宇宙人による誘拐
「え、あれ……ここは……」
ある夜。道を歩いていた男は目を覚ますと知らない場所にいた。途端、混乱渦巻く脳内。
そもそも目を覚ますとはどういうことだ。おれは寝ていたのか? ウォーキングの最中に? 有り得ない。休憩した覚えもない。気絶でもしたのか? 覚え……そうだ、光が体を包み、それから、あれは……
「UFO……? え、あ、これ、これは、あ、あ、動けない、おい、誰か! 誰か……あ、あ、う、うちゅ、うちゅうじん……?」
「そうデス。ワレワレは――」
「ああああぁぁぁ! 誰か! 助けてくれ! 頼む!」
「落ち着いてくだサイ」
「頼む! 解放してくれ! あああぁぁ! 嫌だ! 嫌だぁ!」
「ダメでス。その拘束はアナタとワレワレの安全のために――」
「ああああぁぁぁぁ! お、お、おれに触れたらその指、噛んで食いちぎってやるぞぁぁぁぁ!」
「大丈夫でス。落ち着いてくだサイ。そう、深呼吸シテそう、ゆっくり、大きく息を吐いテ……」
「はぁ、はぁはぁ……お、おれをどうするつもりだ……」
「何も。危害は加えません、ただ――」
「ただ!? 何をするつもりだ! ああああぁぁぁ! わかる、わかってるぞぉ……お前らの魂胆はぁ。お、お、おれを解剖して人間という生き物を徹底的に調べ上げ、そしてまた元に戻し、脳にチップを埋め込み監視! スパイにするつもりだろうあぁぁぁ! それかお、おれを殺しクローンを作り、そ、そ、そいつを工作員に、あ、あ、あそうか、他の連中ももしかしたら入れ替えられてクソォ! クソクソクソッタレの宇宙人野郎がぁ! あああああ!」
「野蛮な発想ダ……」
「はぁはぁはぁ、ゲホッ、ゴホッ……く、苦しい……そ、そうか、お、お前らの、この宇宙船内の空気は地球人にとっては毒なのか……。逆もしかり。お、お前らは自分たちの住みやすい環境に地球を改造するつもりで、そ、そのための実験動物として、おれを誘拐したんだな! あ、ああ、クソックソクソクソ……地球温暖化も貴様らの仕業かぁ……地球改造計画の第一弾というわけだなぁ……」
「違いマス」
「地球を植民地にし、人類を奴隷に、服を着るのももったいない貴様らは猿の亜種とそう鞭を叩き込み基本的な人権も奪い、会話、言語の使用を禁じ、ち、知能を猿同様にするつもりなんだぁ……」
「しまセン」
「に、人間の脳を機械に繋ぎ、計算機扱い、電池のように消耗品として利用! い、いや、単純に食肉! あ、あ、あ狩り! ハンティングに興じ! あ、あ、あ、あぁぁ宇宙の凶悪な寄生生物の宿主にぃぃぃぃ……」
「しないっテバ」
「あ、あ、あばばばばば!」
「今度はなんですカ」
「お、おれを女にするつもりだな……?」
「ハイ?」
「お、お前らのその技術で、お、お、おれの身体を女に変え、それでむ、無理矢理、は、は孕ませ、お、お、お、おえぇぇぇ」
「しないっテノ」
「そ、それか、もう、改造とかせず、お、おれの、け、ケツの穴を、ああぁぁあぁ……」
「なんだコイツ」
「あ、気絶したな」
「またか。今回は特にひどい……。ただ会話したかっただけなのに、どうして地球人はこうなんだ」
「まあ、いきなり連れてこられたわけだからな。仕方ないさ」
「他に良い方法がないからなぁ……。しかし、この男はいつも通り記憶を消すとして、やはり」
「ああ、実際会話してみて……まあ、一方的であったがわかったことがあるな」
「地球人は我々に対してとてつもない嫌悪感を抱いている」
「憎悪と言ってもいいかもしれん。映画などフィクションであることはわかってはいるが」
「あの量。そのほとんどが我々を悪者扱い」
「もしかするとそれが彼らのトップ連中の狙いなのかもしれん」
「ふむ。プロバガンダ。一般市民に宇宙人に対する悪感情を抱かせ」
「団結を。まるで洗脳だな」
「それとも勝手に恐怖心を募らせているか、なんにせよ、はぁ……堂々と着陸し、この星のトップと会談を行う前に粗相がないように現地人と会話の練習せよとの上からの命令」
「データを集めシミュレーションするのと実際に会話してみるのとでは、また違うだろうからな。なあ、実際そうだし。だが……」
「これではいつまでたっても……」
「ああ、友好的交流など無理だなぁ……」




