1/3
プロローグ
僕──佐々木千尋は、校舎裏に呼び出されていた。
(嫌な予感がする……。)
春先のはずなのに、背中に嫌な汗がにじむ。
喉が渇いて、唾を飲み込む音だけがやけに大きく聞こえた。。
目の前に立っているのは、肩に届かないくらいの黒髪の女の子。
小さい頃から毎日見てきた、見慣れすぎた顔。
──幼馴染で、人生で初めての彼女。
超絶の美少女(私見)で、とっても大好き。当たり前だ。
「急に呼び出して、どうした?」
できるだけ平然を装って言ったつもりだった。
実際は声が裏返りかけていたし、たぶん顔にも出ていた。
彼女は俯いたまま、指先をもじもじと絡めている。
表情は暗い。
それだけで、胸の奥がざわざわと嫌な音を立てた。
しばらくの沈黙のあと、彼女は意を決したように顔を上げて──
「千尋くん……別れよ」
一瞬、言葉の意味が理解できなかった。
「私、他に好きな人ができたの」
テレビや本で何百回も聞き飽きた台詞。
ありきたりで、陳腐で、どうでもいいはずの言葉。
それなのに──
その一言で、僕の世界は、音を立てて崩れていった──




