表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/83

一章 パート9

投稿遅れて申し訳御座いません。パート9です。

今回は戦闘がメインです。

秋久は刺客をどう対処するのか? 


良く見ると針のように尖った形状が西洋のレイピアに似ているが、グリップ保護する鍔の様なものが付いていない至ってシンプルな形状を更に簡素な形状に変えた全く飾り気の無い玄人使用に改良されたモノだった。それよりもモップに仕込まれたモノだということに驚いた。

「まさか初手躱されるとはな」

言葉とは裏腹に男は差ほど驚いた様子がなく冷静に相手を分析していた。

「い、いきなり何すんだよ!」

気づくのがもう少し遅れていたら、背後から一突きだった。とても落ち着いていられる状況ではない。

「……」

男は無言のまま口だけが笑っている。

「ちっ、黙りかよ!」

不気味な男の反応に秋久が身構える。

「クク……ただ、お前を殺すそれだけだ」

男は低く笑っている。冷たい目をして。

「冥土の土産に教えるが、不意打ちで相手を仕留めるのがこちらの世界では常識だ。どうしてわざわざこれから死ぬ相手に説明してやる必要がある?」

男の言う事は最もだった。戦いはいかにして相手に情報を与えずに相手の情報を得るかが重要な要素であり、幾ら腕っぷしで相手を圧倒出来たとしても相手に情報を与え過ぎると、こちらの戦法に対応した作戦を練って来る危険性が出て来る。

(くそ、完全に相手のペースに呑まれてんな。今、体質を使ってどうにかできるか? 奴の戦法、癖を見つけるのが先か)

自分なりに冷静に分析して一歩踏み出し距離を詰める。


互いに二歩ずつ歩けば接触する間合いに立った。


だが、男は一歩も動かずキャップを取って足元のバケツを掴むと被せてあったタオルを取っ払う。その行為で二歩目を進めせなかった。

「これに見覚えは無いのか?」

そう言うと男はバケツの中の物を掴む。

ゆっくりと中に入っている物が出て来る。


細長くて黒い繊維が出て来た。


それが秋久には何であるか理解できない。

男は続けて引っ張り上げる。

ゆっくりとだが中身が見えてくる。


黒い糸状の物体の下から青白い物体が出て来た。


黒い糸状の物体が青白い物から生えている。

(黒い糸は一体何だ? それと青白いのは……)

そこまで考えてやっと答えが出てきた。

(まさか、嘘だろ?)

東側に窓がついているので夕日が入って来ない、対して意識していなかったが、外は日が沈んで真っ暗になって天井の蛍光灯が明かりを灯していた。

窓に映る自分の表情が恐怖に歪めているのがしっかりと映り込んでいた。


青白い物の下から左右対称の黒いウェーブの掛かった物が出た来た。


「悪い冗談だろ?」

秋久の問い掛けに男は薄笑いをする。

男は尚も引っ張り続ける。

秋久は必死に視線を逸らそうとするが、本能がそれを許さなかった。

続けて出て来た物を見て秋久は自分が何に対して恐れていた事を完全理解した。


黒いウェーブの下から出て来た物は……目だった。黒いウェーブは眉だ


バケツの中身は人間の頭部だった。


目の前の頭部に見覚えがあった。

(お、おい、マジかよ? あいつは昨日の商店街で襲ってきた女じゃねぇか!)

思わず壁に手をついてしまう。昨日襲われたミオスタチンによって圧倒的な膂力を見せた女の頭部が目の前の男が持っている。

人の頭部を目の当たりにして平然としていられる者はそうはない。さらに言えば知っている人間の首が目の前にあることが精神面により圧力を与え、秋久は目の前が真っ白になる。

「なあ、こいつに見覚えがあるよな? あるはずだよなぁ?」

男は先程とは別に殺気の籠った目付きで秋久を睨み付ける。

(まずい、ここで引けば確実に……)

男の殺気に秋久は押されるが一歩も引かなかった。

「あんたの言う通り確かにこの女とは昨日会っている」

相手の威圧とデモンストレーションが全くの無意味であると言わんばかりに秋久は強気の姿勢と目で男を睨み返す。

今までの男の行動は全ては見せ掛けだけで実力と呼べる行動が一切無かった。つまり、標的を密かに忍び寄り気づかれることなく始末する『暗殺』を行うのに長けているがいざ戦闘になれば目の前の女より劣る可能性がある。

