異世界ミリタリー物、美少女IDは微笑まない
俺は松永康夫、33歳のおっさんだ。
日本時代、友人がネット小説を投稿していた。
『松永、助けて、軍事マニアに絡まれた!』
『ほっときゃいーだろ?削除って出来るのだろう?ブラックリストとか』
『それが・・・削除はしないと決めているから』
友人は、IF戦記ものを書いていた。架空の現代に似た世界でひょんなことから主人公が仲間を集めて戦う話だ。
絡んでくる奴は、何と、ID名は〇の谷の〇〇シカだ。良いのか?
ユ〇様はどこいった。姫のおもりをしてくれないのか?
細かく兵器にツッコミを入れていた。
それに続くように、他の読者が、あーでもない。こーでもない状態だ。
アンチがつくってことは人気作だ。不思議だがネット小説は人気作ほどアンチがつくと知った28歳の春。
『ヨシ、任せろ。俺が返信を書いてやる』
『え、暴言はダメだよ』
『大丈夫だって』
内容は、戦力描写がアンバランスとか、この銃は欠陥がある。使いにくいとかそんな記述だ。
お前、使ったことあるのか?と思いながら書いた。
>ええ、10人相手は草!作者様は戦力の考察が不十分ですね。
敵が10人出てくる描写だ。
だから、
=それは軍隊の最小単位は組(2,3人)で分隊は10人、敵は10人でも甘い描写だと恥じ入っています。敵は軍隊です。集団行動が基本です。
また、
>64式の選択は草、皿形座金というのがあって、そこが壊れたら、ネジを緩めて修理をしなければならないよ。作者様はドンパチの最中に、銃を修理するのかよ?
=それは主人公に仲間がいます。通常、銃に不具合が生じたら、仲間に守られながら、後退します。軍隊は集団行動なのです。
とか、丁寧に返信を書いてあげたら・・・・
『大変だ。メールが沢山来ている!』
『何だって・・・』
アニメ美少女の名だが・・・こいつ男だろうな。
これ絶対AI検索やwikiで得た知識だな。
その知識を元にして、質問が来ていた。妙にズレている質問が山のようにだ。
お前はすぐに辞めた自衛官だろうとかそんな罵倒もあった。
これは奴の自己紹介かもしれない。
そうか、軍事マニアは知識マウントを取りたいのか。
「ごめん・・相手するのが面倒くさくなった」
「もう、ブラックリストにするよ」
「すまない」
となった。
64式7.62ミリ小銃・・・・俺の現役時代、まだ、倉庫にはあったな。海上と航空で未だに使われている。
☆☆☆異世界・冒険者ギルド
今、過去を思い出したのは、目の前にいる。日本人に決闘を求められたからだ。
俺はこの世界の衣服に弾帯、サスペンダーをつけている。鉄帽はつけていない。
隣には、同じ装備に鉄帽を斜めに被ったエスダがいる。金髪碧眼の美少女だ。俺の相棒でもある。
相手は、10代、これでもかと自衛隊の装備を身につけているが、防弾チョッキはつけていない。重たいからな。しかし、髪が長い。やっぱり素人感が拭いきれていない。
「僕を何だと思っているの!折角、64式はやめておけとアドバイスをしてあげたのに!」
「いや、そのアドバイスは承ったよ。しかし、エスダにちょっかいをかけるのはやめてくれないか?」
エスダ、元奴隷だ。しかし、今は相棒でもある。15歳、人目を引く容姿で体は細い。奴がしつこく口説こうとしているのか。いろいろ教えてあげるとか饒舌に話しかけてきて、エスダは俺の背に隠れてしまった。
「だから・・・どうやって出会ったんだよ。ミリタリー好きそうだから教えてあげようとしたんんだ」
エスダも弾帯、サスペンダーをつけているからそう思ったのか。
「それは言えないな」
「奴隷?」
「お前な。失礼が服を着て歩いていると自覚しろよ」
主人をぶっ殺して手に入れたとは言えない。
「テンプレでしょう!」
何だ。テンプレ?異世界ミリタリー物は美少女が相棒になる傾向が強いのか?
それで決闘にまでなった。口には出さないが、エスダが欲しいらしい。
「マツナガ、やめる・・意味ない」
「まあ、そうだけどよ」
相手は乗り気だ。ギルマスを証人に、訓練場で打ち合うことにした。
10メートル離れて、ギルマスの号令で打ち合う。
俺は防弾チョッキを着るようにエスダに言われた。
「どうしても、やるなら、防弾チョッキ着る・・鉄兜被る・・」
「分かったよ。まるで女房みたいだな」
「・・・・無自覚嫌い」
「はあ、64式はクロックタイムが長いし、重量が重い。馬鹿め。僕の20式に・・・え、卑怯だよ!」
「だから、なんで・・・」
俺は20式を手にしている。やはり、近接戦闘なら、20式だ。
民間軍事会社時代、俺も驚いた。銃を2丁持っている兵がいた。
私物の銃を持ち込んで、用途に分けて使っている。
それが合理的でもあるが・・・自衛隊や国営の軍隊では考えられないだろう。
ギルマスが説明し、俺たちは向き合った。
しかし、奴の持ち方は不格好だ。
「おい、その持ち方は・・・お前、サバゲもしたことないだろう」
「・・・大佐は言っていた。銃は当たればいいんだよ!」
ブツブツ聞き取れない。何だ。〇〇大佐って、まさか。
「お前、大佐ってアニメのキャラクターか?・・・もしかして、風の〇のナウ〇〇か?」
「・・・何故、知っているのだよ!」
決闘をやめたいが、エルダはやれない。もう、見物人たちもいる。
「始め!」
バン!バン!
俺は2発撃った。相手の銃声は聞こえなかった。
「ウウ、グ・・・ハア、ハア、ポーション・・・は?」
「ないよ・・お前はナウ〇〇だったのか?古いアニメだからおっさんかと思ったぜ」
「・・・しつこいよ・・」
「じゃあ、名を教えろよ。墓作ってやる」
「す・・・」
奴はわずかに口をゆがめて息絶えた。
墓には〇〇シカと日本語で刻んでやろう。
ギリシャ神話で出てくる姫だっけ。
この世界では人の命は綿よりも軽い。
これだから、美少女ID名は嫌いだ。
最後までお読み頂き有難うございました。