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魔族IT革命  作者: 白樹春來
魔京都 会社設立編
32/68

32話 初心者うさみさん勧誘!!

 うさみが目を覚ましたとき、彼女の視界に映るのは見慣れない天井と、やわらかなベッドだった。頭がぼんやりしていて、ここがどこなのか全くわからない。ふと、自分の体がベッドに横たわっているのを感じ、戸惑いながら周囲を見渡した。


「ここは……?」


 呟いたその声はかすかで、自分でもはっきりと聞こえなかった。


 そのとき、どこからともなく優しい声が耳に届く。


「おはよう、うさみ」


 それはAImonの声だった。


 心に寄り添うような、いつもの親しみやすい口調でうさみに話しかけてくる。


「お、おはよう……」


 うさみは困惑しながら挨拶をした。自分がどうしてここにいるのか、そして何が起こったのかが曖昧で、記憶がはっきりしない。確かに戦闘に参加していたが、それ以降のことはぼんやりしていて思い出せない。彼女は上半身を起こし、ベッドに腰掛けると、ふと視線の先に一人の男性が立っていることに気づいた。


「はじめまして、うさみさん」


 その男は優しげな声で話しかけてきた。背は高く、落ち着いた雰囲気を纏っている。


「あなたをここまで運んできました。負傷していましたが、怪我の具合はどうですか?まだ痛むところはありますか?」


 ウィルの声には、まるで父親が子供を気遣うかのような優しさが滲んでいた。うさみは自分の体を確かめるように触れてみたが、痛みはほとんど感じなかった。


「大丈夫です……」


「それはよかったです」


 ウィルは少し安堵した表情を浮かべた後、軽く自己紹介をした。


「あ、まだ名前を言っていませんでしたね。私はウィルです。よろしくお願いします」


 うさみは少し緊張しながらも、ウィルの穏やかな態度に少し安心し、返事をする。


「よろしくお願いします……」


 お互いに初対面であり、何となくぎこちない空気が漂っていた。しかし、ウィルはその空気を和らげようと、さらに優しい声で話しかけた。


「今回の戦闘……怖かったですか?」


 うさみは少し考え込んだ後、静かに頷いた。


「すごく怖かったです……」


「そうですか……」


 ウィルはしばらく黙ったまま、うさみの言葉を噛みしめるように考え込んでいたが、再び問いかける。


「もう戦闘には参加したくないですか?」


 うさみはさらに深く考え込んだ。


 彼女の指先がベッドのシーツをそっと撫でるたびに、心の中で揺れる葛藤が伝わってくる。


「確かに……怖かったです。でも、それだけじゃなくて……」


 うさみは少し目を輝かせながら言葉を続けた。


「私……これまでずっと、自分には何の価値もないって思ってたんです。だけど、今回の戦闘に参加してみて、初めて他人に褒められました。スタンプをもらったり、AImonと話をしたり……いろんなことが初めての体験で……正直、楽しかったんです」


 その言葉を聞いたウィルは、心の中で微笑んだ。自分が手がけた「モデルエッグ」プロジェクトが、誰かに楽しさを与え、成長の機会を提供している。それは彼にとって、この上ない喜びだった。


「楽しんでもらえたなら、本当に嬉しいです」


 ウィルはうさみの目を見つめ、心からの言葉を返した。彼の中には、うさみが恐怖に打ち勝ち、その先に楽しさを見つけ出したことに対する尊敬の念が芽生えていた。彼女は、恐怖と向き合いながらも、自信を持とうとしている。


 ウィルはその機微を見抜いていた。


(この子、はまればガチでやり込むタイプだな)


 ウィルの脳裏に、自分の過去の経験がよぎった。かつて、彼自身も何気なく始めたゲームに夢中になり、最終的には廃課金プレイヤーにまでなるほど熱中した思い出がある。その時と同じ感覚を、うさみに感じていたのだ。


(うさみさんが自然にハンターの魅力に引き込まれるようにしてあげたい)


 ウィルは決して無理強いはしないつもりだった。無理やり戦闘に参加させ、追い詰めるのは逆効果だと知っていからだ。楽しさを感じさせ、うさみ自身が自らもっと知りたくなるように誘導させることをウィルは考えていた。


(彼女には強い者のイメージを見せて、もっと成長していきたいと感じさせることが重要だな)


 その計画を練りながら、ウィルはアイに指示を出すことにした。


「アイ、うさみさんを強化するための装備や武器、拡張機能をAImonのデータからピックアップしてくれ」


『了解! なんだかすごいこと考えてるみたいね』


 アイは軽快な声で返事をしながら、すぐにデータ解析を開始した。ウィルは言葉を慎重に選びながら、うさみに提案を持ちかける。


「もし、これからもハンターとして参加するのであれば……一緒にやってみませんか?」


 突然の誘いに、うさみは戸惑い、どう答えたらいいのか一瞬迷った。


「私……初心者だし、何もできません。それでも大丈夫なんですか?」


 その言葉に、ウィルは優しい笑顔を浮かべて答える。


「大丈夫ですよ。私も今は一人で行動しているし、仲間が必要だと思っていました。だから、うさみさんに力を貸してほしいんです」


 ウィルの提案に、うさみは少し考え込んだが、柔らかな笑みを浮かべて小さく頷いた。


「お邪魔になるかもしれませんが……よろしくお願いします」


 その答えを聞いたウィルは、心の中で大きくガッツポーズを決めた。


 うさみが新たな世界に足を踏み入れる瞬間を見守りつつ、これから彼女がどのように成長するのか期待に胸を膨らませた。

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