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魔族IT革命  作者: 白樹春來
龍仙谷編
56/68

56話 ドラゴンインストール

 アイが作成したコマンドが実行される。


『コマンドを実行します』


 画面には「DragonApp.ws1スクリプト」が起動するログが流れ始めた。


 Executing Dragon.ws1 script... -進行中


 次の瞬間、システムは一般ユーザーから管理者権限で実行するプロセスに移行した。画面には昇格を求める確認ログが次々と表示される。


 [LOG] Requesting elevated privileges... -進行中

 [LOG] User Account Control (UAC) triggered. -確認中

 [INPUT REQUIRED] Enter Administrator Password: ********

 [LOG] Authenticating credentials... -進行中

 [LOG] Password accepted. Authentication successful. -成功

 [LOG] Administrator privileges temporarily granted. -成功


『Install all Dragon modules? (A)ll/(Y)es/(N)o | すべてにはい、はい、いいえ:』


 アイが自動で「A」を入力し、システムが即座に反応する。


 User input detected: 'A' - Full module installation initiated.


 直後、インストールが開始され、ログは流れ続ける。


 [LOG] All modules selected. Full installation initiated.

 Installing Dragon modules...

 [LOG] Retrieving module files from Dragon repository...

 [LOG] Downloading core modules...

 [LOG] Core modules installed successfully.

 [LOG] Downloading additional modules...

 [LOG] Additional modules installed successfully.

 [LOG] Finalizing installation...

 Installation complete. All Dragon modules are now installed.

 [LOG] Dragon installation successfully completed.


 ウィルの視界にインストール完了の通知が映り、アプリケーションが自動で起動する。画面には、APIキーを入力するためのシンプルな項目だけが表示されていた。


(メアリ、リューカを助けるために力を貸してくれ)と心の中で呟き、ウィルはAPIキーを入力する。


 すぐに認証が始まり、ログが再び流れ出す。


 [LOG] Retrieving API key...

 [LOG] API key set: DRG-4CC355-K3Y-F0RC3BYM4RY

 [LOG] Connecting to Moon Server...

 [LOG] Connection established to Moon Server.

 [SYSTEM] Full access to Moon resources granted.

 [LOG] Moon resources: [Energy] 100%, [Power] 100%, [DragonForce] 100%

 [LOG] Synchronizing with Moon Server...

 [LOG] Sync complete. Server status: Success

 [SYSTEM] Dragon system is fully operational.

 [LOG] DragonForce system now at full capacity. All resources are unlocked.


 天空から巨大な光の奔流が降り注いだ。


 その光はウィルに直撃し、爆風が周囲に広がる。勇者一行はその衝撃により後方へ吹き飛ばされる中、ウィルの体は変化を始めていた。降り注いだエネルギーは単なる力ではなく、生きているかのように彼の体を包み込んでいく。


 彼の腰から赤く輝くドラゴンのが生え出した。それはうねりながら空気を裂き、鋭い鱗と金属の光沢が交互に現れる。尾は生命を宿したかのように自在に動き、視界を支配するような威圧感を生み出していた。


 続いて、背中が赤く輝き始めた。鈍い音とともに皮膚を突き破るようにして巨大な翼が広がる。翼は真朱しんしゅに染まり、表面は鱗と金属が融合した独特の質感を持っていた。内側を走る血管状のラインが赤く発光し、光の粒子が煌めく。翼が動くたびに周囲の空気が振動し、圧倒的な力を感じさせる。


 さらに、顔の輪郭には人間らしさを残しつつも、頬や首元に赤く発光する回路が浮かび上がる。瞳は鮮やかな赤い光を宿し、彼の手にはドラゴンの皮膚が装甲のように覆いかぶさり、胸元にはエネルギーの核が脈動していた。変身は瞬く間に完了し、ウィルの姿は人間と龍が融合したかのような異形と化していた。


 突如として大地が激しく震え、火山が噴火を始めた。


 黒い煙と溶岩の間から、巨大なドラゴンが飛び出してきた。その体は機械と生物が融合した異形の姿で、溶岩のようなエネルギーが脈打っていた。ドラゴンは大地の力を背負うかのように空を切り裂き、ウィルの元へ向かっていく。


