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魔族IT革命  作者: 白樹春來
龍仙谷編
52/68

52話 リューカ救出作戦

 ウィルは空高く飛行しながら、捕らえられたリューカのもとへと急いでいた。


 その間も、頭の中ではリューカの端末を利用した作戦の段取りが進められている。


「アイ、リューカの端末から強制的にビデオ通話を起動するぞ。バッテリーは持ちそうか?」


『ええ、問題ないわ。作戦通りにいくわよ』


 アイの手配で、リューカの端末から強制的にビデオ通話が開始された。画面にリューカの顔が映し出され、彼女は驚きに目を見開いている。その表情には、地獄の底にいるかのような絶望の色が見て取れた。


 ウィルの顔が突然現れたことに彼女は驚き、声をあげようとするが、アイが音声機能をOFFにしているため声は出せない。ただ、その表情だけが変化していく。


 画面には周囲の様子も映り、敵が少し離れたところにいることが確認できた。ウィルはリューカに語りかける。


「お待たせ、リューカ」


 リューカはウィルの顔を見て、涙を浮かべながら微笑んだ。


「敵にばれるから静かにしててね。何か話したいときはスタンプで返事してくれ」


 ウィルはリューカを安心させるように、落ち着いた声で優しく語りかけた。その目には、リューカを必ず救い出すという強い決意が満ち溢れている。


「これからお父さんがリューカを助けるから。絶対に助けるから」


 リューカは涙を流しながら、小刻みに頷いた。その姿に、ウィルはさらに力を込めて続ける。


「リューカ、これからお父さんがどうやって助けるか、ちゃんと話すよ。まず、お父さんが外部バッテリーを持っていくから、それをデバイスに挿して、バッテリー切れを防ぐ」


 ウィルは一度言葉を切り、優しい目でリューカを見つめながら続けた。


「それから、魔京都にいるララお姉さんに頼んで、テレポートで安全な場所に連れて行ってもらう。その場でじっとしてればいいから、全部任せて」


 ウィルの表情には、リューカへの深い愛情と優しさが溢れていた。彼は父として振る舞い、必死にリューカを安心させ、彼女に勇気を与えようと、言葉を慎重に選び続けた。


「リューカを泣かせた悪い奴らは、お父さんがやっつけるからね」


「これ、決定事項だよ」


 ウィルはリューカが落ち込まないように、少し冗談めかして明るく話し続けた。


「あと、お母さんね。治療して一命を取り留めたから、安心していいよ」


 リューカは嬉しさが込み上げ、それを隠すように両手で口元を押さえて大きく頷いた。


「もうすぐ着くよ。ビデオ通話はそのままにして、お父さんの勇姿を見てて!」


◇◇◇


 賢者が張った探知魔術に、何かが引っかかった。


「敵襲!」


 聖女と勇者はすぐに臨戦態勢に入った。聖女は第3階位魔術、ホーリーバリアを多重展開し、敵の攻撃に備えた。アランは何もない透き通った空を見上げ、正体不明の敵をじっと睨みつけた。


◇◇◇


『ウィル、敵を補足したわ。雷刃を起動して』


 ウィルはアイの指示に従い、雷刃をフルチャージにし、抜刀の構えを取った。アイが精密に計算した結果、敵とリューカを安全に分離させるための一筋のラインがウィルの視界に表示される。距離は1km以内に迫っていた。


『今よ、放って!』


「雷斬!」


 フルチャージされた極限まで圧縮されたエネルギーが、一瞬にして解き放たれた。轟音と共にソニックブームが巻き起こり、大地は一瞬で切り裂かれた。狙いは正確で、敵とリューカを分離することに成功した。


 ウィルはリューカの元へ駆け寄り、彼女に外部バッテリーを装着させ、スライムバリアを多重展開する。そして、言葉もなくリューカを強く抱きしめた。彼女がそこにいる――それだけでウィルは安堵した。


「遅くなってごめんね」


 ウィルの静かな声が、リューカの心にすっと染み込む。


「おとうさん……」


 リューカは、安堵と恐怖が入り混じった涙をこぼした。


 彼女にとって、この時間は果てしなく長く、耐え難いものであった。誰も助けに来ないかもしれない、そんな絶望が彼女を押しつぶしかけていた。しかし、今、ウィルがここにいる。


