センサー
――早朝五時。
「うぅん……」
オフィスのソファで目を覚ました智恵は、意識がはっきりしないまま、ゆっくりと頭を起こした。
薄暗いオフィスは閑散としていた。例のプロジェクトの追い込みで徹夜した智恵以外には、誰もいないように見えた。
突然、智恵は側頭部に衝撃を受けた。
そのまま、なすすべもなく、ソファのシートに頭を抑えつけられる。
「動くな」
低い男の声。
不法侵入者だろうか。智恵は恐怖を感じた。
しかし、身をよじって男の方を振り向くと、なんと自分の部下の新入社員だったので、智恵はかっとなった。
「あなた、何のつもりよ!」
すると、彼はうろたえた。
「ああ、動かないで下さいよ」
その次の瞬間だった。
フロア中に、火災報知機のようなけたたましい警報音が鳴り響いた。
「な、なにこれ!!」
智恵は慌てふためいた。何が起こったのかわからなかった。
部下の男は大きなため息をついた。
「天井に動体センサーがついてるんで、動くと警備会社が飛んできちゃうんですよ」
読んでいただき、ありがとうございます。
ふと旧作を思いだして、掲載してみました。
お楽しみいただけましたら幸いです。