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一章 パート10

ページを開いて頂きありがとう御座います。

投稿パートが二桁に突入しました。

今回は男の語りがメインになります。

と言うことですのでどうぞ宜しくお願いします。

かれこれ十分以上男の話を聞いている。

男が今まで歩んで来た聞いた。

男の名は柏原雄大(かしはらゆうだい)、年齢は三十五歳。神奈川県のある家庭に生まれたそうだ、父はどこにでもいるサラリーマンで母はスーパーでパートをやっている。家庭環境は至って普通で家族の仲も良かったらしい。

高校三年生のある日、幸せな家庭が失う出来事が起こった。

父親が務めている会社の後輩が家にやって来たことが悲劇の始まりだった。

後輩は多くのこと学ぼうとする真面目な性格で雄大を含めた家族全員が彼を気に入っていた。

そんなある日、後輩から五十万借金をして少々お金に困っていて一時的に保証人になって助けて欲しいと頼んで来た。

家族全員がその後輩の大変気に入っていたので快く引き受けた。


それから数日後、その後輩は姿を消した。


父親は最初はいつか帰ってくると信じて待っていたが、後輩の借金の金額を見て必死に探し回った。


そこには一千万と書かれていた。


その後輩は端から借金を肩代わりさせるために父親に接触して来たのだ。良い後輩を演じて信頼させて完全に術中に嵌められたのだ。

家族を養うだけの収入しかなかった。父にそんな大金を支払う能力があるわけがなく。父親があれこれ金策に走ったのも虚しく一家は崩壊した。

今考えればすぐに怪しいと分かるはずのことなのにあまりにも無鉄砲だったことが招いた悲劇だ。

それから、家族バラバラになって雄大は裏社会に身を落いて行った。


感傷に浸る男に秋久はゆっくりと話しかける。

「あんたが歩んで来た人生がどんなに不幸なものだったのか分かった。けど人を殺しても良い理由にはならないだろ。俺だって母さんに捨てられた過去があるけどな、そのことで母さん妬んだり恨んだりしたことはねぇよ。自身を幸せに出来るのは、結局は自分自身だろ。だから、俺は負の感情より今あるモノ、将来に築くモノの為にこの体質と共に行けるところまで行く」

秋久の自身と違い親に捨てられた過去を持ちながらしっかり前を見据えている姿に涙腺が赤く染めさせた。

「なるほど、捨てられたと奪われたでは比較にならないが、裏の世界に身を落とした俺はお前と違い割り切れなかった弱さがあったか。だが……」

雄大は途中で切り秋久の顔を見つめなら更に言う。

「良いか! この世界ではきれい事は決して通用しない。必要なのは自分と仲間の為に時には非常にならければならない。でなければ俺のように全てを奪われるぞ!」

雄大の言葉からこれまで見てきた世界の非常さを感じさせた。

「……」

雄大の言葉に返す言葉を用意しない。これ以上はただの説教になってしまうからだ。

男はレイピアをモップの鞘に仕舞いながら話す。

「お前は気付いているだろうだが。この学園は普通じゃない。お前らはこの学園に招かれた不運にもな」

さらにバケツを拾い上げタオルを被せて言い放つ。

「仲間を売ることになるから俺たちが何者かは言えないが、代わりに桜花崎学園について俺が知っている情報を教えてやる」

「その情報ってのは?」

雄大の秋久は言葉に喰らい付く。

「この学園では権力者が全てを牛耳っている。奴らに持たぬ者が挑んだところで結果が見えている。お前も見たんだろ? いじめられてたとしても教師はだって傍観者になっている有り様を」

「ああ、そのこともだけど、それ以外にもどこか教師たちが機械みたいに無機質な対応してるように見えたな。一部例外もいたが」

雄大の言うことに自身が見たことを照らし会わせる。

実際にそんな横暴が黙認されたとしてもそんな体制長続きするとは思えない。そこには必ず反発する生徒、その保護者が黙っている訳がない。保護者は高額学費を払って子供に安心出来る教育環境を与えている。

それがまかり通っているとすれば学園を改革するのは一筋縄では行かないだろう。

「だが、そんな中で対抗している奴らはいる。お前一人がどうこうしても何とかなるヤマじゃない。そいつらを見つけ出せ!」

「その対抗してる奴らってのは一体誰なんだよ?」

彼らに接触出来れば協力者になってくれるかもしれない、っという一つの希望の光が差し込む訳だ。協力してくれればの話だが。

「悪いが、俺が知ってるのはここまでだ。後は自分の力で見つけ出せ。俺の本心を見抜いたお前なら出来んだろ?」

男は対抗者が誰かは知らないっと言っているが、一度差し込んだ希望の光だ、ここで手招きをして待っている訳には行かない。かと言って目星も全くついていない

「分かった。その情報をどこで手にしたんだ?」

秋久は情報元に疑問を持つ。

「お前が気にする事じゃない。それにお前を認めてるんだぜ! 認めた相手には自分の出来る最大限の協力をするのが俺の生き方だ」

柏原はどこか充実した表情をする。

「そんじゃあ、俺は帰るとするか。自分で殺っといて言うのはなんだが、こいつを供養してやらなねぇとな。今頃はあの世で一人で迷子になって泣いているだろうからな」

雄大は手に持ったバケツ見ながら言った。

「お前とは違うかたちで会いたかったな。まあ、今更言っても仕方ねぇことだが。こいつにはあの世でも面倒見てやんねぇとな」

「だったまた今度会えば良いだけじゃねぇか。そん時はお互い仕事だのなんだのややこしい話は抜きにして貰いたいけどな」

はは、っと男は笑いながら去って行った。その後ろ姿はどこか虚しさを感じさせた。


さて、っとスーツのほこりをはらってから秋久は一息ついてふとあることを思い出す。

「そういえば、篠田先生にプリントのコピー頼まれたんだった」

そこまで思い出して忘れていたものに気づいた。

「そういえばプリントはどこやったんだ?」

考え事にしている時に突然襲われてそれ以降プリントのことなど忘却の彼方に消えていた。

秋久は慌てて辺りを見わたしてプリントを探す三年生にとって重要なプリントなので紛失したら大変なことになる。

「お、あっ……た……」

後ろを振り返って見つけたのは足で踏まれて元がなんなのか判別不能な程までに破れたプリントだった。

「さすがにこれじゃコピーは……無理だよな」

あられもない姿になったプリントを拾い上げて本日最長の溜め息を吐く。

「やってらんねぇな。ちゃんと報告しねぇとな」

『変な清掃員に襲われて抵抗している内にプリントがボロボロになりました』と報告する訳にはいかない。

なので秋久は言い訳を必死に考えながら職員室に向かった。

とんだ一日の秋久、とんだ人生の柏原。両者が異なる境遇の末、それぞれ別の生き方を選んだ。もし、二人がそれぞれ立場が入れ替わったらどのような邂逅をするのか? 暇な時間考えてしまいますね。

しかし、私が別の可能性を同時に描くと技量的に読み手を混乱させてしまうだけですので、今は止めておきます。

長くなってしまいました。次回は随時投稿していきます。

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