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二章 パート4

ページを開いて頂きありがとう御座います。

今パートもまた新たな登場人物が出て来ます。ちょっと出て来過ぎかも?

綾乃は一体どうなるのでしょうか?

綾乃はただ成されるがまま連れられる。気が付くと中等部東校舎の四階まで来ていた。

この階は情報の授業に使用されるパソコンルームと多目的室に半分倉庫化した空き部屋があるだけで教室が一切無い。

授業が無ければこの階に来る生徒は殆どいない。昼休みの現在、綾乃と菅谷の二人以外人影はない。

私、きっとこの人に密室でひどいことされんだ、っと綾乃は頭の中でこれから自分に降りかかるであろう現実を想像しながら震え顔を下げる。

おい、唐突に声を掛けられ綾乃はビックリして勢い良く上を向く。

「オレはそんなに悪い奴に見えるか?」

綾乃は本能的に咄嗟に首を横に振る。

「じゃあ、何で密室に連れ込むなんて想像すんだよ?」どうしてそれを? 綾乃は菅谷に聞き返す。 あァ? っと菅谷は眉間にしわを寄せもの凄い形相で睨む。

殴られるのを本能で察して目をつぶる。だが、いつまでも経っても拳が飛んで来ない。綾乃はゆっくりと目を開ける。

菅谷は扉を開けていた。プレートを見るが何も書かれていなかった。おそらく使用されていない教室だろう。

「おい、連れて来たぞ」

菅谷が部屋の中に向かって声を掛ける

部屋は段ボールで敷き詰められ教室の半分ほどのスペースしかない。さらに中には電子レンジと小型冷蔵庫が置いてありさらに狭めていた。中央の机を囲むように三人の男子生徒が椅子に座っていた。内二人は同じクラスなので顔と名前を知っている。だがもう一人は初めて見る顔だ。

同じクラスの二人は後ろ髪をくくっているのが磯原卓巳(いそはらたくみ)でヘアワックスで髪にツヤを出しているのが岡崎真夜(おかざきしんや)だ。磯原は昨日、秋久を挑発していた男だ。そして、岡崎はホームルームの後に登校して来て六限目が終わったっと同時に帰ったので秋久は顔を知らない。

初めて見る男子生徒は他の二人と違い逆に消極的な雰囲気でこちらを警戒して視線を合わせようとしない。

「さてと、綾乃が来たことだしそろそろ本題に入るか」

岡崎は立ち上がり綾乃を部屋に引き入れて扉を閉めた。

「岡崎、その前に瀬川を紹介いた方がいいだろ」

磯原は初見の少年『瀬川』を紹介するように岡崎に進言する。

「そうだな、瀬川一人で出来るか?」

うん……一人で大丈夫だよ岡崎君、っと岡崎に弱腰に答えて立ち上がる。

瀬川は立ち上がり綾乃に視線を向けるがすぐに逸らした。

「はじめまして、僕は瀬川祐希(せがわゆうき)。去年この学園に転校して来たんです。だから、あまり学園のこと知らなくて力になれないけど……僕で良かったら相談に乗るよ」

