第13話 公爵視点
小規模な晩餐会というものは、実に人をよく映す。
格式に守られすぎず、無礼も許されない。
――人間の素が、最も浮かび上がる場だ。
私は、会場全体を見渡せる位置で静かに立っていた。
視線の先にいるのは、我が息子スティーブ。
そして――
リリベット嬢。
(……今夜も、変わらんな)
控えめな装い。
必要最低限の言葉。
人混みから自然に距離を取る立ち位置。
社交が得意ではない、堅物な男爵家の令嬢。
それが、彼女に与えられている表の顔だ。
(だが、それだけではない)
私は、無意識のうちにグラスを回しワインを口にした後、リリベット嬢に視線を戻した。
どれほど地味に振る舞っても、どれほど目立たぬよう努めても――育ちというものは、消えない。
姿勢、沈黙の使い方、人を見る目。
(男爵家の令嬢にしては、完成されすぎている)
だが、それを指摘する者はいない。
彼女は、そういう令嬢として完璧に振る舞っている。
だからこそ相手として選んだ。
スティーブは、以前のような軽薄さを封じている。
笑みで誤魔化さない。
言葉で場を掌握しようとしない。
拒絶を拒絶として受け止め、なお向き合おうとしている。
(……遅いが、無意味ではない)
リリベット嬢は、息子を試してはいない。
だが――信用に値するかどうかは、静かに見定めている。
それは、守られる側の令嬢の視線ではない。
(この娘は、甘くない)
スティーブが、言葉を選びながら話す。
弁解も、誓いもない。
ただ、真正面から受け止めている。
最低条件は、満たしたようだ。
だが、それだけでは足りない。
この試験は、口説けるかどうかを見るものではない。
・拒絶された時
・相手の背景を知らないまま
・立場の重さに気づかぬまま
それでも、誠実でいられるか。
それを見るためのものだ。
私は、静かに結論を先送りにした。
この晩餐会で、答えは出ない。
出てしまっては、意味がない。
次は、
肩書きも噂も役に立たない場所。
逃げ場のない距離で、彼が彼女をどう扱うか。
それを見届けるまで、私は何も決めない。
時間には限りがある。
そして――
その“期限”が来た時、すべては明らかになる。
今は、まだ知らせない。




