二章 パート7
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パート7です。今パートはいよいよ岡崎率いる抵抗派の行動する為の準備に入ります。
さて、っと岡崎は話題を切り出す。
「話を戻すけど、今後の活動の続きを話すぞ」
「ああ、頼む」っと磯原が返事を返す。
授業開始からかれこれ三〇分も空き部屋ならぬ空き教室に居座っている。
「綾乃を助ける為とは言え、先生を囮にするのは心が痛んだけど、その甲斐あって綾乃は無事だった訳だ」
岡崎たちが授業をサボることを気にしないのは先程の流れで理解している。だが、自分を助ける為に秋久を囮に使ったことがどうも理解できなかった。
「ちょっと待って! 私を助ける為に先生を利用したってどういうこと?」
反射的に口が動く。それほど綾乃にとって急を要する問題だ。
「あの人には悪いことしたとは思ってるさ」
岡崎は秋久に謝意を述べる。
「けど、そうしなければお前が危なかった」
「どうして私を助ける必要があったの?」
一体自分にどんな危険が迫ってるのか綾乃には分からない。ただ分かるのは自分の身に降りかかるその危機を秋久が代わりに受けてくれたということだ。
「お前の超人的な記憶力に気づいてる奴が俺たち以外にもいる可能性がある。さっき瀬川が言ってただろ。この学園は個人情報であるテストの結果を学園が運営してるサイトからいつでも誰でも閲覧出来る。まあ、とは言っても名前まではさすがに自分で調べないと分からないけどな」
そのことが何を意味するのかを綾乃は気づいた。
「っということは、勘のいい人なら私の記憶力に気がつく可能性があるってこと? それを好く思わない相手に目をつけられる前に注意を引きたかった訳? それだけで先生を巻き込んだの」
「ああ、その通りだ。おかげで説明する手間が省けた」
綾乃は理解出来たが、さらにもう一人理解出来ていない奴がいることに岡崎は何となく気づいていた。
「おい、一体どういうことなんだよ? 説明してくれよ、真夜!」
安の定磯原が一人孤立状態になっている。
「悪いけど卓巳、今は秋久先生をどうやって助けるか考えなきゃならない。詳しい解説は後にしてくれ」
とりあえず納得したのか磯原は近くの椅子に座る。
「はは、俺はこういうの苦手だからなぁ」
棒読みで苦笑しながら溜め息をつく磯原に菅谷が近づく。
「卓巳、まあ、そんなこともあるだろ。気ぃ落すなって、な?」
肩を組んで磯原を励ます菅谷を綾乃は見て岡崎に質問を投げ掛ける。
「勝手な憶測かもしれないけど二人って付き合い長いの?」
「そうだな。かれこれコイツラは幼稚園からの付き合いだな」
岡崎は淡々と答える。
「まあ、その話は後にして。秋久先生のことだけど」
話題を秋久へと戻す。
「秋久先生を助ける為に綾乃の協力が欲しい頼めるか?」
自分を必要としてくれる岡崎たち、一度身を挺して命を自身の命を助けてくれた秋久を助けることを拒む理由がどこにもなかった。
「うん、私なんかで出来ることなら何でもするよ!」
秋久を助ける為自分に出来ることがあるのがとてもうれしかった。今までこの人並外れた記憶力が誰かの役に立ったことなどないから、例え良いように利用されるだけでも構わない。今の綾乃には自分の為に身体を張って助けてくれた秋久に何か一つでも恩を返したかった。
「まず、先生と話した内容をノートに記してくれ」
岡崎はノートを取り出し綾乃に渡す。綾乃はノートに記憶された会話を機械のように正確にそしてスピーディに文面に起こしていく。
全ての会話を書き上げた。
「スゲェな、三分も経ってねぇ。一言一句逃さず昨日の会話を全部覚えることが出来るってスゲェな。なあ、卓巳?」
「ホント大した奴だよ、俺も出来たとしたらテストとか勉強しなくても絶対満点取れんだろうな。とは言っても普通に勉強するけどな」
菅谷と磯原が羨ましそうに綾乃を見つめる。
「これでいいの?」
岡崎に確認を取る。岡崎は良くやったと頭を撫でて褒める。
やはり今までの秋久とのやり取りの中からは誰が首謀者かを決定づける語句は見つからない。
「岡崎君、これでいいの?」
瀬川が心配そうに話しかける。
「大丈夫だよ瀬川、心配するな。端から先生が生徒に誰かに襲われましたなんて話をするなんて思ってない」
岡崎の言うことは至極当然のことだ。非日常的な話を誰かにすれば逆に怪しまれる。それに年下で自身が受け持つクラスの生徒に対してするなら尚のことだ。もし、そんなことをすれば生徒からは舐められる原因になるだろう。
だが、この学園にとっては至って日常的な出来事なのである。それに万が一にでもそのような事実が外部に洩れることはない。それは権力者たちが己が権力を手を裏で行使しているからだ。
「けど、昨日のやり取りを知ることが出来たのはかなりプラスになった」
「それは一体どういうこと?」
岡崎の言葉に瀬川が疑問を投げ掛ける。
「それは、この文面からどこで何をしていたのかを知ることが出来るからだ」
文面には場所を示す言葉が幾つか見かけられる。それにもう一人誰かいることも確認することが出来る言葉もある。
「綾乃、もう一人の奴は『天パの人』だろう?」
「どうしてそれが分かったの?」
癖毛の少年の話が出て来る。
「勘だ。……それととその人との会話も文面に書き起こしてくれ」
うん、っと綾乃は再びノートに書き始める。今度は先程より長い文章が続いている為だろう書き上げるのに倍近く掛かった。
岡崎はノートを受け取って素早く読んで行く。
「『ふーん、えらい変わった奴やな。お前は』ってのはどう言う意味だ?……どこの会話話を軸に言ってんだ?」
気になる単語が出て来た。この単語に意味があるのか分からないが、岡崎にはどうしても気になってしかたなかった。
「真夜、その言葉に何の意味があるんだ? 綾乃が変わった奴ってだけだろ」
磯原が横から口を挟む。
「その先輩が言ったのはどのタイミングだ?」
磯原をシカトして綾乃に問いかける。
「えーっと、それは……」少し答えるのをためらう。
「綾乃、口止めされてるのだったら気にするな。先輩には黙っておくし、それにこの部屋に来る際ボディチェックさせて貰ったけど盗聴器らしきモノはどこにもなかった」
「ちょっと! ボディチェックなんていつやったのよ!」
「お前がこの部屋に入る前に誠基に頼んでおいた。お前には感覚を感じないから簡単に触れることが出来たよ」
綾乃はボディチェックをされたことに不満を覚えると同時に『人として最低限警戒しなければならいことだ』っと自分に納得させた。
秋久を助ける為に作戦を練る段階のようです。秋久を狙う者は誰か?
話は変わりますが「天パの人」こと高等部の癖毛の少年は綾乃と描かれていない場面で接点があるようです。彼はどのようにこの先関わるのかは高等部を舞台にする時に書かせて頂きますので、「テメェの出番まだねぇから!!」
と言うことで次回は随時投稿致します。