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6.アビゲイルの日記Ⅱ

 初めて謁見の間に足を踏み入れたわたくしは、そのあまりの豪奢な造りに息を飲んだ。ダイヤモンドの揺れるシャンデリアに、磨き上げられた大理石の柱、まるで昔に本で見た神話の世界を彷彿とさせたわ。

 神々しいまでの空間はこの国における王家の持つ権力を如実に表しているのだと、後にお父様が説明してくださった。



 国王陛下のおられる玉座の前まで進み、緊張しながらカーテシーをする。

 そろりと顔を上げると、天窓から差し込む日差しを浴びてきらきらと輝く、金糸のような髪が目に飛び込んで来た。

 その金髪の持ち主は、この国の王子様──ゴーチエ・エバンズ様。

 青空のような瞳は宝石みたいで、許されるのならばずっと見つめていたい気持ちになる──このお方がわたくしの特別な方になるのだと、すぐに分かったわ。


 国王陛下の傍らにおられたゴーチエ様は、見惚れるわたくしに柔らかく微笑みかけてくださった。


「初めまして、アビゲイル嬢。僕はゴーチエと申します。父上からあなたのお話を聞いて、ずっとお会いできる日を心待ちにしていました。──どうか、僕と結婚してくださいませんか?」




 国王陛下とお父様の見守る中、わたくしとゴーチエ様は六歳の時に結婚の約束を結んだの。





 それから、夢のような日々が続いたわ。


 ゴーチエ様は頻繁にお手紙もくださったし、週に一回は公務の合間をぬって会いに来てくださるの。ゴーチエ様の弟で第二王子のデレク様もたまに一緒にウィルソン家に来てくれるから、三人で仲良く遊ぶ日もあったわ。

 デレク様はわたくしたちの一つ年下で、こんな事を思うのは失礼かもしれないけれど、弟が出来たみたいに感じるの。

 でもデレク様は年下扱いすると可愛らしく拗ねてしまうから本人には内緒よ。

 本当に、毎日がとても充実しているわ。



 王妃教育は大変だったけれど、ゴーチエ様の隣に立つ為だと思えば苦ではないの。完璧な王妃になって、ゴーチエ様を支えられるようになりたいから……。




 ゴーチエ様と婚約してから、苦手だったお茶会やパーティーにも頑張って出席するようにしている。


 今日は貴族の子どもたちが交流を深めるために、と開かれたお茶会に招待されたので参加していた。

 相変わらずわたくしの容姿を揶揄う人もいたけれど、いつか王妃になるわたくしに面と向かって言う勇気はないみたいで、集まってひそひそしているだけ。



──つまらないわ。



「アビゲイル?」


 ため息を吐いてひとりで紅茶を飲んでいると、聞き覚えのある声で名前を呼ばれた。


「デレク様!」




 振り向くと、そこにはデレク様が立っていた。


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