ここまでは秋久が男の分析した結果である。しかし、この分析結果には不十分な要素がいくつかある。


秋久が男目掛けて距離を詰める。


男は床にバケツを置きレイピアを秋久の心臓目掛けて突き出す。


秋久はそれを体質で収束させた右手で弾き返し左拳で殴りかかる。


男は秋久の左拳を潜って懐に潜り込む。


秋久は咄嗟に下がろうとしたがすでに手遅れだった。


秋久の体が宙を舞い、地面にぶつかる前に辛うじて受け身を取った。


気が付けば天井を見上げていた。

すぐに視線を天井から男へ向ける。


男はすでに追い打ちを掛けようとレイピアを構えていたところだった。

咄嗟に横に転がり突きを躱す。レイピアは地面に接触する寸前で止まった。

男は追撃を止めて窓に映る自身の姿を見つめながら話す。

「お前の異質な能力はどうやらほんの数秒でレイピアの突きを真っ向から弾き返す程の力を有してる訳か」

だが、と男は話を変える。

「それは一瞬で出来る訳ではない様だな。最低でも三秒は必要だと見える。追い打ちの直下突きを防がず躱しているのがその証だ。つまり、咄嗟に仕掛けられた時は対応できないということだ」

男は僅か間で秋久のアノミー体質について分析していた。

(俺の体質の特徴を数秒で理解したってのかよ! あいつ、かなり慣れてやがる。俺とは違うな)

秋久は気持ちを整理しようとちょっとした茶化して現在の状況を打破する計画を練るべく頭をフル回転さる。

「おい、あんた。今、俺の異質な能力の仕組みを理解したようなこと言ったよな?」

必死の揺さ振りをあたかもまだ奥の手があります、っと言いたげな態度で告げる。これで男の心理的に揺さ振れればいい。秋久は正直人を平気で殺せる人間とはこれ以上関わりたくない訳である。生首をリアルで見せられて気が動転していて頭が少しハイになっている。

結果、人は生への舵取りを止め死を受け入れる選択や他者への暴力行為を正当化する考えをするようになる。

今、社会の人々必要なのはどんな逆境や苦難に目を背けずそれらを受け入れ乗り越える精神力と行動力が必要なのだ。

今の秋久には資格が、主人公の資格のあるのか? 目の前の現実に呑み込まれ自棄になり愚策を弄すれば待つのは破滅だけだ。

否、秋久が本当に生への舵取り執着を捨てていない。

「なら、俺はあんたの戦法をすべて見切った……すべてだ」

こんなところでこんな奴に、絶対に死ねない。秋久は不敵な笑みを浮かべ続ける。

「次であんたを捕らえる」

男に強気な視線を向ける。

「クク、面白い。俺に返り討ちにされたばかりなのにそんなに高らかに宣言しても良いのか? 死ぬ前に大恥を搔くことになっちまうぜ」

男は余裕の笑みを浮かべる。一方、秋久は尚も不敵な笑みを浮かべ続ける。

「その台詞は俺を仕留めてから言うんだな」

幼少期から経験した様々な出来事が秋久にあらゆる逆行を打ち破る高いポテンシャルを与えた。

故に秋久は窮地に追いやられても冷静さを失わずに的確な現状把握が出来る。

(問題はあのレイピアをどう無力化するかだが、さすがに無傷で……は無理だろう。けど体格なら俺の方が……)

男は秋久より小柄な体型をしている。懐に入られた時にそれに気づいた。

(それだけ分かれば今は十分だ)

今はそれに賭けるだけだ。秋久は男目掛けて駆け出した。

(気を付けなければならないのは投げ技だ。あれは柔術の類か? あの技は相手の力を利用するモノだった。ということは合気道か柔術の類いか?)

