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1話


「ねぇ、僕たちどこへ向かってるの?」

「さぁ、線路が続くまで」

世界が終わってしまった日、僕たちは旅に出た。


小さな白いオートバイ。このカブが僕たちの唯一の移動手段だ。僕が運転し、彼女が荷台に腰掛ける。二人用の装備なんてない。ただ荷台の荷物の上に彼女が座るだけだ。


空が青い。なんて平和なんだろう。こんな光景を見て、本当にこの世界が終わってしまったのか?たまに、そう思うことがある。


「ねぇ」

「なに」

「お腹すいた」


彼女が荷台から僕の背を叩く。


「そっか、もうそんな時間なんだね」

「うん」


僕はカブを止めた。彼女は荷台から飛び降りるとスカートをはたいた。

「確かまだ残りの乾パンがあったはずだよ」

僕は彼女が座って潰れてしまったカバンから、残り僅かになった食料を探す。


「はい、これ。お水も」

「ん」


非常食だ。あまり美味しいものではない。胃に何かをいれる作業。彼女は特に感慨もなく硬い乾パンを水でふやかしながら食べる。


「そろそろ次の町につきそうだから、またそこで補充しようか」

「今度はみつかるかな」

「どうだろうね」


僕がそういうと、彼女は特に反応せず、乾パンを食べた。


「じゃぁ、いこっか」

「うん」


僕が運転席にまたがると彼女が荷台へ飛び乗る。そこが彼女の定位置。

エンジンを点火する。だだだと低い唸り音ともにエンジンが動きだした。


「つかまった?」


彼女の合図からかぼくのシャツをちょっと強めに掴んだ。

カブを走らせる。風が気持ちいい。スピードは、そこまででてない。でもカブによって生み出された風は僕の顔を撫でいでいく。

♪〜

僕のヘルメットごしから歌が聞こえた。少し顔を向けると、彼女が気持ちよさそうに鼻歌を歌っていた。目をつぶり彼女もこの風を感じている。


「きもちい」

「そうだね」


しばらく進むと目的の街についた。大きな壁が街全体をぐるっと囲んでおり、壁の中からはどれも崩れてはいるものの大きなビルがいくつも連なっているのが見える。

壁周辺には人が通るような門どころか道すらない。


「ここには誰か人がいるかな?」

「……」

「近づいてみよっか?」

「……うん」


壁に接近すると、所々老朽化がめだつものの、大きな損傷はなく、かなりの強度をもっているのがわかる。

ただ近づいてみても見渡すかぎり壁が広がるばかりで入り口らしき場所はなさそうだ。


「うーん、やっぱり何もないね」

「あれ」

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