一章 パート5
ページを開いて頂きありがとう御座います。
パート7です。
今回は主人公の一人綾乃裕が初登場します。
午前七時三十五分、中等部校舎三階東棟廊下。
資料を眺めながら歩く秋久。
「クラスは三年二組……って三年!」
驚かずには居られなかった。
三年と言えば受験などがある大事な学年である。新米教師の秋久にはとても重い重圧となった。
ふと、考え込んでいると後ろから何かがぶつかってきた。
「ひゃっ」っと拍子の抜けた声で衝突した何かが倒れた。
振り返ると肩に届く程の黒い髪を両脇で結んだツインテールの女生徒が頭を両手で押さえながら尻もちをついていた。
「大丈夫か?」
手を引っ張って起こす。
「えっ……あ、あの、ごめんなさい!」
女生徒は慌てて頭を下げる。
「いや、こっちこそ悪かったな。怪我は無い……か?」
秋久は額に軽く指を添える。
(周りに誰もいなくて良かった)
女生徒は淡いベージュのブレザーと膝より少し高めの丈のスカートを着ているが、何故かスカートの裾が上にまくれ上がってそのままカッターシャツに巻き込まれていた。彼女はそのことに全く気付いていない。
(なんで気づかない? 違和感感じねぇのか! 何つう低防御なんだよ! 全く)
心中で一人語る秋久を余所に頭に疑問符を浮かべ女生徒こちらを見つめている。
秋久はこっそりスカートの裾を元に戻してみる。
だが、気づかない。
目線がこちらを見上げたまま。
「あのー……どうかしたんですか?」
心配そうに秋久に問いかける。
どうかしてんのはお前だ! っと頭の中でツッコミを入れ「いや、何でもない」と切り返した。
ふと、足元に落ちた生徒手帳を拾う。
中等部 三年二組 綾乃裕
「お前、三年二組か?」
「えっ……そうですけど」
「偶然だな。俺は二組の担任なんだよ」
「えっ、そうなんですか」
綾乃は驚く。
「全くだよ。俺は秋久雅人だ。よろしくな、綾乃」
そっと手を取り生徒手帳を掌にそっと乗せて返す。
その仕草はどこか王子様の様に見えたのか綾乃は頬を赤くする。
「もう落とすなよ」
「ああ! もう、この手は一生洗いません!」
「洗えよ」
目を輝かせる綾乃にサラッとツッコミを入れる秋久。
その光景を向かいの西棟四階の窓から夜代結は眺めていた。
「……秋久雅人と綾乃裕か、お前たちの行動を見させてもらおうか……」
冷たく笑い夜代は去っていく。
綾乃裕も含め登場人物も段々増えて来ましたがこの先も増えて行きます。
今のところ鈍い子、アホの子、間抜けな子の三拍子が揃った綾乃ですが、この先ストーリーにどのように関わって行くのか?
次回はなるべく早く上げて行きます。