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二話 放課後の寄り道

 放課後、多くの生徒が部活動に向かう時間帯に、私は帰り道を一人歩いていた。

 他の下校中の生徒と出くわさないよう気を配りつつ、真っ直ぐ帰らずにある場所に向かっている。


(ほんと、あの学校は苦手です)


 私の通っている学校は、公立で偏差値は平均より上の、中高一貫校の高等部。私は高校から入った外部組だ。


 そんな、よくあるこの学校には一つ問題がある。

 女子達の、裏での派閥(仲良しグループのことだ)争いが非常に……酷いのだ。様々な事で互いを貶め合い、上辺だけの友情を築く。一度グループから見放されたりしたら、シカト、いたずら、陰口の格好の的になる。

 勿論普通の子達だって半分近くいる。しかし、学校を牛耳っているのはいじめっ子達。上級生は知らないが。

 だから私は絶対に目立たないよう係・委員会に立候補せず、授業でも手を上げず、休み時間は常に読書をするか、中学の友人とメールしている。他の外部組の生徒も似たような物だ。


 まあそのお陰で派閥争いには巻き込まれていないが、ぼっちだ。

 そういえば、この間はクラスの女子がこれ見よがしに陰口を言っていたな……。


「はぁ……」


 嫌なことを思い出してしまった、と重い溜息を吐くと、何時の間にか目的地についていることに気付いた。


 《三階 漫画喫茶》


 私は、見慣れた看板を見上げた。高校に入ってからというもの、放課後は基本ここで暇を潰している。一時間四百円で、お金にさして困っていない母は、毎日行っても咎めたりはしない。テスト期間は例外だが。

 私はいつもと同じく建物に入ると、一階に停まっていたエレベーターに乗り込んで、三の数字が記されたボタンを押した。エレベーターが止まるとすぐに見慣れたドアが視界に入り、馴染み深い店内へと入っていった。



 私は、幅広いジャンルの漫画を読み漁っている。近頃はダークファンタジーブームだろうか。

 素早く目当ての本棚の前に立ち、目当ての巻を取ると、一番近くて周りに人が少ない席を選んだ。さて、今日も暇潰しだ。


 漫画を読み始め三十分程立って次の巻を取りに行こうと立ち上がった時、見知った人が近くの席に腰掛けた。


「あ、フードさん。こんにちは」


 フードさんことこの目の前に居る長身の彼は、私と同じ漫画喫茶の常連客。フードを深く被りマスクをしている、というかなり怪しい風貌だが、今ではそれもすっかり慣れた。

 漫画喫茶に通い始めた頃知り合った人で、高校に入ってから初めてできた信頼できる友人だ。学校外の人間との方が仲がいいのも問題だが、学校に馴染めないから仕方ない。


「やあ、汐梨。今日はいつもより少し早かったな」

「はい、今日はHRが早く終わったので」


 そんなところにも気付くなんて、観察眼凄いな~……と感心しつつ、今日のHRの光景を思い出した。担任が出張だったので、副担任がさっさと帰してくれたのだ。ありがたい。


「そうか……ああ、そういえば、今日は……」


 フードさんは何か言いかけたが、私の後方に視線を向けて言葉を止める。どうしたんだろうと疑問に思い、後ろを確認しようとした。だが、振り向く前に可愛らしいアニメ声が後方から聞こえた。


「しーおり~! 久しぶりっ!」


 ぽんと肩を叩かれたので振り向くと、そこには美少女の顔。私は立ち上がり、驚きのあまり少女を凝視した。背中まである栗色の髪にぱっちりした二重の目で、私の身長が平均より高く尚且つ彼女の背が低いせいか、上目遣いにこちらを見ている。


「沙雪⁉ 何でここに?」


 中学時代、学校一モテることで有名だった親友がそこに居た。

 小原沙雪。下手なアイドルよりも美人で、家事全般も得意。誰からも好かれている少女だ。出会ったばかりの頃は、ぎこちない笑顔とどこか影のある言動が目に付くな、という印象を持っていたが、何時の間にか明るくなったものだ。孤児院育ちだと聞いて、あのぎこちなさは過去に何かあったのだろうとだけ考えることにしている。


「いや~、実は、汐梨がいつもここにいるらしいって友達に聞いたんだ! だから来てみたら、大当たり!」


 嬉しそうに満面の笑みを浮かべながら、彼女は説明してくれた。偽りの無い笑顔だ。

 この笑顔を曇らせる様な過去に関する質問など、無意味だろう。


「ねえねえ、今からファミレス行かない? デザート食べながら何か話そうよ! オススメのがあるんだ~」


 久しぶりに会う彼女は、少しも変わっていない。久々とは言っても会っていないのは一ヶ月程度だが、数年ぶりに見るような気にもなる懐かしい笑顔に、私は頷く他なかった。


「あ、フードさん。そういうことなのでさよな……」


 振り向いて言ったが、彼が先程までいた筈の場所には誰も居なくて、言葉を止める。


「汐梨? どうしたの?」

「あ、いえ、なんでも無いです! 行きましょうか」


 そう沙雪を促すと、彼女は首を傾げつつも店を出て、私もそれに続いた。






 ファミレスでは、沙雪オススメのフルーツパフェを美味しく頂いた。因みに、沙雪はチョコケーキでご満悦。


「ありがとうございます、沙雪。すごく美味しかったです」

「でしょでしょ? ここのフルーツパフェ、他のとこのパフェとは一味違うんだよね! ……ん? ねえ、あれって……」


 にこっ、と笑って言う沙雪だが、ふと笑みを消してどこかを見つめた。視線の先を追おうとするも、何処を見ているのかわからない。


「どうしたんですか?」

「いや、あれって汐梨の学校の子じゃない? ほら、四人くらい並んで歩いてる。なーんかヤな感じする子達」


 沙雪の指差す先を見てみると、黒が基調のブレザーに身を包んだ女子高生四人が道路を挟んで前方を歩いていた。リボンや縫い目、スカートに入れられたラインなどは女子の制服には比較的珍しい青色で、私の学校と同じ制服だと示していた。青は知性か何かの象徴だとか、そうじゃないとかで青になったらしい。


 だが、今は制服については置いておこう。


(不味いですね。あれって、一番強いグループの三人と、最近シカトされてる娘……)


 今までこういったことに関わら無いようにしてきた。だが、人気の無い道へと入って行く彼女達を目の当たりにして、そしてこの後あの少女がどうなるのかを想像して、今すぐ走り出したい衝動に駆られた。


「ごめんなさい、沙雪。先に帰っていてもらえますか?」


 早口に言って、私は即座に駆け出した。


「え……ちょ、待っ……汐梨⁉」


 案の定戸惑いを隠せない声音の沙雪に申し訳ないとどこかで思いつつ、思考の殆どはあの四人組の事で一杯だった。

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