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魔族IT革命  作者: 白樹春來
魔京都 会社設立編
28/68

28話 魔法開発 ココとララ

 ウィルは、久しぶりにココとララからメールを受け取った。


「会って相談したいことがある」という内容に、ウィルはどんな相談だろうと思いつつ、本社の会議室で待っていた。


 しばらくして、コンコンとノックの音が響き、2人が顔を見せた。


 久しぶりに会う2人は、少し大人びた様子で、ウィルはその成長に感慨深さを覚えながら「お久しぶり」と挨拶を交わした。


 会議室には落ち着いた空気が流れ、窓から差し込む光が2人の姿を柔らかく照らしている。


 ララと軽く近況を話していると、ココがいきなり、「ねぇ、ウィル兄に頼みがある」と切り出した。


「『ウィル兄』って呼ばれるのはちょっと…」とウィルが軽くツッコむと、ココはいたずらっぽく笑った。


「そう呼ぶのが一番しっくりくるからな。だめか?」


 ウィルは肩をすくめて微笑む。


「まぁ、好きに呼んでくれていいけどさ」


 その様子を見ていたララが、「ちょっと待って、まずは私から話をさせて」と言って制止するが、ココは構わず話を続けようとする。


 押し問答が続く中、ウィルは軽く笑いながら、「落ち着け、順番に聞くから」と穏やかに説得した。ようやく、ココは落ち着き、本題に入った。


 ココの相談内容は、「もっと強くなりたい」というものだった。


 ウィルは、「怪力拳をインストールして使いこなしてみるか?」と軽く提案したが、ココはすぐに「それじゃない」と首を振って否定した。


 どうやら、以前の鬼切舞との決戦で、ウィルが見せた戦いが、ココの心に深く響いていたようだった。


 彼は、自分の力をさらに磨き、もっと高みを目指したいと考えている。


 その時、ウィルはふと思い出し、ララに「稲荷家は進化する家系なのか?」と尋ねた。


 ララは少し考えた後、首を横に振りながら答えた。


「物理的に進化はできないです」


 しかし、彼女は続けて打ち明けた。


「お母様から授かったテレポートと結界の魔法をもっと使いこなせるようになれば、稲荷地区のみんなをより強く守れるようになるんじゃないかって思っているんです」


 その言葉から、彼女がただ強くなるだけでなく、守り手としての自分の役割を意識し始めていることがわかる。


 さらに、ララは補足した。


「マッチからも『ウィルに聞けば、何か示してくれるはずだ』って言われて、相談しに来たんです」


 ウィルは彼女たちの真剣な表情を見ながら、何を求めているのかを徐々に理解し始めた。


 そして、彼女たちの魔法をさらに汎用的に使えるようにすることが、2人にとっての「強さ」だと悟った。


 ウィルは2人に向き合い、「強さとは何か」について話し始める。


 まずはココに問いかけた。


「強さって、何だと思う?」


 ココはすぐに力強く答えた。


「それは、ウィル兄みたいにどんな相手でも対応できて、ボコボコにできる最強のパワーだ!」


 その返答に、ウィルは静かに頷いた。そして次に、ララに穏やかに尋ねる。


「君はどう思う?」


 ララは少し考えた後、冷静に言葉を選びながら答えた。


「今までの価値観が変わりました。私は、どんな環境でも通用する力、汎用性こそが強さだと思います」


 その答えに、ウィルは満足そうに頷きながら言った。


「君たちの母親にも話したことがあるが、強さとは、その環境において最適な技術を使いこなせる者が強いということだ」


 続けて優しく語りかける。


「強いと感じるのは、自分自身でなくてもいい。他人がそう感じれば、それでいいんだよ。だから、まずは自分たちの魔法をもっと深く理解してみないか?」


 ココは少し渋々ながらもその提案に納得し、ララは意欲的に受け入れた。


 ウィルは2人に微笑みかけ、そのやる気に応えるように、頭の中で明日からの特訓プランを組み立て始めた。


 ◇◇◇


 翌日、ウィルはココとララの魔法開発に取り組むことにした。まずは、2人の持つテレポートと結界という強力な力をどう活かすべきかを問いかけることから始めた。


「自分たちの魔法で、何を成し遂げたい?」


 ウィルは2人の考えを深掘りするため、根本的な質問を投げかけた。


 ココとララは顔を見合わせ、少し迷いながらも、自分たちの思いをゆっくりと語り始める。


 最初に話し始めたのはココだった。彼の望みは「圧倒的な強さ」で、相手を一撃で倒し、恐怖を植え付ける力を求めていた。


 一方、ララは「汎用性」を重視し、どんな状況にも対応できる力を求めていた。戦闘だけでなく、日常生活や緊急時にも役立つ柔軟な力が必要だと考えている。


 ウィルは2人の要望を整理しながら、どの魔法に焦点を当てるべきか慎重に考えた。


(ココは強さを誇示したいが、それだけでは限界がある。ララは柔軟な使い方を求めている……この二つの要望を同時に満たすなら、やはりテレポートが最適かもしれない)


 この結論に至ったのは、テレポートが攻撃にも防御にも応用でき、多彩な戦術を生むからだ。敵を別の場所へ飛ばす攻撃、物資の迅速な輸送、戦場での緊急回避——すべてがこの魔法に集約できる。


