第四階層:北アフリカ・香草の廃都 「静謐なるモロッコの迷宮」
【厨界・第四階層:スパイスのスーク(市場)】
風は砂を巻き、乾いた香草の香りが漂う。
朽ちかけたアーチとタイルが連なる古都。その一角、廃墟と化したスーク(市場)では今なお、誰かが料理をしている。
スパイス棚が迷路のように連なり、進めば進むほど方向感覚が狂っていく。
ヒカリ(くしゃみ)
「……っは、くしゅん! うわ、シナモンとクミンが混ざった……目が……」
リンミン(頭にターバン)
「香りの暴力だよココ!? なんで歩いてるだけで全身スパイスコーティングされるの!?」
ライスバーグ(静かにスパイスを指先で擦る)
「これは……香りによる誘導。スパイスが“道しるべ”になっている。つまり――罠だ」
すると、空気がふと張り詰める。
視界の向こうに、黒いチャドルをまとった少女が立っていた。足音ひとつ立てず、ただ、じっと。
【登場:アミーナ・ハール(香りの暗殺者)】
シノブ(警戒しながら)
「……名前、言わない。言葉を持たない子か」
ヒカリ(穏やかに)
「いや、違う。言葉じゃなく、“香り”で語ってる」
アミーナは、ゆっくりと腰のポーチからひとつまみのスパイスを取り出し、
ヒカリたちの前にふわりと撒いた。
その瞬間、――全員の頭に**“記憶の匂い”**がよみがえる。
【スパイス記憶バトル:香りだけで過去を語れ】
試練ルール:
言葉は禁止。
自ら調合したスパイスの香りと、それを使った料理の匂いだけで、相手の心を動かせ。
相手に「あなたの過去が見えた」と言わせた者が勝者。
リンミン(戦慄)
「なにそれ怖い……料理でエスパーする階なの……?」
ライスバーグ(静かにうなずく)
「違う、“料理で記憶を読み取らせる”階だ。過去を、料理で伝える……そんなことができるのか」
【ヒカリ vs アミーナ:香りの記憶戦】
アミーナのスパイス:
《ローズマリー、カルダモン、ドライレモン》
→ 仕上げたのは「ベルベル風クスクスと白檀の風煮」。
香りはヒカリの脳裏に“砂嵐の中の母”という像を浮かび上がらせる。
ヒカリ(涙ぐむ)
「……あれは、捨てられたときに感じた風の匂い……“孤独”の匂い、か」
ヒカリの返答スパイス:
《白味噌、クローブ、山椒、干し杏》
→ 仕上げたのは「味噌と柑橘のタジン風蒸し」。
東洋とアフリカの融合。記憶は“甘い誓いと焦がれる夜”を呼び起こす。
アミーナ(瞳を揺らし、小さくうなずく)
審査神(香りを嗅ぎながら)
「……言葉がなくても、心は喋っていた……これは――引き分けだ」
【試練突破・アミーナの同行】
アミーナは、沈黙のままヒカリの手をそっと取り、
スパイスの小瓶を託す。
その蓋には、**「梅」**の文字。
【秘伝・第三節】
『香りは言葉の代わりになり、過去を映す鏡となる。心を写す調味料、それが“香”である』
リンミン
「この調子だと……次、もっとやばくない?」
シノブ(静かに)
「次は……料理というより“生命の極限”。そう、“保存”の階層よ」