 リューカはその事実だけで、心が少しずつ解放されていくのを感じた。


「怖かった……怖かったよ……」


 リューカは、今までの不安や恐怖をすべてウィルにぶつけるように、泣きじゃくった。その小さな体が震え、ウィルの胸の中で力なく崩れ落ちる。


 ウィルは彼女を強く抱きしめ、何も言わずにただその場にじっと寄り添っていた。


「アイ、ララに連絡を取ってくれ」


 アイはウィルの指示に従い、ララとの通話を強制的に開始した。


「あれ、えっ、もしもし、ララです」


 ララは驚きながらも、相手がウィルだと気づき、通話を始めた。


「ごめん、ララ、緊急だ。今すぐ、俺の座標にいる女の子を転移させてほしい」


「いいですけど、全く知らない座標は、画像があったとしてもかなりの時間がかかりますよ。転移ポータル装置も設置していないし」


「大丈夫、すぐに始めてくれ」


「わかりました。あと、マッチがすごく怒ってましたよ。絶対に謝罪の連絡をした方がいいです」


 ララは、今の状況を全く理解していない様子で世間話を始めた。


「ありがとう、でも今は時間がないんだ。マッチにはごめんと言っておいて」


 ウィルはそう言って通話を切った。


 アイが送った座標と画像を元に、ララは少女の転移を実行するプログラムを起動した。ララは首をかしげながらも、言われた通り作業を進めていった。


 ウィルはリューカが泣き止むまで、彼女を強く抱きしめ続けた。彼女の震えが徐々に静まり、肩の力が抜けていくのを感じると、ウィルはそっとその小さな体を包み込んだまま覚悟を決める。必ず守る――その決意を心に刻み、ウィルは短く一言、静かに告げた。


「行ってきます」


 リューカは、その言葉に反応し、ウィルの顔をじっと見つめた。彼女の胸の奥には、溢れ出す感動と幸福感が広がっていく。絶望の淵にいたはずの彼女は、今、父親の存在の大きさを強く実感していた。守られているという安心感、愛されているという確信が、彼女を温かく包み込んでいく。


 リューカは満面の笑みを浮かべ、心の中に溢れる多幸感に包まれながら、自然と口から言葉がこぼれた。


「いってらっしゃい、お父さん」


◇◇◇


 ウィルと敵は対峙していた。


 互いに戦闘慣れしているため、適度な緊張感を保ちながらも、不自然さのない空気が漂っていた。両者の視線は絡み合い、一触即発の状態が続いていた。


「あなたは何者ですか?」


 勇者がウィルに尋ね、ウィルは冷静に答えた。


「社会人だけど?」


 敵は不思議そうに首をかしげ、笑った。


「私はあなたの運命力が見えるんです。こんな巨大な運命力を持つ魔族が、ただの社会人のはずがありませんよ?」


「嘘かどうか、魔術を使って確かめてみれば?」とウィルは挑発的に言う。


「レヴェレーションで確認しましたが、嘘は言っていません」と後ろに控える賢者が答えた。


 その答えに、敵は首をかしげた後、大笑いし始めた。笑い声は止まらず、腹を抱えるようにしている。


 ウィルは眉をひそめ、問いかけた。


「そんなに面白かったか?」


 すると、敵は笑いながら答える。


「ああ、信じられないくらい面白いね。君が言ってること、先代の昔話レベルにおかしな話だよ」


「先代とは?」ウィルは不思議そうな顔を浮かべる。


 敵は笑いを止め、にやりと笑みを浮かべた。


「ああ~、君を絶望させて悪いんだけど……俺、勇者なんだ」


 勇者はウィルに向かって、自らの正体を明かす。その声は明るく、まるで命を奪うことが当たり前であるかのような口調だった。


 ウィルはわざと驚いたように聞き返す。


「勇者って、人類の希望の戦士ってやつか?」


 勇者は自信たっぷりに頷いた。


「そうだよ。先代の勇者には、よくゲームの話をしてもらったんだよ。懐かしいな……」


 ウィルは首をかしげながら、内心で分析していた。


(先代勇者が転生者で、ゲームが出た時代の知識を持っている……となると、この勇者もその知識を引き継いでいるかもしれない)


 ウィルの警戒心は一気に高まった。


「ごめんね、長話しすぎた。でも、もう話すことはないよ。これから君を殺す」


 勇者は笑顔で、まるで些細なことを告げるかのように、ウィルに宣告した。


 ウィルはその言葉に応えるように黙って構えを取り、アイに指示を出す。


「アイ、回避優先だ。勇者は未知の能力を持っている可能性が高い。『神の恩恵』の解析も頼む」


『分かったわ、ウィル。この戦いが今までで最大の試練になるかも。覚悟して』


 こうして、ウィルと勇者の戦闘が始まった。


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