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とあるメイドから

誤字脱字等あれば報告いただけると嬉しい限りです。

メイド視点です。

 

 私はアルカディア太公家に仕えるメイドだ。太公家に仕える使用人となると貴族出身の者が多いが、私は違う。生まれは平民、商家の生まれである。ただ、両親が働く商会が潰れ、私達の一家は路頭に迷うことになる。

 自分でお金を稼がなくてはいけなくなり、私にはいくつかの選択肢があった。でも、その殆どは娼婦だったりと体を売る職業だった。もう少し器量が良ければ貴族の妾になれたのかもしれないけれど、それは嫌だった。

 最後に残された選択肢を私は選んだ。それがメイドになることだだった。


 朝早くに起床し、服を着替え髪を結う。ご主人様方が起きられる前に朝の支度は済ませなくてならない。既に使用人の殆どは起きていてテキパキと働いている。この屋敷に怠け者はいないのだ。

 怠けていると何故かバレて給料を減らされる。業務時間でお給料を支払っている、とご主人様は言っていたけれどよくわからない。



「おはようございます。」


「おはよう」


「おはよー…ふわぁ…」



 厨房に行くと既に食材を揃えているシェフ達、使用人達に挨拶をして自分の持ち場につく。朝になるとみんなおはようと挨拶しているので慣れたものだ。自分も自然と返せるようになった。偶に欠伸が混ざって返ってくることもある。



 準備が済んだらそろそろご主人様達が起きてくる時間だ。ご主人様の支度をするのはメイドより上の位の侍女がする為私達はその時間少し休息が生まれる。ただ、ここでだらだらしているとメイド長に叱られてしまうので気をつけなくてはならない。少し休んだらまた作業に戻る。



「「「ご主人様。お坊ちゃま。おはよう御座います。」」」



 食堂に二人が来ると私達は作業の手を止め、礼をする。ご主人様は美しい銀の髪に反射で虹色に見える瞳の綺麗な御方だ。冷静で淡々としているからか冷たい印象を持たれがちだが全然そんなことはない。長い髪は結い上げていることが多いが今日は違うみたいだ。



「皆んな、おはよう。」


「おはようございます…。」



 ご主人様は使用人の前では敬語は使わない。昔は使っていたと聞くが殆どの貴族が使わない為、外すことにしたようだ。外に出るときのご主人様とはまた違い優しく親しみさえ感じられる。ご主人様は可愛い。

 レイ様は眠かったようで、目を擦っている。レイ様はいつも敬語なので、誰にでもそうなのだろう。棘があると思われがちだがご主人様と話しているときやこの家にいるときは年相応の青年という印象がある。

 二人とも美形なので、こちらとしては見ているだけで眼福なのだ。優しい主人というのも珍しいと聞く。



 朝食が終わるとご主人様は執務室に、レイ様は学園へと向かわれる。最近学園で何かあるのか行くときに気だるげにしている。心配だが、着いていくこともできないので学園から帰宅されたら美味しいスイーツを用意しておこう。それと紅茶も。


 そうこうしている内に昼頃となり、私は廊下の窓磨きをしていた。

 すると、突然後ろから声をかけられた。



「あら、お疲れ様。」


「ご主人様!ありがとうございます、ご主人様もお疲れ様です。休憩ですか?」


「えぇ、ずっと執務室に篭っていると気が滅入ってしまいそうですの。…それよりも」


「えっ…?」



 ふいにご主人様が近づいてきて私は思わず目を瞑る。間近でご主人様を見られるのは嬉しいが、それは気絶してしまいそうだ。ふわりと優しく髪に手が触れた。



「これ、外でついたのかしら。ふふ、木の葉が髪についていたのよ。」



 そう声が聞こえ、ゆっくり目を開けると微笑むご主人様がそこにいた。手には緑の葉が一枚摘まれている。私の髪に付いていたのを取ってくれたのだと理解すると思いっきり頭を下げた。



「もっ、申し訳ありません!ご主人様のお手を煩わせるなんて…」


「別にいいのよ、これくらい。スミスに見つかったら怒られてしまうかもしれないけれど。」



 私もスミスが怒るのは怖いのよ、と言いながらころころと笑うご主人様。笑うと髪が揺れた。



 ───可愛い…かわいい!!もーう、まってまってまって私のご主人様可愛いすぎない!?え、は、いつも凛としているのにメイド長に怒られるのが怖いとか…まさか怒られたこことがあるのかな…。だとすれば幼少期!?メイド長は元々王宮仕えだったって聞くし、ならご主人様付きだったのかな。えー!えー!!絶対可愛いじゃん、ご主人様の幼少期なんて。ロリは正義なのよ。今みたいに美しい笑い方じゃなくて年相応な笑い方なんでしょ。ふにゃって笑いかけられたら私気絶、いえ血を吐く自信がある。───



 一気に思考が頭の中に巡った。言い忘れたが、この屋敷のメイドの殆どはご主人様とレイ様のファンなのだ。美男美女というのは目の保養である。この家に仕える者は大概見目麗しいが、ご主人様達は別格だ。

 頭の中バレていたら死ねるな、と思いながら私はそうなんですね、と相槌を打った。



「それじゃあ、私は仕事に戻りますわ。ミリーも頑張ってね。」



 ミリーと名前で呼ばれた。何人もいるメイドの名前を覚えているとは思わず私は固まっているだろう。

 こて、と首を傾げるご主人様。それに気がつくと私ははっとする。



「はいっ!」



 勢いよく返事をするとまたご主人様は微笑まれて執務室の方へと戻っていった。

 ご主人様と話したあとは何となく運が良くなる気がする。でも顔がニマニマしている気がしてすぐ頬に手を当てて確認するようになった。



 まあ、この後私はご主人様と話していたのを他の使用人に見られて問い詰められたのだった。


限界オタクみたいなメイド、ミリーでした。(短いのは許して…)

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