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手紙の送り主

 ◇



 カパローニ侯爵家本邸ではアレッシアとロビンが初対面を果たしていた。


「はじめまして、ぼくはロビン…えっと」


 ロビンが戸惑ったようにフェルディナンドを見ると、フェルディナンドは穏やかに微笑みながら耳打ちする。


「(ボソボソ)ロビン・ファリナ・ジェイコブ・カパローニだよ」


 フェルディナンドに教えてもらうと、ロビンは「あ、そうだった」と小さく呟き、再び背筋をピンとしてアレッシアの方に向き直る。


「ぼくはロビン・ファリナ・ジェイコブ・カパローニです。アレッシアおねえさま、これからよろしくおねがいします!」


 そしてペコリとおじぎをする。それを見ていたアレッシアは少し目を見開くと、侍女を呼んで何か指示を出し、ロビンの目線の高さになるようにしゃがみこむ。


「初めましてロビン。わたくしはアレッシア・ファリナ・カパローニ。そこにいるレオナルドお兄様の妹で、ミリアムの姉よ。よろしくね」


 ニッコリと微笑むと、ロビンの小さな手を取る。


「ロビンはお菓子やジュースは好きかしら?今サロンに用意させているから一緒にどうかしら?ロビンのお話が聞きたいわ」


 精霊姫と謳われる美貌のアレッシアに微笑まれ、ロビンは頬を赤くしてコクコクと頷いた。

 そしてそのままアレッシアに手を引かれてサロンへと向かって行った。


「あれは相当…」

「気に入ったようですね…」


 その後ろ姿を見ていたフェルディナンドとレオナルドは顔を見合わせ笑い合い、二人の後を追ってサロンへと向かった。



 それからしばしサロンにてロビンを囲んでのお茶会を楽しむと、フェルディナンドが手配したロビン用の木剣が届いたと知らせが入り、フェルディナンドは目を輝かせるロビンを連れていそいそと確認に向かった。

 サロンにアレッシアと二人になったレオナルドは、先程ヴァレリアから手紙を預かったことを思い出し、懐から取り出すとアレッシアに渡した。


「これは?」

「シアへの手紙らしい。ヴァレリア様から先程預かったんだ。()()()からと言っていたが、俺は誰かはわからない。心当たりはあるか?」


 アレッシアは封筒の宛名の文字を見る。念の為差出人の名前がないか確認するが、見当たらない。

 けれども、その筆跡には見覚えがあった。


「たぶん、ございますわ…」


「お先に失礼しますわね」と言うとアレッシアはサロンを出た。もしも、この見覚えのある文字で綴られた手紙が、考えている人物からであったなら…と胸が高鳴る。


 自室の扉を閉じると、震える手でペーパーナイフを探し、封を開ける。



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 愛しい君へ



 元気かな?

 最後に見た君が泣き顔だったから、そろそろ君の笑顔が恋しくなってきたよ。


 詳しくはまだ話せないけど、僕は父に創られた偽りの僕を捨てて、本当の自分として歩き直す事にしたんだ。その為に、三人の救国の魔女の下で働くことになった。


 僕は今、あの日君と見た星空の下にいる。

 いつかまた君と星が見られますように。


 必ず迎えに行くよ。


 G


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 手紙を読むアレッシアの頬にいくつもの雫が零れ落ちる。


「そう、生きてるのね…良かった…本当に良かった…」


【真・救国神教】に関係していた貴族たちは投獄されたと聞いていた。生き神としてその象徴となっていた彼は、きっともう生きていないだろうと思っていた。

 迎えに来てくれなくても、もう二度と会えなくても“生きている”という事実だけで充分だ。生まれて初めて愛した、唯一の人だから。


 夕暮れが近付き、窓辺に腰掛けたアレッシアは手紙の文字を愛おしそうになぞる。

 もう何度も何度も読み返したその手紙を大切に胸に抱え、目を閉じると突然後ろから包み込むように抱きしめられる。


「はは、来ちゃった…」


 耳元で囁かれた声に、アレッシアは目を見開き振り返ると金色の瞳が愛おしそうに見ていた。


「ジ…ル…?」

「うん」

「あなたなの?」

「そうだよ」

「でも…」


 アレッシアは手を伸ばし、その髪に触れる。


「髪の色が違うわ…」

「ふふ、そうだね」


 白銀の髪はチョコレートの様な優しい色になっていた。


「前の色は、目立ちすぎるからさ。似合う?」

「どちらも好きよ」

「ありがとう」


 アレッシアはくるりと身体を反転させ、二人は向き合うと今度は強く抱きしめ合った。

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