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11.アビゲイルの日記Ⅶ

 デレク様は馬車の中で泣きじゃくってしまったわたくしに気遣って、ウィルソン家まで送り届けてくださったあと立ち寄らずにお帰りになられた。



 わたくしは泣きはらして真っ赤な目を誰かに見られないように、急いで部屋まで戻ってベッドに倒れ組む。ふかふかのベッドに身を沈めていると、どっと一日の疲れがなだれ込んでくるようだった。


 重たいドレスを脱ぎたいし、結われた髪もほどかないといけないのに、身体が重くて動かない。ベルを鳴らすために腕を伸ばす事すら億劫で瞼を閉じる。明日、デレク様にお礼のお手紙を書かないと──そう思いながら、睡魔に身を委ねた。



/



「──お嬢様、アビゲイルお嬢様」

「……あ」


 そっと身体を揺すられる感覚に目が覚めた。重厚なカーテンの隙間から差し込む光に、ゆっくりと頭が覚醒していく。小さい頃からのお付きのメイド、ヴィヴィアンがわたくしの顔を覗き込んでいた。



「おはようございますアビゲイルお嬢様! 昨日はお疲れのようでしたね。入浴の準備をいたしましたが、いかがいたますか?」

「ありがとうヴィヴィアン。入るわ」

「かしこまりました。あ、そうだ! お嬢様宛に贈り物が届いていましたので、入浴が済んだらお持ちしますね!」

「贈り物?」



 るんるんと楽しそうなヴィヴィアンは鼻歌でも歌い出しそうな雰囲気だ。ヴィヴィアンはゴーチエ様のお手紙を持ってきてくれる時にとても楽しそうなので、もしかしてゴーチエ様からの贈り物なのかしら?

 少しだけ、期待に心が弾んだ。





 入浴を済ませて部屋に戻る。汚れを洗い落としてさっぱりとしたら、心なしか昨日の暗澹とした気持ちが落ち着いたようだった。



「お嬢様、こちらがお嬢様宛の贈り物でございます! ええと、送り主はルルリエ・テイラーとなっております」

「……ルルリエ?」



 考えてもいなかった送り主に思わずヴィヴィアンに聞き返す。



「本当にそう書いてあるの?」

「はい、こちらのメッセージカードにルルリエ・テイラーと。開けてみましょうか?」

「ええ……」


 ヴィヴィアンの持つ、ルルリエからだと言う贈り物を見る。

 濃いピンクの包装紙に青いリボンが巻き付けられた、お世辞でも品が良いとは言えないラッピングだった。


 メッセージカードを確認すると、確かに「ルルリエ・テイラーより」と書かれている。メッセージカードからは彼女の纏う、甘い花の香りがした。


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