ほんとにまじで好きなつもり
花川はほんとうにまた来た。
ピンポーンとインターホンが鳴って、モニターの向こうに花川を見つけて俺はげんなりした。
「やっほー。おっさん、また来たよ?」
玄関越しの女子高生の高い声。
「かえれ」
「やだ」
「おまえは年上で会社勤めのそこそこ生活力がありそうな社会人に恋してるって設定の自分に酔ってるだけだ。長持ちしても半年で飽きる。付き合ってられん」
「ひっど。そんなんじゃないよ。ほんとにまじで好きなの」
「ああ、好きなつもりなんだよ、いまはな。じゃあな」
「入れてくれるまでいますからねー?」
「警察呼ぶわ」
「警察来たら未成年略取だー、淫行されたー、って言ってやる」
「あー、もしもし。あ、そうです。斎藤です」
「まじで電話してやがるー!!? この鬼畜ヤロー!」
「はい、いま家の前にいます。引き取りにきてください。お願いします。はい、じゃあそういうことで」
「ほ、ほんとに警察呼んだの?」
ストーカーはやはり警察がこわいらしい。
「いや」
ドア越しの花川が胸をなでおろしたのがわかった。
「呼んだのはおまえの親」
「なんで番号知ってんだよぉぉぉ!!!!!!?」
「お礼の電話掛かってきたんだよ。名刺見たらしいな。親御さんちゃんとした人だな」
「うわあああーん」
花川は階段を駆け下りてどっかいったが、例の公園で親に捕まったそうだ。
これに懲りてこなくなるといーな。