 ウィルは2人に、魔法の具体的な使い方について尋ねることにした。


「テレポートをどうやっているか、詳しく教えてくれる?」


 ココとララは、その技を感覚的に使っているため、説明が難しいと言いたげな表情を浮かべた。ウィルは「なんでもいいから言葉にしてみて」と提案し、ララが順序立てて説明を試みた。


「まず、移動したい場所の座標を決め、その位置を確認してからポータルを展開します」


「最初に出口側を作り、その後入口側を作成することでポータルの完成です」


「じゃあ、出すための座標は目視できる範囲だけ? それとも行きたい場所をイメージすればポータルは出せるの?」とウィルが質問すると、ララは「目視できる範囲だけです」と答えた。


「もし出口を地面の中とか危ないところに作っちゃったらどうなる?」という質問には、ララは「感覚でわかるから、そういう場所には出せません」と返答し、ココにも同じ質問をすると、ココは「ウィル兄、それで合ってるよ」と答えた。


 ウィルは魔法の仕様を頭の中で整理する。


(範囲は目視できる場所のみで、ポータルの危険性は感知可能。気になるのは、移動できる対象に制限があるかどうかと、どのくらいの質量まで可能かだな)


「OK、だいたいわかった。でも、もっと知りたいから協力してくれ」とウィルは言い、2人とともにさまざまな実験を行い、魔法の詳細を確認していった。質量の違いによる影響や、ポータルの挙動などもテストし、その理解をさらに深めた。


 その上で、ウィルは2人に向き直った。


「まずはテレポートを徹底的に使いこなしてみよう」と提案する。


 しかし、ココは首を傾げ、不満そうな表情を浮かべた。


「なんでテレポートなんだ? もっと派手な攻撃とか、一撃必殺みたいな技のほうが強くないか?」


 ウィルはココの考えを否定せず、静かに頷いて説明を始めた。


「確かに、派手な技や一撃必殺もかっこいい。でも、それだけじゃなくて、相手に『どう頑張っても勝てない』と思わせることが本当の強さなんだよ」


 ココは少し眉をひそめながらも、ウィルの言葉に耳を傾けていた。


「例えば、テレポートを使って、相手を強制的に障害物へ送り込む運用を考えてみる。どんなに強い相手でも、自分が意図せずに移動させられるとなったら、ココのことを恐れるようになるだろう?」


 ウィルは微笑みながら続けた。


「一撃必殺にもなるんじゃないかな?」


 ココはしばらく考え込んだが、次第に目を輝かせて呟いた。


「なるほど……考えたことなかった!」


 ウィルはさらに背中を押すように言った。


「発想の逆転だ。自分が使う側じゃなく、相手の視点に立ってみたんだ。もちろん、安全を第一にするために、ココの魔法を補助する仕様も作っておくよ」


「じゃあ、これを練習して、絶対に自分の技にしてやる!」


 ココは興奮を隠せずに叫んだ。


 だが、その勢いのまま「他には? 他には何かないの?」とウィルに迫ってきた。その様子はまるで無邪気な弟のようで、ウィルはつい微笑んでしまう。


「じゃあ、あと一つだけ教えてやる」


 ウィルはそう言って、少し思案した後、新しいアイデアを提示した。


「ポータルの特性を活かして、相手の持ち物を透視するのはどうだ?」


「持ち物を見てどうするんだよ?」とココが首をかしげる。


「4次元空間にアクセスすることで、物体の内部を視覚化できるんだ。相手が隠している切り札を事前に見つけられれば、有利になるだろう?」


 ココは目を輝かせ、「やっぱりウィル兄はすげえや!」と笑顔で叫んだ。


 一方、ララには汎用性を高めるための新しいアプローチを提案する。


「ララ、目視範囲外への移動に挑戦してみないか?」


 ララは少し驚いた表情を浮かべたが、ウィルは続けた。


「もし目視範囲外への移動が実現できれば、その技術を使って外部機器の開発にも転用できる可能性があると思ったんだ。そのために、まずは目視でなければいけないという仕様について、詳細な条件を洗い出していきたい」


 ウィルはさらに説明を続けた。


「目視で確認した情報を脳がどのように処理しているかが鍵だ。例えば、見ている景色の解像度が低いから目視が必要なのか、それとも脳がそこにいると認知するプロセスが必要なのか原因が特定できれば、高精度な3Dマップや点群てんぐんデータを活用して、その場所にいるかのような錯覚を脳内で再現することが可能になる」


「もしこの方法で目視以上の解像度で場所を認識できれば、その場にいなくても、脳がそこにいると認識することで移動が可能になるかもしれない。どうだ、試してみないか?」


 ララはウィルの提案に興味を示し、目を輝かせた。


「それなら面白そう!」


「この転移装置の仕様もまとめて、マッチに頼んでシステムに組み込んでおくよ」とウィルは約束する。


 ララは嬉しそうに頷きながら、「これで今よりもっといろんなことができる!」と期待を膨らませていた。


 ココとララは、それぞれの目標に向かって集中し始めた。


 ウィルは彼らの成長を見守りながら、ふと笑みを浮かべた。


「2人がどこまで成長するのか……これからが楽しみだな」



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