秋久は再び男に右拳で殴りかかる。


男は前回と違い一切動かない。


男は秋久のパンチが当たる寸前に上から拳の甲を叩き下から手首を真上に捻る。二か所から同時に力を掛けられた拳は真上に向けられた。男はそのまま拳を押さえつける。


秋久は咄嗟に下がろうとする。


男は掴んだ拳を素早く秋久の体の外側に捻る。


手首の関節から肩の関節まで極められたので秋久はなされるがまま倒れ込んだ。


ここまでの流れもやはり数秒だ。

男は秋久が倒れても拳を放さない。

秋久は男に背を向けた状態で倒れ込む。しかし、秋久は焦った姿を見せない。

男が秋久の頸椎目掛けてレイピアを構える。

そこで秋久はすかさず男の手首を掴み立ち上がる勢いを味方に着け一機に引っ張った。

男は引っ張られる。秋久は男の手を更に抱え込む様にして捻る。男は先程とは真逆の位置に引っ張られた。

「むっ、くそ」

男が立ち上がろうとするのを身体ごと巻き込んで自身の下へ引きずり込んで馬乗りになり入り手を足で押さえ頭を低くした。

「この体格差でマウント取られるってのはどういうことか武術をかじってるあんたならわかるだろ? もしまだ続けるんなら俺はあんたを全力で叩きのめす!」

秋久の強く握り締めた拳は何か半透明な膜のようなモノにゆっくりと覆われていく。

「俺が能力を過信していたら今頃殺されていたな。あんたが俺の能力を警戒して完全に背後を取ってからそのレイピアで止めを刺しに来ると踏んでいた」

もともとレイピアは突きを主とした剣であり、斬ると用途には向いていない。しかし、極度に研ぎ澄まされた鋭利な刀身は使用者の技量により計り知れない殺傷力を生み出す。

それに、っと秋久は押さえつけたまま続けて言う。

「あんたは刀身を極力傷つけたくないはずだ。だからこそ、一回目の時は突きを出したのに二回目は躊躇った。それこそがあんたの敗因だ……ここ一番の勝負で降りた自分自身の弱さが招いた結果だ!」

凄む秋久に男は観念のしたのか完全に抵抗を止めた。

「ふっ、安く見られたものだ。まあ、俺たちは世間から蔑まれる類いだがなぁ、そんな俺にだって誇りがある。完全敗北したんだどこに言い訳を挟む要素がある?」

男は何かが吹っ切れたようにスッキリした表情を浮かべている。

「お前らは一体何者だ? そこの女と同じ組織なんだろ?」

秋久は俺らという言葉で思い出したように男に問いかける。

「俺が仲間を売るような真似をすると思うか?」

男はその問い掛け事態を愚問と言わんばかりに嘲笑う。

「だったら言いたくなるまでぶん殴る」

命を狙われた秋久にしては、『素性を明かしません』は問屋が卸せない。

「はっははは、良いだろう、お前のその迷いの無い目が気に入った。話してやる」

男は高らかに笑いそして自身が持って来た。バケツの方へ視線を向けた。

「本当に下らないモノだな人生という奴は。大学を卒業して十三年、時にはサラリーマンとして生き、時には水商売に身を落とした」

つい先ほどまで殺そうと男とは思えないほど悲しみの籠もった眼差しで微かに見える星を見つめる。秋久はその姿にどこか哀愁を感じてついさっきまで敵だということ忘れてしまった。

秋久は警戒しながらゆっくりと立ち上がった。

男は驚きより呆れたような顔をしながらゆっくりと立ち上がる。

「全く、お前という奴は。先輩として一つ忠告しておくがそんなことじゃあ、これから生き残れないぞ」

秋久はそれでも男がそんなことするタマではないことは察しがついた。

「あんたは少なくとも自分の認めた相手に不意打ちをするような姑息な人間じゃない。むしろ仲間思いの良い奴じゃねぇのか。あれは仲間の目の前で敵を討つために見せつけたんだろ? その後の明確な殺意は俺に対しての怒りだろ?」

秋久の言葉に男は不覚にも涙が出て来た。

「バッキャロウめ! 分かった風な口聞きやがって」

図星だったのだろう男は必死に涙を拭おうとするが一向に勢いが収まらない。

「仲間の敵討ちに来たのに、逆にその敵に惚れ込むなんて、こんなことなら行かなきゃ良かったぜ。この世は異常なまでに無常だ」

秋久は男の言葉に深い悲しみを感じた。

「『惚れ込む』って悪いけど俺はそっち方面は専門外だよ」

秋久は正直に距離を離す。

「バッキャロウが、惚れ込むはそっち方面じゃねぇ! 俺が言いたいのは相手を気に入ったって意味だ。最近のガキはどうしてこうも変な意味でしか捉えられねぇんだ?」

男はつい会話に熱が入る。

「言いたいことは分かるけど、そう言う世界は知らねぇし、知りたくも無いんだよ。命を狙われてた訳だし」

正直、気に入られるのは悪い気はしない。けど、どうしても人を殺す人間とは距離を置きたい。だが、同時に身を落とすしかなかった人を冷淡にあしらうつもりもない。これまでいろんな年層の人と付き合って来た為かある程度相手の人間性は分かる。

(この人の人生に口出し出来る程聖人気取ってねぇし、俺も人のこと言えねぇからな)

秋久は男の気持ちを察し私情を語るのを止め話に耳を傾けた。

冷徹な仮面の下は情に熱い一人の男だった。

殺そうとしといて何言ってんだこいつ?

私が秋久ならそう思ってますね。彼にも身を落とした経緯が有るのでしょう。

もしも大切な人がある人が切っ掛けで亡くなってもきれい事を言い続けられるでしょうか?

秋久の最後の行動は彼の人生観で推し量った故の行動です。

長々となってしまいました。次回は随時上げて行きます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