36話 謎の敵
ウィルは、うさみさんが提供する目標Xの情報をもとに作戦を立てていた。
アイの提案に従い、ポイント85番エリアに地雷を設置することを決め、Xの行動パターンを慎重に観察しながら、通りそうな場所に複数の地雷を仕掛けていく。万が一、爆発しなかった場合に備えて地雷の設置場所はマップにマーキングし、味方が誤って踏むリスクを防ぐための対策も取っていた。
ウィルは、うさみさんからの画面共有を見つめながら、Xの動きを注視していた。
(この相手の反応や防御力、反射神経を測るには、地雷がちょうどいい手始めだな)と冷静に思案しながら、Xが通過するのを待ち続けた。
しばらくすると、予測通りXが85番エリアに姿を現した。ウィルは息を潜め、その瞬間を見守る。
Xが地雷を踏むと、「カチッ」という小さな音が響き、その瞬間地雷が爆発した。辺り一帯が爆発の衝撃で連鎖的に他の地雷も爆発し、煙が充満する。Xは倒したように思えたが、ウィルはその結果に眉をひそめた。Xはバリアを張ることもなく、まるで何事もなかったかのように無傷で立っている。
(こいつ……地雷が直撃しても無傷だと?)
ウィルは瞬時に、Xの強さが尋常ではないと悟った。バリアなしで地雷に耐えられるとは、相当なレベルだ。すぐさまウィルは、アカヤとココにチャットで指示を送る。
「85番エリアまで来い。強敵が出現した」と。
次に、うさみさんに指示を出した。
「うさみさん、選抜したメンバーがこちらに向かうから、それ以外の部隊には撤退指示を頼む」
うさみさんは静かに頷き、全体チャットで迅速に撤退指示を出した。
「これから奇襲を仕掛けるぞ」
ウィルは決意を固め、スライムワイヤーを巧みに操り、Xの周囲3キロメートルをワイヤーで囲み込んだ。
「いくぞ、アイ」
『準備はできているわ』とアイの声がウィルの耳に響く。
ウィルは慎重に、音を立てないようにXに接近し、死角からスライムワイヤーを巻きつけて首を跳ね飛ばそうとした。だがその瞬間、Xはまるで何かに助けられたかのように片手剣を抜き、ワイヤーを切り裂いた。
「アイ、このワイヤーをこんなに簡単に切れるのか?」とウィルは驚き、問いかけた。
『普通なら簡単には切れないわ。でも、Xは切った。彼の能力か、あるいは所持している剣に特別な力があるのかはわからない』とアイは冷静に返答する。
ウィルは目の前に立つXを見据えた。
「あなたが強い魔族ですか?」
ウィルは無表情で答える。
「俺より強いやつなんて、ごまんといるよ」
Xはそれに対して冷静に、「そうですか。では、あなたにはここで死んでもらいます」と言い放つ。
互いの殺気が激しく交錯する。先手を取ったのはウィルだった。彼は再びスライムワイヤーを駆使し、Xの足元を絡め取ろうとした。しかし、Xは両手に持つ剣を振り下ろすことで、足元のワイヤーを難なく切り裂く。
「今だ!」
ウィルは素早く銃を出現させ、引き金を引いた。
Xがワイヤーを処理している隙をついて、弾が発射され、頭に着弾する。しかし、その瞬間、弾は何か透明な膜に阻まれた。ウィルは何事かと驚きつつ、すぐに次の手に移る。
Xの背後に周り、全力で殴り込み、成形炸裂弾を放つ。
殴るフォームに反応して炸裂弾が形成され、膜に直撃したが、超高速の金属の噴流と膜が激しい火花を撒き散らしながら貫通を阻害する。
「アイ、解析は進んでいるか?」
『まだ膜の正体は掴めていないわ。でも、ただのバリアではないみたい』
(この膜、厄介だな……)
Xはウィルのワイヤーを悠然と解き、準備運動を始める余裕すら見せていた。その様子に、ウィルはまるで自分がゲームのモンスター扱いされているような感覚を覚えた。
「もう攻めてこないのですか?」とXが不思議そうに尋ねる。
ウィルは不思議そうに微笑み返す。
(相手のペースに乗るわけにはいかないからな)
そう心で思い、次の動きを慎重に見極めた。
「じゃあ、次は私からいきますね」とXは微笑みながら殺意を込めた動きで攻撃してきた。
その瞬間、最前線基地から放たれた砲撃の音が響き、ウィルの目の前で砲弾がXに直撃する。
同時にウィルも攻める。ウィルはこのタイミングを待っていた。
成形炸裂弾を放ち、砲撃の着弾地点に自分の攻撃を重ねて威力を増幅させる。
砲弾の衝撃と成形炸薬弾の衝撃が重なり威力は倍々に増幅する。
Xの膜は砲弾を完全に弾いたが、ウィルの成形炸裂弾が直撃し、膜にひびを入れることに成功した。
しかし、そのひびは一瞬で修復されてしまう。Xの表情は恐怖などなく、狂気に満ちた笑みを浮かべていた。
「君、面白いね」
(あれだけ完璧なタイミングで攻撃を決めたのに、ひびしか入らないなんて……どれだけ硬いんだ)
ウィルは内心で不満を抱きながらも、相手の強さを認めざるを得なかった。
『でも、無敵ではないことはわかった』とアイが冷静に分析する。
(無敵じゃないなら、突破口はある)とウィルは次の手を考えた。
その時、Xが再び両剣を構え、「神の名のもとに、剣術行使――KERI」と宣言して突撃してきた。
Xのサーベルが素早くウィルに襲いかかるが、ウィルは間一髪でかわしながら、その動きに驚いていた。
(「蹴り?」なのに2刀流かよ……)
Xの剣術は、2本のサーベルで相手の武器を封じる動きをしており、ウィルはスライムワイヤーを使うことができず、ひたすら避け続けるしかなかった。その間、ウィルは相手の剣の軌道を解析しながら、Xの動きを冷静に見極める。サーベルのリーチは短く、近接戦では間合いを詰めにくい。しかし、遠距離攻撃も膜によって防がれる状況だ。
(雷刃を使うか……いや、こちらの戦力が揃っていない状況で切る手札ではないな……)
ウィルはまず情報収集を優先し、距離を離しながらスライムワイヤーであらゆる角度から攻撃を試みた。
Xの死角を探るように攻撃するが、Xはそれを承知の上で、この状況を楽しんでいるかのようにウィルを見つめ、薄ら笑いを浮かべている。
「君、魔族のくせに回避が上手だね。回避能力に特化しているのかな?」
(こいつ、戦闘狂か?)
ウィルは内心で不快感を覚えたが、冷静に状況を見極めていた。
そしてついに待ち望んでいた援軍――アカヤとココがついに到着した。




