に挑発で返した。

(挑発する奴は大抵逆に挑発されるのを嫌う。乗ってさえすれば後はこっちのモンだ。中学生が出せる問題は高校生が出せる問題かインターネットで落ちている大学受験の過去問ぐらいだ。それなら、いきなり出されてもすぐに解けるほどやり続けてるんだ。さぁ、条件を呑め)

この時、秋久は知らなかった。相手が自分の考えている様な生易しい相手ではないことをこの学園がただの養育施設では無い事を。


「先生、言いましたね」磯原は薄らな笑み浮かべなら告げる。

「それじゃあ、この学園で何か大きなことやってくださいよ。そしたら俺たちも先生のことを認めますよ。まさか『ただの口先だけニートです』なんて今更言う訳じゃないですよね?」

(こいつ、これじゃ俺が自分で墓穴を掘ったようなモンじゃねぇか!)

自身の一言で完全に退路断たれた訳だ。挑発を挑発で返しくるのをそして、自分の有利な条件を相手に提案することも読んでの行動だったのだ。

秋久はこの三分間で完全に術中に嵌ってしまった。

自分から条件を出して勝負を挑んで分が悪いと逃げたら口だけの『ニート』になってしまう。それは、何としても避けなければならない。今の秋久に残された選択肢は相手の出された条件を呑むしかない。

「わかった、お前の条件を呑もう。期限は一年だ!一年で改革をしてやる!」

磯原はその条件を認め、第一回目のホームルームが終わった。

学園を改革すると突然宣言してしまった秋久、一体どのなるのか?

次回は早めに上げます。

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