 ウィルはその光景を冷静に見つめ、赤い月光がドラゴンの体を包み込むように照らし、その光はウィルと共鳴するかのように一層輝きを増していった。ドラゴンは巨大な翼を広げ、火山の噴煙を背にしながら、ゆっくりとウィルの前に降り立った。そして、まるで忠誠を誓うかのように、その巨大な頭をウィルの前に下げた。


 この瞬間、世界に存在しなかった新たな存在が誕生した。


 赤く燃える月が天空で輝きを強め、ウィルとドラゴンは共に世界を超越する力を手に入れたのだ。


 ウィルの視界に「Dragon API」の概要が表示され、新たな力に酔いしれた彼は、楽しげに説明書を読み進めると、手を高く振り上げ、黒煙を操り始めた。


「無線の竜、有線の龍か……面白そうだな」


 彼の手の動きに合わせて、黒煙は上空で渦を巻くように形成されていく。


 黒煙の範囲内であれば、外部との通信を制限できるのか。相手の魔術の仕様は不明だが、転移に送信先との通信が必要であれば防げるかもしれない。逃げられるのは癪だからな……AllowList(許可リスト)にはお月様とララの通信だけ許可して、他の通信はすべて遮断しよう。


 ウィルは微笑みながら、設定をいじり始める。


 速度チェックも忘れずに……。


「アイ、無線と有線の通信速度を確認してくれ」


『無線が10DBドラゴンバイト、有線が100DBドラゴンバイトだね』


 ウィルはバイト単位表をスクリーンに表示させ、ニヤリと笑みを浮かべた。


「ヨタバイト、オメガバイト、ゼータバイト、ドラゴンバイト……前世では考えられない桁外れの単位バイトだな」


 彼はこの新たな力の全貌をまだ完全には理解していないが、それが計り知れないものであることは明白だった。そして、ウィルは意識を集中し、目の前にいる巨大なドラゴン――「ルゥー」に向かって静かに命じた。


「ルゥー、リューカを守れ」


 その言葉が発せられると同時に、ドラゴンは鋭い眼差しでウィルの意図を理解し、すぐさまリューカのもとへと向かって飛び立った。巨大な翼を広げて空を切り裂き、炎と黒煙の中を悠然と進むその姿は、まるで守護者そのものだった。


 リューカの周りに立ちはだかり、ドラゴンはその体を使って彼女を包み込むように守護の壁を築き上げた。


 リューカはその光景に目を奪われ、胸が高鳴っていた。


「お父さん、超かっこいい……」


 彼女のその言葉は、ウィルの心に温かい喜びをもたらした。普段は照れ隠しで素直になれない彼女が、まっすぐに感動を伝えた瞬間だった。ウィルはそんな彼女の思いに、心から満たされていた。


 一方、勇者一行は、ただただ恐怖に凍りついていた。


 目の前で繰り広げられるこの異次元の力の前に、彼らは何もできず、ただ圧倒されていたのだ。ウィルの変貌はもはや常識の範疇を超えており、勇者たちはその圧倒的な存在感に心が折れそうになっていた。


「お前……一体、何者なんだ……?」


 勇者が震える声で問いかける。だが、その声には自信も威厳もなく、彼はただ、目の前のウィルの姿に圧倒され、恐怖に包まれていた。


 ウィルはその言葉に対して、冷徹な視線を送り、しばらく勇者を見つめた。


 そして、低く、冷たい声で彼らに死の宣告を下した。


 アイの声と共に、2人の声が静かに響く。


『「機械生命体ウィル。勇者、聖女、賢者――お前たちを世界の敵としてターミネートする」』


 その無情な宣告は、まるで死神の刃が彼らの心臓を貫くかのように鋭く、冷たく響き渡った。勇者一行はその言葉に息を呑み、体が凍りつくのを感じた。


 恐怖と絶望が彼らの心を押しつぶし、逃げることも戦うことも許されない運命に囚われていた。


 目の前に立つウィルは、もはや人型の魔族ではなかった。機械生命体とドラゴンが融合した、圧倒的な存在――まさに、彼らの運命を支配する死神そのものだった。


 彼の赤い瞳が冷たく輝くたび、勇者たちの希望は次第に消え去り、ただ恐怖だけが彼らを包み込んでいた。

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