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一章 パート3

ページを開いて頂きありがとう御座います。

前回の続きです。

「もう一一時じゃねぇか」

街頭の明かりが秋久を照らす。

電話の電源を入れると同時に同時に電話が鳴った。

秋久は電話番号を見て特に気にすることなく携帯電話の通話ボタンを押した。

『はっはっは、どうだちょうど良いタイミングだったろ?』

「何が 『ちょうど良いタイミングだったろ』だよ。また、観てたんだろ駿介さんよ、趣味が悪いんじゃないのか」

『まあ、それが俺の仕事だからな』

電話の相手はどこか飄々とした老人だ。

名は葛飾駿介(かつしかしゆんすけ)。昔は外科医だったが心房細動の患者を助けるために五六年当時タブーとされていたカテーテル手術を行い、その責任を問われ医学界から追放された後、手術に関する記録も抹消され、現在は 『底辺の園』と呼ばれる貧民街の長として暮らしている。

そして、裏の顔は情報屋として活動し現在では関東では右に出る者はいないほどの人脈を持ちインターネットが普及した平成の時代において人脈だけで情報を仕入れている珍しい情報屋だ。

「それはもう知ってるよ、んなことより俺に用があったんじゃないのか?」

『ん? 特に無いが』

いつものことだがボケてもないのにくだらないギャグをかます駿介に秋久も返す。

「それじゃあ、今からそっちに行って直接要件を聞きに行こうか?」

(よわい)八二の年寄を痛め付けるとはなんと嘆かわしい。くわばら、くわばら』

思いっきり棒読みでギャグを返す俊一にさすがに痺れを切らす秋久。

「用がないなら切るからな。バッテリーの無駄だし」

『就職の件で朗報がある思ったのに残念だ。本当に残念だ。宝を目前にして尻尾巻いて逃げるくらい残念だよ。君がそんな残念な男だということに私は残念でならないよ』

そのワザとらしい言葉に秋久が喰らい付く。

「それで、どんな情報なんだよ」

秋久の問いに真面目な口調で答える。

『俺の学生時代の友人でな。『桜花崎(おうかざき)学園』の理事長をやってる奴からお前を』

「『桜花崎学園』、それってたしか名門私立だったよな?」

『そうだ。昭和六四年、一九八九年つまり創立二四年で都心に人口が集中する東京で西部の土地を買い建設、そして一九九一年、バブルが弾けた後、周辺の団地から若者が高齢者を残して出ていき、残された高齢者に老人ホームの入居費を一部負担することを条件に立ち退かせた後、一流企業が当時廃坑寸前の学園に多大な寄付金出し、その金で周辺のアパートを購入して改築して学生寮や新校舎にして現在では生徒の九割が寮生活している。それと……』

