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五文字

作者: 黒野猫


「〇〇〇〇〇」

いつも君は私にこの五文字をくれる。

でも私は同じ五文字を君に言えない。

だからいつも

「〇〇〇○○」

と違う五文字を君に渡す。


きっとこの五文字は君が欲しいものではないだろう。

それでも私は君と同じ五文字をあげることができない。


理由はわからない。

ただどうしても言えないんだ。

照れでもなく、嫌いでもなく、めんどくさいわけでもない。

どうしてもその五文字を伝えようとすると、のどの蓋がしまり、いちごジャムの瓶の蓋のように、固く固く閉まってしまう。


私も伝えたい。

君と同じ五文字を。

でも言えないんだ、理由はわからない。






いや、もしかしたら理由はわかっているのかもしれない。

君には一生伝えることがない私の気持ち。

今のこの気持ちを笑って君に言える日が来たら、その時は笑顔で笑い話にして

君に伝えることができたらいいな。


いつか君がくれる五文字に対する言葉が

「○○○○〇」ではなくて

「○○○○〇」になる日がくるのかな


そんな日を私は少し心待ちにしている。


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