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ブラッド・アイ  作者: はーと
第一章 終わりの始まり
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第二節 野外戦闘

 俺の財布の中に3000円ある。

 1280円払って睡眠をとるか、睡眠を削って3000円を阻止するか。

 前者を行うと、3000円(全財産)がほぼなくなり、残りの9日間を1720円で乗り切らなきゃいけなくなる。

 後者を行うと、生活に支障はないが、明日からはまた、不眠不休の毎日を過ごすことになる。

 どちらを選ぼうが俺は地獄を味わうことになる。俺にとって睡眠というものは何よりも大切なものである。しかし、生活が出来なくなるといったら話は別。

 2、3時間もかかる用事じゃなさそうなので、俺は渋々後者を選び、彼について行くことにした。



 ーーだが。


 今になって思った。

 俺は判断を間違えたことに。

 

✱✱✱


 ーーこれは一体どういう状況だ……。

 大型ショッピングモールの2階フードコートで、2人の|若者(高校生)が睨み合っている。1人は、亜麻色のショートな髪をなびかせてる女子。そしてもう1人は、威勢よく逆立ったこげ茶色の髪をした男子。どちらも俺の友だちだ。

「……ちゃんと並んでないのはそっちでしょ!」

 亜麻色の女子が叫ぶ。

「……てめぇが変な並び方をしてっからだろうが!」

 こげ茶色の男子が言い返す。

 ここ数分、これの繰り返しで俺と多分、店員はとてもうんざりしてる。


 今日新作のアイスが発売したからという事で連れ去られた俺は、近場の大型ショッピングモールに連れて行かれた。そこで1人の女子ーー七森悠里(ななもりゆうり)と出会った。いや、出会ってしまった。

 彼女もアカデミー生であり、俺の昔からの幼馴染だ。ちょっと強気な性格で、負けず嫌いな彼女だが、真面目な面も多々あり、アカデミーでは成績トップをキープしてる優等生だ。彼女曰く「普通にしてたらこれくらい楽勝」らしい。

 彼女の目的も新作アイスだったため、フードコートにあるアイスクリーム店に一緒に並んだ。1時間の時を経てついにレジ前まできた俺達だったが、ちょうど一つ前に並んでた家族で新作アイスはなくなってしまった。それに激怒した悠里はなぜか幸助に当たり、喧嘩となっている。

 俺とは、特別仲がいい訳でもないし悪くもない。だが、俺の数少ない友達である幸助とはどうも気が合わなく、とても仲が悪い。2人が一緒になると凄まじい化学反応を起こす。今がその状態だ。

「貴方がタラタラ歩いてたから先越されたんでしょ!」

「うるせぇ!大体てめぇが服みたいとか言い出さなかったらこんなことにはなってねぇだろ!」

「いいじゃない!可愛かったもん」

 ーーめんどくさい。

 多分、俺を含めこの場にいる全員がそう思ってるだろう。

「もういい!れーくん行くよ!」

「おい!レイは俺の連れだ!」

 ーー俺はどちらのものでも無い!

「すいません!スペシャルチョコレート1つ」

「おい、ズリぃぞ!俺はクリームバナナチップで!」

 ーー結局頼むのかよ。

 心の中でツッコミを入れる。

 レジでお金を払い、適当な場所に座る。アイスを食べてる時は何も言わなかった。だが空気がすごく重い。

 静寂を破ったのは、「ごちそーさま!」と叫ぶ幸助の声だった。

「もうちょっと味わって食べなさいよ」

 そう言う彼女も、もう二口で食べ終わる量になっている。

 ここまでくるのにもう2時間は経過している。今すぐ立ち去って寝たい気持ちが高まる。


 だが、彼女が最後の一口を頬張ると同時にそれは起きた。ショッピングモール内に警告音が響き渡ったのだ。


『緊急特別警報。緊急特別警報。館内西フロアにて、亜眼が発生。お客様は直ちにーー』

 警告音と共に流れたアナウンスを聞いた途端、悲鳴が飛び交った。

 パニックに(おちい)ったショッピングモールの中、呑気にアイスを食べ終わった悠里は「行くわよ」の一言を残しフードコートを出る。

「野外戦闘ってやつか……。腕がなるなぁ〜」

「貴方ホント緊張感ないわね」

「さっきまでアイスを食べてた奴が何を言うか」

 俺からしたらどちらも緊張感が無いように見えるが、言わないでおく。

 そもそも亜眼がショッピングモールなどの公共施設で発生することはまず起きない。警備を強行突破するか、あるいは《子連れ》が暴走するか。

 フードコートから西フロアまでは5分とかからなかった。西フロアは、大手電化製品メーカーが連なるエリアだ。こんな所で暴れたら…

 ーーひとたまりもない。

「コラ!君たち!早く逃げなさい!!」

 警備員が俺たちを注意するが、アカデミーの制服を見た途端におさまり、「御助力、感謝する」とだけ言い道を開ける。俺はその道を通ろうとしたところで肩を捕まれ、再び警備員に注意された。

「君たち見たいな新兵はここで見学していてくれ。」

「なんで?」

「クラス3。《中等種》亜眼だ。君たちじゃ手も足も出ないだろう」

「大丈夫ですよ、警備員さん。」

 幸助が俺と警備員の話に割り込んでくる。

「コイツはクラス3程度じゃ、本気の3分のい……わぷっ」

「余計なこと言わないの。これでれーくんが敵視されたらどうするの」

「それもそうか……」

 ーーあんたらちょっと黙っててくれ。

「……君たち、さっきから何を?」

「そう言うことだ。警備員さん。あとは俺に(・・)任せてくれ。」


✱✱✱


 市立病院の診察室で斉藤創治(さいとうそうじ)は1枚の紙と睨み合っていた。

 《亜眼細胞値(AL浸食率)診断カルテ》と書かれたその紙は、次にこう記してあった。


             8月28日(水)

 ・神沼 黎

   亜眼細胞値:428

   AL浸食率:35%


 亜眼は《亜眼細胞値》が500を超えると亜眼と判断される。《AL浸食率》は《亜眼細胞値》を簡単に数値化したものだ。普通の人間は0%、または5%ほど。なぜ彼の数値が高いのか、それは彼の父親が純粋な亜眼だったからだ。亜眼だけが持つ超人的な《身体能力》を彼は持っている。この世界で彼は唯一、亜眼であって人間である存在だった。


 創治は机上の紙を見やり、眉間にシワを寄せた。


《亜眼細胞値(AL浸食率)診断カルテ》

             9月3日(火)

 ・神沼 黎

   亜眼細胞値:872

   AL浸食率:73%


 ・亜眼と断定する。

 活動報告にも書きましたが、受験や新生活とかがあり、なかなか書けませんでした。

 少し余裕も出てきたので、これから少しづつですが進めていきたいと思いました。


 ってなワケで、ご感想等頂けたら幸いでございます!


《プチ解説》

亜眼

 科学では証明出来ない異能の力を持つ存在。人類の敵。5つのクラスに別れ、上から順に、

 ・クラス5ーー血眼(ブラッド・アイ)

 ・クラス4ーー翠眼(エメラルド・アイ)

 ・クラス3ーー碧眼(サファイア・アイ)

 ・クラス2ーー橙眼(トパーズ・アイ)

 ・クラス1ーー紫眼(アメジスト・アイ)

とされる。クラス5は高等種、クラス4、3は中等種、クラス2、1は低等種とも言われる。中でも高等種は世界で8名しか発見されていない。

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