事件のその後
エミリオとミリアムはコンフィーネ第3地区にある自然公園へとやって来た。
ここは樹海を切り拓いた際に発見された湧水の出る泉を活かし、樹海だった場所は一部小さな森として残し、森の外には広々とした芝生や四季折々の植物を楽しめる花壇、遊歩道や四阿をいくつも整備した住民たちの憩いの場所だ。
二人は泉の畔にある四阿に並んで腰を下ろした。
「事件のその後の処理が諸々終わったんだ。今回はその報告とロビンの付き添いでラットフォレスタまで来たんだ」
「まあ、そうでしたのね。と言うことはロビンももう到着していますのね!明日帰るのが楽しみですわ!」
義弟となったロビンの到着を殊の外喜ぶミリアムに、エミリオは少し口を尖らせる。
「と言うのを口実に君に会いに来たんだが?」
少し拗ねたような声のエミリオに、ミリアムは「まぁ」と顔を綻ばせる。
「ふふ。ロビンにヤキモチですか?」
「君の関心はいつも私に向けていて欲しいんだよ」
冗談めかして笑うエミリオだが、8割ほどは本気だ。ミリアムの肩に腕を回すと、そっと引き寄せ口づけを落とそうとしたが、サッとミリアムの手に遮られる。
「節度!ですわよ。エミリオ様」
「ぐぬぬ」
仕方なく口にあてられたミリアムの手を取り、その白くて柔らかな甲に口づけた。ふと、悪戯心が沸き上がり、ついでにペロッと舐めた。「ひゃっ!」とミリアムが驚いて声を上げると、満足した様にエミリオは笑った。
「もう!エミリオ様!」
プクッと膨れるミリアムが可愛くて仕方ないエミリオはギュウギュウとその華奢な身体を抱きしめ、頬ずりをした。
「ミリアムは可愛いな。あー私は幸せだ!書類を必死に片付けたかいがあった!」
「お仕事、大変でしたのね」
「ああ、そうだな。それで、今回の事件のその後の話を少ししようと思って」
「はい。お話しくださいませ」
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ミリアムとイヴァンが無事に解放された後、まず事件を実行していた【真・救国神教】は解体された。
幹部に名を連ねていたフェリーネ伯爵家をはじめとする複数の親類一族は爵位剥奪の上、家長及び関係した全ての者を投獄。その他の者は監視付きで市井に下った。
裏で糸を引き、全ての計画を立てていたサンタンジェロ公爵及び取り巻きの貴族たち、いわゆる第二王子派の過激派グループについても、爵位剥奪の上、家長は国外追放となった。
しかし、隣国への唯一の街道を有するラットフォレスタの領主・カパローニ侯爵家が、今回の国外追放時におけるラットフォレスタ内の通行を拒否した為、現在いくつか残存している街道開通以前に利用されていた道を使用する事となる。
こちらの道は現在ではほぼ使われていない為、途中宿場町もなく、ただただ舗装もされていない道が続くのみ、もちろん整備などされていない。樹海に巣食う魔獣や猛獣も徘徊しているので運が良ければ隣国に抜けられるかもしれないというものだ。サンタンジェロ公爵は側妃ベネディクタの実兄で、第二王子イヴァンの伯父にあたる為、明確な処刑という形は避け、国外追放とされたが、実質は処刑である。
ちなみに今回誰よりもサンタンジェロ公爵に対しての怒りを露わにしたのは、実妹にあたる側妃ベネディクタで、自ら剣を取り、その首を落とす勢いだったが、国王と王妃で必死に止めた。
その理由も『現在エミルと婚約している以上、それを破棄させてイヴァンと婚姻を結んでも、気まずくてオルネラとミリアム嬢を両手に侍らせられない』と言うものだった。
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「それから、ミリアムは私と婚姻し、いずれは王妃となるから話すが…」
「?はい。なんでしょうか」
エミリオは言いづらそうに俯いたが、少し間をおいて再び顔を上げる。
「白銀の髪の男、ジルベルト・ダッラ・ディ・フェリーネなんだが…」