「もういいよ、説明はそのくらいで勘弁してくれ。いろいろあって疲れてんだよ」このままだと永遠に説明が続きそうなので話に割って入った。

「それで、いつ面接は行われんだ?」

『無い』

はぁ、と思わず口してしまう。

『だから無い。と言うよりはもう終わっている』

「『終わってる』っていつの間に終わったんだよ?」

『一週間前』

「一週間前って、おい」

自分の知らないとこで勝手に事が進んでいるのをただ呆れるしかなかった。

『俺はな情報と同時に信頼も売ってる。俺が信頼した相手は同時に俺の客からも信頼されないと、俺が食っていけんからな』

情報屋は信頼が命といっても過言ではない商売だ。信頼は一日二日で築けるものではない。その割に築き上げた信頼は少しのミスでも崩れ落ちるようなデリケートな商売だ。


そんな厳しい世界で生きている葛飾駿介がいかにすごい人物かを物語っていた。

「何も知らずに勝手なこと言って悪かったよ。理事長にはいつ会いに行けばいいんだ?」

『明日の午前五時に始業式の前に理事長室に来るようだとよ。時間厳守だぞ。俺の信頼が掛かってからな泥塗んなよな』

「分かったよ。ガキの頃から世話になりっぱなしだな。ありがとうな……爺さん」礼を一言挟んで電話を切った。



やっと家であるアパート着いた、時計はもう深夜零時を指していた。。

アパートから二人の若い男女が降りて来て前に止めてあった白いワゴンに乗り込み走り去って行った。

「こんな時間にも来るのかよ。忙しいんだな」

二人は恐らくアニメ制作会社の人たちだろう。用があったのは自室の二つ隣に住んでいるアニメの原画マンの手伝いをしている大学の先輩の佐伯加奈子(さえきかなこ)だ。

「おお、雅人じゃん。どうした? 随分と遅かったなナンパしてたか?」

「違いますよ佐伯先輩、ちょっと絡まれてただけです」

「ふーん、相変わらず人気者だねぇ」

妙に高いテンションで階段を降りてきた赤茶色の髪を適当に結んだ紺のジャージ姿という砕けた格好で話す。

「それで、羨ましいんですか?」

秋久は茶化しながら返す。

「いんや、あたしはボッチの方が気楽でいいからねぇ。彼氏は一様いるけど」

「束縛嫌いな先輩が良く原画マンなんて大変な仕事を選びましたね」

佐伯はタバコを取り出し火を付ける。

「あんたも吸う?」

結構です、っと秋久は差し出されたタバコを手で制止する。

「そっ、元ヤンの癖にタバコ一つ吸わないなんて次代は変わったのかねぇ」

「ヤンキーじゃないですよ」

秋久は軽く突っ込んだ。

「話を戻すけど、あたしは束縛されるのは嫌いだけどね、自分で望んだ束縛は嫌いじゃないの!」

そう言ってアパートの壁に寄り掛かる。

「絵を描くのはガキん時から趣味だったし、自分の好きなことやって飯食えたら文句無しに最高じゃんか」

そこまで言って佐伯の表情が曇る。

「いやぁ、今日制作会社の人から電話掛かって来てさ。何でも作画さんの一人が胃潰瘍で入院でその人が担当してたカットが重要なシーンで変わりで誤魔化せなくて急遽あたしにそのカットを明後日の昼までに頼むって言われた訳よ。そりゃもうハードスケールジュ過ぎて気が遠くなりそうよ。しかもワンクールのアニメでもっとも重要な三話目、そこで視聴者に面白いかどうか判断されるからそこでコケたら偉い損害な訳」

「そりゃあ、大変ですね」

「でしょ? だからさ、放送は見なくても良いからさ円盤買ってよ」

「まあ、見かけたら買いますよ」

佐伯の懇願を軽く受け流す。

「先輩、桜花崎学園って知ってますか?」

「ん、桜花崎学園って言えばこの不景気の中国内外から大量の生徒を受け入れてる名門校でしょ?」

佐伯は突然の質問に呆気に取られた口調で答える。

「俺そこで教師になることになりました」

佐伯は突然の言葉にタバコの煙を吐きながら咽せる。

「ゲホッ、マジで言ってんの? あそこがどれだけ倍率高いか知ってんの? 三流大学出のあたしらじゃ相手にされないとこなのよ」

「いや、葛飾の爺さんから明日友人でそこの理事長に会ってくれってさっき言われたよ」

佐伯は余りの展開に呆然とする。

「あのエロ爺の友人って人脈があり過ぎて誰だか分かんないって」

「だから、その学園について知ってることがあれば教えてもらえませんか」

佐伯は勢いのない返事を返す。

佐伯にとっては自分と同じレベルの学歴で名門校の教師になれるなんて微塵も感じていなったので、ショックで喜べば良いのか笑えば良いのか分からなかった。

「えーと、創立二一年で巨額の富を抱えた法人が派手に改革やらしてる学園らしいけど」

「けど?」

佐伯の含みのある台詞にオウム返しをする。

「いやぁ、何か色々良くない噂があるみたいだし気を付けた方が良いよ」

「単なるアンチじゃないんですか」

「そうでもないのよ。一月前秩父山から二十代の男性の遺体が発見されてね、ニュースでは少し触れた程度だったけどその人その学園の職員だったのよ」

佐伯は何時になく神妙な口調で話す。

「何かトラブルに巻き込まれたとか何かですか?」

「あの学園裏では団地に住んでた爺婆を三割負担するとかで老人ホームへ強制退去させたりとか色々エグイことやってるみたいだし」

そんな虫の良い話は無いから何かしらあるとは思ってはいたが、どうも相当ヤバイ学園らしい。

「あのクソジジイ、俺への当て付けかよ」

「でも良かったじゃん、一様就職決まったんだし。それにあんたはそう易々くたばるタマじゃないでしょ? 変な能力っぽいのがある訳だし」

「変は余計です」

「ゴメンゴメン、一言余計だったね」

ふと、視線を落とし自身の体質ついて考える。


自分の能力というかよく分からないモノは遺伝なのか突然現れたのか?


考えても仕方ないこれには一生付き合って行くしかない。

「それじゃ明日早いんで、そろそろ俺帰ります。まあ死なない程度に頑張りますよ」

「お、おう……頑張れよ、雅人。健闘を祈ってるよ」

階段を上がって自室へ戻ろうする秋久へ親指を立ててエールを送る。

秋久は手を軽く振って返した。

まだ序盤の序盤ですのでゆったりと目を通して頂ければ幸いです。

次回は修正次第上げて行きます。

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