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魔族IT革命  作者: 白樹春來
魔京都 会社設立編
25/68

25話 区議会

 区議会は、各地区の代表が魔王城に集まり、条例の制定や予算の編成、活動の監査、地域発展などを話し合う場だ。


 大広間には代表たちが揃い、全員が席に着いて議会の始まりを静かに待っている。


 妖精地区の代表の席が空いていることに気づき、ウィルはちらりと目を向けた。


「遅刻か?」とぼんやり考えたが、すぐに魔王の掛け声が響き、議会が始まった。


 稲荷地区からはララが出席しており、多忙な母の代わりとしてマッチも付き添って来ていた。


 一方、鬼切地区からはウィルと鬼切舞の妹、鬼切鳴おにぎりめいが出席していた。


 議会の冒頭で、鬼切鳴おにぎりめいが立ち上がり、初めの挨拶を済ませた後、自分がウィルの代理として出席していることを説明した。


「今回の出席はあくまで一時的なものです」


 そう前置きした上で、鬼切家が正式にウィル&マッチの傘下に加わり、各方面の調整が終わり次第、将来的には鬼切地区の運営を自分が引き継ぐ予定だと伝えた。


 続いて、ララが立ち上がり、稲荷地区運営管理者の後継者として挨拶を行う。


 彼女がこの場に訪れたのは、将来の後継者としての立場を示すためであると伝えた。これまでの議会には稲荷地区運営管理者の稲荷シロが出席していたが、今後はその役をララが引き継ぐ予定だと説明し、稲荷地区での変化を各地区の代表たちに知らせた。


 挨拶が終わり、議会が進むと、最初の議題として鬼切地区の改正についての討議が始まった。


 鬼切地区の運営方針の見直しは、多くの代表者たちにとって関心の高いテーマであり、全員の視線が集まる中、ウィルが改正案について説明を始める。


「鬼切家と鬼斬家の主従関係はそのまま維持するが、鬼斬家への命令権については変更を行う」


「具体的には、鬼切家は業務上必要な命令以外のことを指示することはできない。命に関わることに関しては、相手の了承が得られない限り命令を行使することは一切認められないようにする。さらに、コンプライアンスを遵守し、一族の中から疎外される者が出ないよう、メンタルケアなどのセーフティネットを確立する」


 ウィルの説明は具体的で明確だった。彼の提案する改正案は、一族全体の福利を考慮したものであり、鬼切家の権限を制限しつつ、内部の調和と安全を確保することを目指していた。彼はさらに細かな点についても説明を続けたが、要点は上記の話に集約されていた。


 代表者たちもウィルの提案に耳を傾け、彼の論理的な説明と、一族の調和を重んじる姿勢に感銘を受けた様子だった。鬼切家の改正案に対する質問や意見が飛び交う中、最終的には全員の合意に達し、鬼切地区の改正が正式に承認された。


 会議は、改正案が承認されたことで、次第に張り詰めていた空気が和らいでいった。代表者たちは、この改革が新たな時代の兆しとなり、鬼切地区が将来的に良い影響をもたらすことを期待していた。


 そんな中、議題は自然と次のテーマ、ウィル&マッチ社へと移っていく。いまや大企業の一角として君臨するこの企業だが、一族経営が主流の環境においては、まさに異端の存在でしかなかった。


 ほかの地区の代表たちは、ウィル&マッチ社をどう受け入れ、どう接していけばよいのか戸惑っている様子が伺える。


 ウィル&マッチ社は鬼切地区の代表でもなく、稲荷地区の代表でもない。地区代表としての正式な権限を持っていないにもかかわらず、その影響力はすでに都市全体にまで及んでおり、地区代表と同等の力を持っていると言っても過言ではなかった。さらに、各地区間の格差も徐々に顕在化し始めている。


 稲荷地区は、かつては復興がうまく進まない最前線の地区だった。しかし、ウィル&マッチ社による莫大な投資の結果、最前線基地はより強固なものとなり、道路は整備され、各産業の会社も次々と支店を出すようになった。その結果、稲荷地区は「第2の都市」と呼ばれるほどのにぎわいを見せている。


 一方で、他の地区からの人口流入も激しく、特に産業が乏しい地区は、ただでさえ人手不足の状況が続く中、ますますその勢いが加速している。ウィル&マッチ社の姿勢や方針は評価されるべきものだが、正直なところ、全ての地区代表がそれを快く思っているわけではなかった。


 そのため、ウィルとマッチに対して、現状についてどのように考えているのか問われることとになり、マッチが代わりに答える。


「皆様の事情については十分に承知しております。当社としてもこの問題にどのように取り組むべきか、社内で協議しているところでございます。今しばらくお時間を頂戴したいです」


 彼女の回答に対し、魔王も同意を示しながら一言加える。


「本来なら、地区の代表である君たちが、地区の規則を見直し、産業を育てる役割を担うべきだった。私の経済政策に沿って取り組む手筈だったにもかかわらず、その役割をウィル&マッチが肩代わりしている。復興に成功した地区を妬むことなど、断じてあってはならない。稲荷地区も鬼切地区も、ただそれぞれの事情に応じた結果、今の形になっているのだ」


 魔王の言葉に、各地区の代表たちは黙り込む。正論を突きつけられ、反論の余地がないことは誰もが理解していたからだ。


 その場で、ウィルが発言をする。


「このまま議論を続けても、平行線をたどるだけだと考えています。そこで、当社からの提案ですが、社内で協議を進めるにあたり、各地区の事情をより正確に把握したいと思います。そのため、対策チームを編成し、可能な時期に現地視察を行いたいと考えておりますが、いかがでしょうか?」


 ウィルの提案に対し、会議の場は再び静寂に包まれるが、その後、各地区の代表たちは理解を示すように頷いた。


「視察することが可能になった場合、各地区への立ち入りや会社の視察などに必要な権限についての処理を、それぞれにお任せしてもよろしいでしょうか?」とウィルが続けると、代表たちは再度頷き、了承の意を示した。


 最後に、各地区の年間予算案が審議され、議会は徐々に終了へと向かう。未来への期待と不安が交錯する中、会議は新たな課題とともに終わりを迎えた。

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