頭をペコリと下げる瀬川の姿勢に綾乃は共感を覚えた。この中のメンバーで一番良識的で穏やかな性格は殺伐とした学園の中に咲いた一輪の華に見えた。

「こっちこそはじめまして、瀬川君!」

言うが早いか満面の笑みを浮かべ瀬川の手を握る。

「自己紹介が済んだところでまず、みんなにハッキリしておかなければならないことがある」岡崎が磯原に合図を送る。すると磯原は電子レンジからカレーパンを取り出した。

あっ、っと綾乃は自分の手を見る。売店で買ったカレーパンが無かった。

「心配するなお前が落とすだろうと思って俺が磯原に頼んで買って来て貰った奴だ。お前が来る前にそこのレンジで温めておいたからアツアツだぞ」

そういうと岡崎は磯原から受け取り綾乃に渡す。

「まあ、食べながら話そうか」岡崎は柔和な笑みを浮かべて薦める。

準備が良すぎるのに不信感を覚えつつ一気にかぶりつく。

ガツガツ食べる綾乃に周囲は困惑した表情で浮かべる。

「あれ?」

パンの中の具を見て疑問に思う綾乃に岡崎は足元の鞄から中身を取り出して綾乃に見せた。

中から出て来たのはピロシキとキャンプ用の小型のクーラーボックスだった。ピクニックの時に持ち歩くランチボックスのようにコンパクトで学校指定の鞄ぐらいなら十分に忍ばせることが可能な大きさだ。

つまり、他のメンバーは綾乃の食いっぷりに驚いたのではなくキンキンに冷えたカレーパンをアツアツと認識して食べていたことに驚いていたのである。

当然、電子レンジから出て来たらそれは熱いと誰だって認識する。それは何故か? 人は使い続ける内に無意識その用途から中から出て来たものが熱くなっていると勝手に思い込むからだ。例えば子供の頃に銭湯に行った際に湯に浸かろうと思って水風呂に入ってしまった経験はないだろうか。それは銭湯が、風呂が熱いものだと思い込んでいるからだ。ただそういったことにならないように水風呂には水色のタイルを貼ってそこが冷たいことを認識させる工夫がなされている。

綾乃の場合も同じことだ。ピロシキを電子レンジから取り出すことによって彼女がそれがアツアツだと勝手に思い込んでいただけのことだ。

「騙したの!」

綾乃は顔を真っ赤にして怒る。

「はは、騙したことは謝るよ」岡崎は怒る綾乃を制止しつつ話題を切り出す。

「綾乃、お前は触覚器官が正常に機能していない。それに痛覚神経も。恐らく味覚も他人からの反応を見て無意識の内に身に付いた者だろう」

えっ? っと岡崎の一言に焦る。

「電子レンジから取り出したカレーパンを三口も食べたのに、食感の違和感じゃなく、中の具を見て違和感に気づいた。だけど、冷やされてたことに気づかなかったことがなによりの証拠だ」

岡崎はサクサクと推論と確証事項を述べていく、その姿はさながら小説や漫画の探偵のようだ。

に目つきが凛々しくなっていた。その内、『ジッチャンの名に賭けて!』っとか決め台詞を言いそうな勢いだった。

「おいおい、頭脳指数一八〇のお前には分かるだろうけど、俺たちにも分かるように説明してくれよ。自慢気に言われても分かんねぇよ」

一人突っ走る岡崎を磯原が制止する。

「一晩掛けて推理したけど何が原因でそうなったかは分からない。けど、昨日から見せていた不自然な行動の全ては神経系統が正常に機能していないことが関係してしているのは確かだ」

それに、っと綾乃に気づかれないように背後で待機していた菅谷に合図を送る。それに合わせて菅谷はポケットから折り紙で作った紙鉄砲を取り出した。

「ちょっとぉ! みんなして私を変な人みたいに言わないでよぉ!」

綾乃は不服そうに両手をブンブンと振り回す。

注意が正面に集中しているところを背後から菅谷が後頭部目掛けて紙鉄砲を振り下ろした。

紙鉄砲は空気の摩擦でパッーンと破裂音が鳴り響き、一瞬綾乃は電池の切れたオモチャのように動きが止まった。


五秒後、綾乃は背中を押さえながら絶叫して倒れ込んだ。

綾乃は感覚器官が正常に機能していない為、痛覚も味覚も光と音で補っている。その為、見えたり聞こえたりするモノには感じることが出来るが、それ以外のことは全く感じにようです。

パート5で登場した際、スカートをシャツに巻き込んでも気づかなかっ理由が上記です。

私自身ある日突然感覚が感じなくなったら地に足が着かないような不安な心情になりますね。

長くなりましたが、次回は随時投稿致します。

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